童貞のまま好きな娘と同棲したら色々カオスだった part3
2018/02/21
前回の話
八月が終わると、どこか物悲しさを感じた。
海には人が疎らになりサーファー以外は居なくなる。
それでも暑い日にはイモトの提案で海に行ったが台風が近づいているからか波が高い。
まあ、それでも波に揉まれて楽しかったんだが…
台風が来た時は大変だった。
古い家だからか家が吹き飛ばされそうだった。
だが、流石は先人の知恵だ。
以外に丈夫だった。
秋も深まると俺達は秋の味覚を得るが為に色々したよ。
近くに栗の木が有るの
見つけると栗を取りに行く
「ヒロさん、もっと揺らさなきゃ落ちないよ!」
イモトが叫ぶ。
「結構揺らしてるんだけどね」
ヒロさんが木の上から言う。
「蹴ったら?蹴って揺らそう?」
マリコ嬉しそう。
「つーか、勝手に採って良いのかな?」
俺の一言は全員にスルーされていた。
最終的にホウキで一個、一個を落とした。
お陰でその日から栗ご飯三昧だった。
また、ヒロさんが近くに芋が有る、と話を持って来た。
「芋ー!芋掘る!」
イモトが俄然ヤル気だった。
「焼き芋食べたーい♪」
マリコは又もや嬉しそう。
「芋粥でも作りましょうかね」
係長の腕も鳴る様だ。
「あ、いや、それって誰が植えてるんじゃないの?」と俺が至極まっとうな意見を言うが又もやスルー
「流石に…栗と違って昼間は難しいな…」
「夜に、黒い服を着て行くべきじゃない?」
ヒロさんとイモトが話す。
いや、やっぱり誰かの物って理解してんじゃん…
「仕方がない、精鋭でチームを組んで突入するか」
「特殊芋掘りチーム…SITの出動だね」
何、そのカッコイイ特殊部隊。
大体、こう言った悪巧みをするのはヒロさん、イモトの仕事だった。
マリコは単純に楽しそうなだけ。
係長は後方支援。
俺は全力で全員を現実に引き戻す役目だった。
「いや、不味いって…絶対、誰かのものなんだって!」
「ええー、ナオト、ノリ悪いー」
イモトが非難する。
俺は少しムッとして言った
「良いか?山田さんは市内の中心で働くサラリーマンだった」
「え?誰、それ」
イモトが首を傾げる。
「良いから聞け…彼は真面目に働き続けていたんだ。
毎日上司に怒られ、
客に怒られ…たが、彼は愛する家族の為に頑張る。
勿論、奥さんも
一生懸命彼をサポートし続けてきた。
暮らし向きは豪華では無いが、
それでも奥さんと子供、家族四人が質素に暮らしていた」
「山田さん夫婦がんばったね」
マリコが感想を言う。
「そう、頑張った彼らの子供達は独立して、各々結婚して子供をもうけたんだ。
山田夫妻に孫が出来た。
そして、彼も遂にその日を迎える…定年退職だった」
「感慨深いでしょうな」
係長が染々と言うが笑えない
「彼は退職金を遣い郊外に土地を買った。
そこで家庭菜園をするためだ。
そう、遊びに来る孫のために美味しい野菜を孫と共に収穫したかったんだよ…
だが、彼等は農業に関してはドシロウトだった。
色々失敗をした。
雨の日や、熱い太陽の下、寒い日、そして台風の日にも彼等は頑張って
家庭菜園を続けて行く。
全ては孫のために…そうして、やっと今年の秋に
収穫を迎えるだけの芋を作る事が出来たんだ!」
そう言って俺はイモト、ヒロさんを指差す。
「その苦労をお前らが、盗むとどうなる!楽しみにしていた孫は泣いてしまう!
そして、それを見た山田夫妻は茫然としてしまうんだぞ!」
イモトが焦りながら呟く。
「え…だ、だって、わ、私…その芋が知恵ちゃんのって…知らなかったもん」
知恵って誰だよ。
勝手に孫に名前を付けるんじゃねーよ。
「ダメ!絶対、ダメ!知恵ちゃん可哀想!山田さん達も可哀想!」
マリコが鼻をすすりながら言う。
いや、感情移入し過ぎだろ。
「やはり…素人の家庭菜園は難しいんですかね・・・」
食いつく所、そこかよ。
「…でも」
黙っていたヒロさんが口を開いた。
「孫の分を置いといたら良くね?」
アンタは鬼かああああ!!!!
