同窓会で再会した優等生だった女の子 1

2024/10/09

小学校の同窓会の葉書が来たのは、11月のことだった。

それは俺が卒業した小学校ではなく、卒業前に転校した、その転校する前の小学校の同窓会だった。俺は何となく落ち着かない気分でその葉書をみていた。

転校する前の小学校を思い出すとき、すぐに思い出すのは朝子のことだ。
背が高く、勉強もスポーツもできた朝子。音楽会ではピアノを弾き、習字では賞状を何枚も取り、朝子は典型的な優等生だった。

今でも思い出すのは、体育の時間に男女混合でサッカーをしたときのことだ。同点で終わったので、最後はPKで決着をつけることになった。キッカーは、朝子と俺だった。

3本勝負のうち、朝子はすべてを決めて見せた。
そして俺は、初めの一本だけしか入れられなかった。プレッシャーに負けてしまったのだ。

女子たちが何となく馬鹿にしたように俺を見た。俺は朝子にもう一度だけ勝負してくれと言い、朝子も面倒くさそうにしながらそれを了承した。

しかし、何度やっても俺は朝子に勝てなかった。
女子からは馬鹿にされ、朝子も俺をしつこい男だというような目で見てきた。

・・・そのときの悔しい思い出が、小学校時代の一番の思い出だった。
転校する前の小学校の友人とはご無沙汰だ。
転校した後、実際ほとんど連絡をしたことがなかった。
それでも、まがいなりにも数年間机を並べて過ごしてきた友人たちと会えるのだ。俺は一応出席に丸をつけ、往復ハガキを送り返した。

そして、往復ハガキのことも忘れるほどの時間がたった後で、同窓会の正確な日時・場所が連絡された。

同窓会とは手間のかかるものだ、というつまらない感想を俺は抱いた。
いまからでも欠席してしまおうか、と思ったが、行くといった手前ドタキャンするのはよくない。

渋々ながら、俺は同窓会のあるホテルへと足を運んだのだった。
同窓会に行ってみると、やはり懐かしい顔ぶれが並んでいた。

なるほどと、意味もなく納得した気分になる。

たとえば、日常の中でも旧友に出くわせば、懐かしく話をする。そういうことが、まとまって人為的に起きるのが同窓会なのだ。

悪くはないかもしれない、と思った。

こうしてみてみると、変わらないヤツばかり、という感じもする。食事にパクついている者、酒を呑む者。女子は女子で、昔と変わらず固まって話をしている。

そんな旧友たちと忙しく話をする中で、俺は後ろから声をかけられた。

「須藤君じゃないの。元気?」

それは、スーツを着て大人の女性になった、朝子だった
「木村さんか・・・元気だったよ。俺がよく分かったね」

俺は朝子の苗字である『木村』を思い出し、やや堅い調子で挨拶をした。

「ヤダ、全然変わってないじゃないの、その顔、喋り方」

そういう風に言われても、あまり嬉しくはなかった。
なにしろ、小学校時代の俺といえば、なにかカッコ悪いイメージがあったと自覚しているのだ。
その頃と変わっていないといわれても、嬉しくはない。
・・・が、俺は黙っていた。

「木村さんも、雰囲気変わらないね。今、どうしてるの?」
「大学から、院に進学したの。理系だからね。で、須藤君は」

「俺は文系だからね、就職したよ」
「ふーん、そうなんだ・・・須藤君、理系っぽかったのにね。意外」

そんな風に言って、朝子は笑った。
そこで、朝子に声をかけてくる女子がいて、朝子は俺から離れた。
そして一次会は終了した。

クラスごとの二次会だったので、俺は朝子と同じところで二次会になったが、結局朝子ともう一度話す機会はなかった。

そういうものなのかもしれないな、そう思いながら、俺は社会人になってから呑み始めたビールをあおった。

しかし、終わりになってからチャンスは訪れた。二次会に参加した面々は遠くに向かう者ばかりで、地元に残る者が少なかったのだ。そして、俺と朝子以外は皆、方向違いから別の者の車で帰ることになった。

