はまった男 5

2018/10/24

はまった男 4
王のことは忘れようと思っていても、王の写真、手紙、ハンカチ、アルバムなどが、忘れようとする心を邪魔する。
忘れようと思いながらも、王の写真は、必ず見ている。
僕は、机に写真を置いたまま、会社で寝た。
(前にも書きましたが家と会社は、隣です。僕は会社で寝泊まるする方が多いです。(^^)/)
次の日、社員達が、「社長の大連の彼女って、香港のカラオケの女だったんですね。」と言ってきた。
写真を見られた。でも、今更バレたって関係ない。
僕 「そうだよ、ウソついてたんだよ。もう彼女とは別れたから、その写真捨ててきて。」
社員 「そうなんですか?思い出として、取っておきましょうよ。大連で、散々僕達に自慢していた彼女じゃないですか。」
そうだ、自慢したくなるような、可愛い、可愛い女の子だった!
僕は、仕事に手がつかない。
このままでは、僕はおかしくなる。どうしたら、いいのか?
遠距離恋愛をして失恋した男達は、みんなこんなに苦しむのだろうか???
10月16日、S・K社長から、電話がくる。
23日から、大連に行くそうだ。
僕は、一緒に行きたいといった。
少しは気分転換になるかも知れない。しかし、社員達は文句を言ってきた。
当然だ。この間、香港から、帰ってきたばかりなのに。
僕は、今回はS・K社長と、仕事で大連に行くと、言って、社員達を説得したが社員達は、S・K社長と一緒なんて、余計に怪しい、どうせ女遊びをするだけだ!と言っている。
S・K社長は、信用度ゼロだ。結構立派な人なのだが・・・・・。
僕は、1週間休みを取った。
これにも社員達は、大ブーイングだった。
休みが長すぎる!どうせ、大連には仕事など無いくせに!!と言っている。
文句があるなら、お前ら、やめちまえ!と言い返した。
しかし、冷静になって考えてみたら、王は、もう大連にはいない。
今更、大連に行っても、しかたないのは、わかっているのだが・・・・・・。
僕と、S・K社長は23日、大連に飛び立った。
今思えば、この行動は大正解だ!!
僕とS・K社長は、今回は南山ホテルにした。静かで、良いホテルだ。
S・K社長は、早速、新しい女をホテルまで呼んでいる。李さんのほうが遙かに美人だ。
この人は、どうして女をコロコロ変えるのだろうか?
僕は、大連に着いたことをS君に知らせた。
S君、李さんには、通訳で散々お世話になった。この二人には、今でも、中国に着いたら、会えなくても、必ず電話をしている。
僕 「あ、S君?今、大連にいるんだ。用は無いけど、一応電話だけしておこうと思って・・・・。」
S君 「そうですか、大連にいるのですか・・・。北京には、来る用事は無いのですか?」
僕 「北京かァ。S君には会いたいな。お礼もしたいし。でも、今回はS・K社長も一緒だからなあ。そういえば、S・K社長がS君にお願いをして口説いた女ってあまり可愛くないね・・・。」
S君 「僕が通訳した女の子は、北京にいますよ。そのコではないと思いますが・・・。」
S・K社長は、ホントに女好きだ。大連に北京、まったくしょうがないな。
僕 「そういえば、王は今北京にいるんだよね、元気かな?」
S君 「・・・・・・・・・」
僕 「あれから、王から連絡あった?もし、連絡あったら、よろしく伝えておいて。」
S君 「あの・・・・・・」
僕 「何?どうしたの?」
S君 「いえ、なんでもないです・・・・・。」
僕 「どうしたの?一度言いかけたんだから、話してよ。」
S君 「あの、王さんから、Tさんに連絡は無いのですか?」
僕 「あるわけ無いじゃん。王は、電話番号変わっちゃったし、引っ越しちゃったし。僕達は、もう終わったんだよ。」
S君 「でも、王さんは、Tさんのことを、まだ愛していると思います。」
僕 「そんなわけないよ、電話来ないし・・・・。」
S君 「それは、Tさんが、王さんに冷たくしたから、電話をかけられないんですよ。」
僕 「だって、ほかに男がいるんだから、しょうがないよ。
その男とうまくいっていれば、いいんだけど・・・。」
S君 「その男は、本当に王さんの彼氏ですかね?Tさんは、その男の存在をどうやって知ったのですか?」
僕 「どうしたの?今更、関係ないじゃん。僕と王は、もう終わったんだから。」
S君 「ちょっと気になって。その男を、どうして知ったのですか?教えてもらえませんか?」
僕は、香港で食事をしていたときの会話、香港のラマダホテルでの会話を話した。
上海の元彼氏のことを、知っているS君に話すのは、少し恥ずかしかったのだが。
僕 「・・・・・と言うわけで、王には、福建省にも、彼氏がいたんだよ。」
