集落

2018/02/21

もう20年以上前、少年時代の話である俺は名は寅、友達は雄二と弘樹と仮名をつけておくあれは小学校六年生の夏休み
俺達は近所の公園で毎日のように集まり、遊んでいた夕焼け空が真っ赤に染まりだした頃「そろそろ帰ろうか」と弘樹が言い出す片親で家に帰っても一人ぼっちの雄二は
「もう少し遊ぼうや」と俺達2人を引き止める門限に厳しい弘樹は
「ごめんな、また明日遊ぼうや!」と言い帰って行く弘樹の姿が見えなくなると、決まって雄二は
「あいつ毎回付き合い悪いのー」と愚痴りだすすっかり暗くなった公園には俺と雄二の2人きり雄二の話に適当に相槌を打つも、早く帰らねば俺も親に叱られるそんな俺の挙動が伝わったのか、雄二は少しイラついた顔をして
「寅も帰りたいんやろ?かえればいいやんか」と言い放つ少しムッとしたが、何時ものことだと自転車にまたがろうとすると「俺、こないだ廃屋みつけつたんよねぇ」雄二が言うどうせまた引き止めようと興味を引こうとしてるんだと思い
俺はあえて聞こえないふりをし、自転車を走らせようとすると「俺今夜、廃屋に探検しに行ってくるわ?」とさっきよりも大きな声で言った廃屋、探検、興味はあったが、親に怒られたくなかったので「雄二、お前もはよ家帰れよ?」と言って、家へ帰ったどうせ一人で行く勇気もない癖にとその時は思ってた家へ帰り、風呂に入り、晩飯を済ませた頃だった、ジリリリリンと電話がなる
もしもし、と電話に出ると雄二の母親からであった「あんたんとこにうちの雄二いっとらんかね!?」乱暴な言い方に軽くムカッときたが
「雄二君ならまだ公園であそんでるかも」と言うとガチャっと電話を切られた雄二の母親にはムッときたが、雄二が帰宅してないと聞き少し心配だった雄二は少し悪ガキで、夜遅くまで遊んでいる事が多く、悪い連中と付き合いがあると噂されていた夜も十時をまわり、床に就くと遊び疲れか、すぐに眠ってしまった翌朝早朝、母親が血相を変えてたたき起こしに来た「雄二のお母さんから電話がかかって、昨日から家に帰ってないってさ!ここにいるんじゃないかって怒鳴り散らすんよ?」またかよ、と思ったが一晩も家に帰らないのは初めてだし
本当に昨日言っていた廃屋へ探検しにいって何かあったんじゃないかと心配になってきた弘樹に電話をして、事の経緯を話すと、弘樹の家にも同じ様な電話がかかったらしい取り合えずいつもの公園で待ち合わせをして、落ち合った「雄二とはもう付き合うなって母ちゃんに言われて大変だったよ」弘樹が疲れた顔で言う「あいつの母ちゃん変わってるよな」と俺が言うと弘樹が
「まあ、それも解る気がするわ・・」と意味深な事を言った「???解る気がるって??」俺が聞くと「あ。なんでもないよ、それより雄二の行きそうな場所探さんと」そして俺達はよく三人で遊んだ場所をぐるぐる回ったが
雄二は見つからなかった一旦公園へ戻り、水を飲み休憩していると
公園の横を雄二の母親が車で通りかかった俺達に気がついたのか車のスピードを落としゆっくり通り過ぎていく雄二が帰ってこなかったせいか、充血した眼でギロっと俺達を睨みつけ去っていった心なしか口元がぶつぶつ何かを言っているようにも見えた「おっかねぇな・・」弘樹が言った「・・・・はは・・」
「そういえば寅さぁ昨日俺が先に帰った後、雄二なんか言ってなかったんか?」
「ああああああ!!」アホな俺は廃屋の話を弘樹に言われ思い出した昨日の会話を弘樹に伝えると「廃屋かぁ・・多分あそこにあるやつやないかなぁ・・」弘樹は何か知っている風だった「弘樹、場所わかるんか?わかるんなら行って見ようや」そう俺が言うと「う?ん・・あんまし行きたくない?・・」
と弘樹がごねる煮え切らない弘樹に業を煮やして「お前、雄二が心配やないんか?はよ行くぞ!」嫌がる弘樹に案内させ、自転車を漕ぐ事1時間
道路も途中から舗装されてなく、砂利道に変わった「この集落の先にあるんやけど・・・」たどり着いた場所は川沿いの小さな集落だった「ここって・・・もしかして○○地区ってとこ??」
「・・・そうそう」弘樹が嫌がった理由がわかったここは絶対に近づいてはいけないと親達にいつも言われている地区だった集落の家屋は半分以上朽ち果てたようなものばかり
歩いている人の身なりも煤け汚れていた数人の老人がこちらに気がつくと足を止めてこちらを凝視してくるその眼はどれも荒んで、憎しみさえ感じられるほど強い視線よく見ると、日本の物ではない小さくボロボロな国旗が風に揺れていた「弘樹・・例の廃屋ってのはこの地区の中にあるんか?」
「いや、確かこの地区の少し先の山の中だったはず」と小さく答えた「そこへ行くにはこの集落の中通らんと行けんのか?」
「・・・・うん」50メートル先では数人の住民が俺達の事をじっと見ている恐ろしかったが、友達も心配だ
俺達は腹を決め、怪しまれない程度の速度で自転車を走らせるなるべく視線をあわせないよう進んでいく