俺と朝子は、最後の最後で二人になれたのだった。
朝子は俺と二人きりになった後、飲みなおしましょうといった。

俺たちは、別の店に入った。

「・・・ねえ、須藤君。覚えてる、サッカーのこと」
「覚えてるよ。忘れてなんかない」

少し酔い始めた頭で、俺は返事をした。
そうだ。あのサッカーのことを忘れたことはない。

「あのときから、ずっと引っかかってたの。どうして須藤君、サッカーの勝負なんかであんなにむきになってたの?」

「さあな・・・ガキだったから、かもな。木村さんには悪いけど、女子に負けるなんてカッコわるいって思ってたんだろ」
「あんなの、ただの遊びなのに?」

おかしそうに、朝子が笑う。

「そんなもんなんだって」
「ふーん・・・」

朝子はそれで納得したのか、それ以上は聞いてこなかった。
だが、俺は酒の勢いに任せて、朝子が聞いてきたこと以上のことを話した。

「・・・同窓会があるって聞いたとき・・・」
「え?」

朝子は俺の言葉に、よく聞こえなかった、という声を出した。

「同窓会があるって聞いたとき、俺、真っ先にそのサッカーのことを思い出したよ。朝子に負けて、女子に笑われて。馬鹿にされて、また勝負してくれって言って、負けて。
・・・あれが、転校する前の小学校で、一番強烈な思い出だったのかもな」

少し自嘲気味に俺は言った。
自分が目の前の女性を『木村さん』ではなく、『朝子』と呼び捨てにしていることにも気づかなかった。
朝子はそれを黙って聞いていたが、やがて口を開いた。

「そういえば、わたし小学校の頃、アサコって呼び捨てで皆に呼ばれてたわね。・・・須藤君、はじめてさっきわたしのことアサコって呼んでくれた」
「・・・悪い。気に障ったか?」

俺は女性を勝手に呼び捨てにしたことに気づき、謝ろうとした。が、彼女はそれをさえぎった。

「ううん。ちっとも気にしないわ。そう呼んでくれたほうが嬉しい」

思ったよりも無防備な顔で、朝子は笑いかけてくる。
眩しすぎる笑顔に、俺はドギマギした。

「・・・か、彼氏、いるんだろ。こんなところに、別の男ときていいのかよ?」

右手に光る銀の指輪を確認して、俺はそっぽを向きながら言う。

「彼氏? 今はいないわよ」

「じゃあその指輪は」
「これ? ただのアクセサリーよ。・・・あ、ひょっとして、妬いたの?」

なんだか嬉しげに、朝子は指輪を見せびらかす。

「ち、違うよ、バカ・・・」

慌てて誤魔化した。

「・・・フフ、変わってないね、須藤君」
「このあと、どうする? ・・・行きたいところで、いいわ」

「・・・・・・どういう、意味?」

朝子に誘われているのか、と思った。しかし勘違いでは困る。俺はヤボだとは思ったけど訊きかえした。

朝子は、「もうっ」、というように眉をひそめたが、

「・・・そういう意味かもね」

と言い返してきた。
やっぱり、ヤボだったな・・・そう思いながら、俺は言った。

「じゃあ、そういう意味にとっておくよ」

それを聞いた朝子の目には、小学校の頃にはなかった妖しい光が宿っていた。
そして俺たちは高めのラブホテルにやってきていた。

・・・朝子が俺に惚れているから誘ったとか、そういうんじゃないのはわかっていた。半分は、酒の勢いだ。
俺だって、朝子は綺麗になったとは思ったけど、惚れたわけじゃない。
お互い、今夜だけの遊びだった。どうせ、遊びだった。
だから・・・俺はキスをする直前になって、こんなことを言った。

「朝子。あのときの続きをしようか」
「あのとき?」

「サッカーの続きさ。・・・俺が朝子を、本番前に3回イカせたら勝ち。イカせなかったら負け」
「ま・・・凄い自信ね。大丈夫なの?」

「俺が言い出してるんだから、いいだろ。それに、あのときの続きなんだから、3回でないとダメなんだ」

「で、わたしが勝ったら何があるの? イカせてもらえないぶん、何だか損みたいだけど」

そう言われても、困った。
全然考えてなかったからだ。

「・・・次の休みに、何でも言うこと聞いてやるよ。うまいもの奢れ、でもなんでもいい」

言ったとたんに、これでは『今夜限りの遊び』ではなくなると後悔したが、言った言葉は取消せなかった。

「じゃあ、わたしが負けたら須藤君の言うことを聞くのね?」

耳あたりのよい言葉だったが、俺はつっぱねた。

「バカいえ。俺はずっと朝子に負けてんだぜ。俺が勝ってもチャラだ」
「そう? そういうなら、それでいいけど・・・」

「どうする? やるか?」
「いいわよ。・・・そのかわり、言っておくけど、わたし、前戯で一度もイッたことなんかないから。それでもいいわね」

「上等」

俺は朝子をベッドに押し倒し、口づけた。
ちゅぷ、ちゅぷ、とお互い舌を絡ませ、音を立てる。
口唇に吸い付き、唇の裏側に舌で触れ、朝子の中を蹂躙していく。

「結構・・・上手じゃない。大口叩くだけのことはあるわね」
「まだまだ、ここからさ」

俺は朝子の手を持って、俺のズボンの上に置いてやった。

「もう硬いのね・・・でも、わたしを感じさせるんじゃなかったの?」
「握ってるだけでいいよ」

俺はそう言ったが、朝子も手持ち無沙汰だからか、俺のものをズボンの上から撫ではじめる。

「朝子も経験、結構あるの?」
「・・・それなりにね」

朝子は、それなりに経験はある、と言った。
でも、遊びでするのには慣れていないのだろう。朝子の動きはぎこちないし、どこか態度の堅さは抜けない。
それをほぐしてやりたかった。