その一言でイモトがヒロさんに乗っかる。
だが、俺達で全力で止めて何とか普通に金を払って芋掘りに行く事で
手を打つ事が出来たのだった…
ある、秋の三連休の事だった。
「この、三連休…私、少しお暇を頂きたいのですが…」
そう、係長がみつゆびをつきながら言って来た。
古風な嫁かよ。
「何?どうしたの?係長」
マリコがリンゴを食べながら聞く。
「あ、いや、古くからの友人から家に招かれまして」
「俺もその時に会社の旅行があるな…」
ヒロさんも、そう言う。
「あれ?三連休?私も居ないや、実家に帰るんだけど」
マリコもカレンダーを見ながら言った。
マジか!んじゃ、イモトと二人じゃねーか!!
俺は焦る…が、取り越し苦労だった。
「親がうるさくてさあ…私、三連休に一回、実家に帰るわ」
そう言って膨れっ面のイモトを見た時はホッとしたよ。
結局、三連休は俺だけが、この家に残る事になった。
俺も実家に帰ろうか?と思ったが距離が有るのとバイトのシフトを
入れていたので無理と判断し一人で残る事に決定。
三連休の最初の土曜日、俺はバイトに入っていて夕方まで仕事をして帰路につく。
俺は少し一人での生活にワクワクしていた。
この数ヵ月ずっと騒がしい生活をしていたので一人に少し憧れを感じていたんだよ。
俺がやりたい事は一つだけ…それは…
エロいDVD を観る事…!
そう、この家での生活は楽しかったのだが、とんとエロに関しては恵まれなかったんだ。
勿論、エロDVD を観る事は出来ないし、ネット環境も無い。
そして当時の俺はスマホじゃなかったのでエロの情報も少なかった。
お陰で携帯のエロ画像やエロ体験談をオカズにしていた毎日。
だから動くエロを観たい!それを楽しみに三連休を迎えたのだ
帰り道に遠回りだがレンタルショップによりお目当てのモノをゲットする。
それも五枚も。
そして、その日は帰宅スピード最速の記録を更新した日でもあったのだ…
帰宅する途中に誰かまだ居るかな?と思う。
今日ばかりは誰も居て欲しくない。
そう思いながら家に到着すると家は真っ暗であった。
俺はホッとしながら家に入り、カバンを置くと直ぐに風呂の用意をして
風呂に入ろうと思ったが性欲の鬼と化している俺は我慢が出来ずに居間に有るデッキでDVDを再生した。
いや、何だろうな…俺はあの瞬間、神に一番近い存在となったかもしれない。
全てが終わるまで20分の時間を要しなかった。
満足感が半端無かったのか終わったら「ごちそうさまでした」と呟いた程だった
そしてDVDを取りだし、しっかりと後片付けをした後に、ふと我に返る。
シーンと音の無い空間が広がっていた。
あれ?この家、こんなに静かだったけ?
そしてやたらと広く感じる。
この家だけ丘の上なので車の音すら聞こえない。
俺は少し恐くなったので歌を歌いながら風呂場に向かう。
普段は気にしない洗面台の鏡も今日はチラチラ見てしまう。
とにかく、何か不気味だった。
風呂場で頭を洗っていても振り替えってはいけない、と言う思いだけが強くて全然落ち着かない。
さっきから思いきりミスチルのメドレー大会となっているが、ソロソロ持ち歌が尽きてきた。
おまけに洗顔もしながら歌っていたので口に泡が入りまくっている。
取り敢えず素早く風呂を上がった俺は気を紛らせる為に再び
DVDを手に取り観るが全く集中出来ない…
何なら何故、さっきはこのDVDに興奮していたのかさえ理解出来なくなる。
このDVDを借りた時の俺にどこが良いのか解説をして欲しい位だった。
俺はDVDを観るのを辞めてテレビを見る。
下らない深夜番組を観て少し落ち着いて来た。
このまま寝てしまおうと思い布団を部屋から持って来てテレビの前に敷く。
時折、雨戸がガタガタと言う音がするのは風のせいだと自分に言い聞かせた。
淋しい…そして、怖い…
つーか、マリコは俺達がここに住むまで1人でここに居たのか…
何それ?ただの肝試しじゃん …
風がガタガタと雨戸を鳴らす。
風だよな?変なデカイ生物が雨戸を揺らしている、って事は無いよな?…
…と、言うかマリコは恐く無かったんだろうか?
いや、怖かった筈だ。
当初、一緒に住もうとマリコが言った時、怖い…と言う理由を言っていた。
それなのに、よく一人で住んだもんだな。
俺の眼球にテレビの明かりを映し出している。
マリコはそもそも…何でここに1人で住んでいたんだろう?
祖母の家だったから…家賃がないから……