S君 「Tさん、それは、とんでもない勘違いですよ。勉強不足です。やっとわかりました。」
僕 「何がわかったの?」
S君 「どうして、香港のラマダホテルでの会話を、教えてくれなかったんですか?どうして、王さんのウソを、教えてくれなかったのですか?」
僕 「だって、弟なんていないのに、弟と話していたなんてウソ、恥ずかしくて・・。」
S君 「王さんは、まだ日本語が上手くないんですよ!Tさんも勉強するべきです!」
僕 「意味がわかんないよ。」
S君 「Tさん、今回は、仕事で大連に来ているのですか?それとも遊びですか?」
僕 「S・K社長と一緒に来てるんだよ?遊びに決まっているよ。」
S君 「王さんのこと、まだ愛していますか?逢いたいですか?」
僕 「そりゃあ・・・・逢いたいよ、今すぐにでも逢いたい・・・。」
S君 「一昨日、僕は王さんと会いました。」
僕 「え?!!王にあったの?!!どこで?!!」
S君 「北京のKTVです。王からは、Tさんには言わないでくれ、内緒にしてくれと言われたのですが・・・・。」
僕 「・・・・・・・・・」
S君 「遊びだったら、大連にいる必要はないですよね?北京に来られませんか?」
僕 「・・・・・今日行く。すぐに行く。」
S君は、夜のガイドも、やっている。
毎日のように、夜のガイドを頼まれている・・・・。
20時30分、北京に到着した。大連から、約1時間、近いもんだ。
S君と再会の握手を交わし、タクシーに乗り込む。
僕 「王がKTVで、働いているのは、本当なの?」
S君 「働いていると言っても、今月終わりまでの、何日間かですよ。」
僕 「そう・・・。お客に、持ち帰りとか、されてるのかな・・・・・。」
S君 「それはないです、大丈夫ですよ、安心して下さい。」
S君は僕を安心させるように、にこやかに言う。
僕 「どうして大丈夫なの?わからないよ。持ち帰りされているかも知れない。」
S君 「大丈夫です。そこのKTVは、お持ち帰りのコは、黒いスカーフをしているんです。王さんは、スカーフをしていませんでした。福建省に帰る間の、軽いアルバイトみたいなもんですよ。」
S君は、北京の夜の世界に詳しい。僕は少し安心した。
僕 「S君が言っていた、とんでもない勘違いって、何のこと?」
S君 「王さんが言った、おとうと、と言うのは彼氏じゃないです。間違い有りません。」
僕 「どうして、そんなことわかるの?」
S君 「年下のいとこ、年下の知人のことを、おとうと、と言ったと思います。王さんはまだ、日本語が下手なので、うまく説明出来なかったんでしょう。だから、おとうと、おとうと、と言ったんだと思います。」
僕 「・・・・・・・・・」
S君 「王さんに、直接聞けば、わかることです。」
僕 「王に聞かなくても、その男の携帯番号を知っている・・・・。」
王の携帯の発信履歴から、男の番号をメモリーしてある。
S君 「それなら、話は早い。僕が電話をするので、番号を教えて下さい。」
僕は、番号を読み上げた。S君が電話をし、流暢な中国語で話す。
僕は、緊張しながら、S君のことを見ていた。
話し終わり電話を切る。
S君 「やはり、思った通りです。彼は恋人ではなく、王さんのいとこです。Tさんのことも、知っていました。「お姉ちゃんの恋人でしょ?」と言っていましたよ。」
僕 「・・・・・・・・・・」
S君 「彼は、誕生日が10月3日だそうです。」
僕の誕生日の1日前だ。
だから、王は、誕生日プレゼントを買った、と言っていたのか・・・・。
僕は、バカだ!香港で、王を無理矢理食事に誘い、イヤな思いをさせた挙げ句勝手に、いとこを恋人と勘違いをし、王に冷たくした。傷つけた。
王は、悲しかっただろう、辛かっただろう。
謝って許してくれるだろうか?
僕 「王は、僕のこと、許してくれるかな・・・・。」
S君 「大丈夫ですよ、王さんは、まだTさんのことを愛しています。」
僕 「どうしてわかるの?もう、嫌いかも知れない。あんなヒドイことをして。」
S君 「一昨日、日本人のガイドをして、KTVで、王さんと会いました。」
僕 「・・・・・・・・・・」
S君 「王さんは、僕の顔を見るなり、驚いて、走って部屋から、出て行きました。」
僕 「・・・・・・・・・・」
S君 「僕は、「今、部屋から出て行った女の子を呼んで!」と言い、王さんが僕の隣に着きました。王さんは「Tさんには、絶対に内緒にして下さい!お願いです!」と何度も言いました。Tさんには、知られたくなかったのでしょう。

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