少し進んでいくと、数人の老人が地べたに横になっていた自転車で進む俺達に気がつくと、上体をむくっと起こして、俺達の事を見ている見ない振りをしながら先へ進む集落を抜けた辺りで、弘樹の自転車が急に止まったそして転がり落ちるように道の端へ走りだした「おい、弘樹どうしたんか!?何してるん!?」声をかけると弘樹は急に道の端でげーげーと嘔吐した「大丈夫か??具合が悪くなったんか??」背中をさすりながら声をかけるすると弘樹が
「寅・・・あそこ・・」弘樹が涙目で指を差す弘樹の指差した場所には、たくさんの頭のない鶏が木に吊るされていた食べる為に血抜きをしているのか、地面には真っ赤な血の水溜りが出来ていたそれを見た俺も思わず嘔吐してしまった慌ててその場を離れ、少し休憩しようと
山に入り人目につかない木陰に自転車を隠し腰を下ろした「弘樹よぉ・・廃屋がここにあったとしてもよ、雄二の奴一人でこんな場所これるかな?」と言うと弘樹は少し俯き、小さな声で
「これるよ」と言った「う?ん、俺なら絶対無理やな。うん、無理だ」
「寅よぉ、お前、知らんのか?」不意に弘樹が言う「ん?何を?」そう聞き返した時だった数人の男が集落のあった方向から山へ入ってくるのが見えた「やばい、寅、隠れよう!」俺達は木陰に身を低くし、様子を伺った大きなズタ袋を老人が数人で担ぎ、山を上がっていく老人達はニヤニヤしながら俺達にはわからない言葉で会話している「あいつらなんて言ってるんだ??」
「それより寅、あいつら廃屋の方へ行っとるかも・・・」仕方なく俺達はびくびくしつつも
老人達と距離をとって後をつけたしばらく進むとバラック小屋のような建物が見えてきた「寅、あれが例の廃屋だよ」弘樹が言う「そういえばずっと気になっとったんやけどさ
弘樹はなんでここ知ってるん?」俺がそう聞くと「ん?ああ、お前とは六年になってから仲良うなったよな
俺は雄二とは三年の頃から友達での
いっぺんだけ来た事があるんよ」
「はは、お前等俺の知らんとこで色々冒険しとるねぇ」
「冒険っちゅうかの、雄二のだな・・・・・う?ん、やっぱやめとくわ」
「何々??気になるやんか、教えれよ!」
「そのうちわかる事やけん、気にすんな」そんな会話をしていると、男達は廃屋の中へ入っていった弘樹に促されゆっくりと廃屋へ近づいていく物音を立てないように廃屋の裏手にまわった裏手にまわると、廃屋の中からの声が聞こえてくる日本語ではない言葉で
大勢の男達が怒号のような声を上げ騒がしい「寅、こっちに窓がある」先に進んだ弘樹が手招きしている近づき煤けたガラス越しに中の様子が少しだけ見えるさっき見かけた老人がいる部屋の中央へ向き拳を振り上げ何か言っている「くそぉ、弘樹、肝心な所が見えん・・・」
「う?ん、何をしとるんやろうか・・
もうちょっと中の様子が見える場所探すけん、寅はここにおってくれ」そう言って弘樹は身をかがめ廃屋の別の窓を探しに進んだ時折廃屋の中から大きな声がドッと上がるたびにドキっとするしばらく覗いていると「あっ!」と弘樹の声が聞こえた一瞬廃屋の中が静かになったが
気付かれなかったのか、またざわざと騒ぎ出した俺は弘樹の声がした場所へゆっくりと近づく弘樹は尻餅をつきガクガクと振るえており、涙を流していた中にいる連中に気付かれない様に小さな声で「弘樹、どうしたんか?大丈夫か?」と尋ねると弘樹はぶんぶんと首を横に振り声を殺し泣いている震える弘樹の肩をぽんと叩き、廃屋を覗いてみる先程と同じ様に煤けた硝子窓があり
中を覗いてみると何かを取り囲むように男達が座っていたどの男達も部屋の中央を見て騒いでいるゲラゲラ笑っているものもいれば、怒鳴り散らすように怒号を上げているものもいる不気味な光景に鳥肌がぶわっと立った男達の視線の先には、丸くか困れた柵があり
その中から、羽毛の様なものが舞い上がっている柵の中がよく見えなかったので
足元にあった切株に乗り
背伸びをしてみると
そこには雄二がいた衣服は脱がされ、口と両腕両足を縛られ
顔には殴られた後があった
木の杭のようなものにくくられており
身動きがとれない状況になっていて雄二の周りには鶏のようだが鶏より遥かに大きな鳥が暴れていたよくみると大きな鳥は脚に短い刃物が縛ってあり
雄二は脇腹の辺りから出血し、痙攣していたあまりのショックと恐怖に身動きが取れずガタガタ震えていると正気を取り戻したのか弘樹が俺の手をぐっと引っ張った「逃げよう」弘樹に促され、震える身体を奮い立たせ
その場から離れた
自転車を隠してある場所まで戻り
少しでも早くこの場を去ろうと俺達は突走った途中、例の集落を通ったが
皆廃屋へ行っているのか
もぬけの殻だった様子地元まではどんなに飛ばし…

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