耳に息を吹きかけ、俺は囁く。

「朝子。・・・小学校の頃から好きだった」
「・・・・ウソ」

俺は嘘をついた。俺の初恋の相手は、転校した後、中学校に上がってから出会った子だ。朝子には結局何の感情も持てなかった。
それでも、朝子にはそんな俺の嘘が分からない。
目に見えて動揺し、目玉を左右に細かく動かした。

「・・・そ、そんな・・・わたしも、あのとき・・・・須藤君のこと好きだったのに」
「え・・・」

今度は俺が動揺する番だった。愛撫の手を止めて、朝子の顔をみる。
真剣な目で、朝子は俺の顔を見ていた。
どうして今まで黙っていたのか、それを少し責めるような目で。
俺が呆然としていると、朝子は顔を崩した。

「・・・冗談よ。冗談」
「・・なんだ、冗談か」

おもわず肩の力が抜けた俺。
朝子は、俺のおでことじぶんのおでこをくっつけて、笑いながら言った。

「須藤君だって、ホントは嘘ついてたんでしょ。おあいこよ」
「・・・まあな」

クスクス朝子は笑ったが、俺は、朝子をからかうつもりが逆にからかわれたことが悔しくて、耳を唇で挟んだ。

「ヤン」

小さく朝子が声をあげる。
そのまま、耳を舐めた。

耳を俺に任せながらも、朝子は眼を閉じて微笑んだままだ。まだまだ余裕があるわよ、ということらしい。

「・・・須藤君、がさつかと思ってたけど結構上手じゃない」
「お褒めに預りどうも」

俺はそのまま耳を愛撫した。左耳を舐めながら、右耳を指で何度かなぞり、指を耳の穴に何度か入れてやる。もちろん、耳を爪で傷つけないように丁寧にだ。

「ウソ・・・こんなやり方があるんだ」

耳の穴に繰り返し指を入れてやると、朝子は驚いた声をあげた。

「ビックリした?」
「うん、でも・・・ゾクゾクする」

朝子は指を穴に入れられるたびに、少し緊張をみせ、少し瞼を震わせた。
俺は朝子のブラウスを脱がせ、ピンク色のブラを露わにした。
何度かブラの上をなぞってやると、朝子もそれなりの反応を示したが、期待したほどではない。

それならばと、すばやく朝子の後ろに回り、首筋から背中の方をなぞってみる。

「ア、アアアアアアア、アッ・・・・」

こぼれるようにそんな声を漏らす朝子。

「こっちの方が感じるんだ?」
「・・・よく、わかったわね・・・感じるの、背中」

俺が背中をなぞってやると、朝子は嬉しそうに背中を反らせ、喉を上げた。

「あーん、あん、・・・・あはーん」

声をあげる朝子は、どこか楽しげだ。

「あん・・・あん、あん、ねえ・・・?」
「どうしたんだ?」

今度は背中を舌で愛撫しながら、俺が尋ねる、

「どうして、背中が感じるって、わかったの? 今までの男は、初めてで気づいた人なんていなかったのに」

「・・・はじめから気づいてたわけじゃないさ。ただ、朝子の胸に触っても、そんなに気持ちよさそうじゃなかったから先に背中に回った。それだけだよ」

「・・・それは、・・・アン、ソコ、いいわ・・・そう、もっと、もっと舐めて・・・それって、わたしを3回イカせようとしてるから、ってこと? 誰にでも背中を愛撫してあげてるわけじゃないってこと?」

「たまたま3回イカせるとは言ったけど・・・でもだいたい、いつもかな」

それを聞いて、朝子は嬉しそうな、悔しそうな顔をする。

「それで、他の場所も、丁寧にやってくれるわけ?」
「相手の女性が、お望みならね」

「・・・幸せね、須藤君の彼女って」

そして会話は途切れた。

「ア、ア、・・・アーー、いい、いい、・・・ウ、ウ、・・・」

朝子は身体をくねらせ、快感を耐えるような態度をハッキリみせはじめた。これだけの感度があるなら、時間をかければ前戯でもイケないわけではないだろう。

<続く>

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