彼女の様子がおかしくなって家に行ったら 2
2024/07/04
圭子からのメールが三通届いたところでやっとリメールした。
圭子からのメールは、「今何してるの?」だの「今日の雨凄かったね」だの、他愛のないものだった。俺達、そんなくだらない内容でメールやり取りする程、仲良かったっけ?なんてひねくれた事を思いながら…
確か「そうだな」の一言だけ返したと思う。
圭子からのリメールはすぐだった。
「今日何してたの?」
「別に」
俺はイエスかノー、別に、と言う言葉で殆どを対応した。
暫く間をおいてから圭子からメールが入った。
「今日、私の部屋に来てくれたりなんかした?」
俺はこれでピンと来た。
駅での葉月の抵抗、頻繁に鳴っていた圭子の携帯…
つまり、あの日四人は中目黒の圭子の部屋で集まっていたんだろうと。
タダオを置いて葉月と太一が帰ろうとしたらバッタリ駅で俺と会ってしまったと。それで一刻も早く圭子に知らせる為に、葉月は何度も圭子の携帯に連絡を入れたと。
タダオとのセックスがひと段落してから葉月に連絡し、俺が圭子の部屋に向かったかもしれないという話を聞いたと…それで事実確認の為、自分からはしたくもないメールを俺にしたという事。
俺は飛んだピエロだ。葉月や太一は俺と圭子が付き合っているのを知っていながら…
「行ったよ。葉月に止められたけどね」
そうリメールしてから間もなく携帯が鳴った。圭子からだ。
「もしもし…」
怯えるような圭子の声。俺は平静を保つのが大変だった。
そして、圭子は言った。
「大学行ってるって言ったのに、なんで来たの?」
「行っちゃマズイのか?」
「そんな事ないけど、なんでわざわざと思って…」
「お前、大学で今日なにやってたの?」
「だからサークルの打ち合わせがさ…」
言い終わらない内に俺は言った。
「お前今日大学で何の行事やってたか知ってるか?」
「えっ?…って、え?」
「今日は一般人向けの試験の日。学生は一切立ち入り禁止」
「えっ?…いや、え…そんな…事…」
圭子は激しく動揺していた。
「お前また嘘ついたな?最近俺を騙してるだろ?」
「………」
「お前、そんなに嘘つきだったか?なんなんだ?」
「…ごめんなさい…」
消えそうな声で謝る圭子。
「俺達付き合ってるんだよな?何を隠してる?」
その後、泣きながらひたすら謝る事しかしない圭子にイラついた俺は、はっきり言った。
「お前、タダオとよろしくやってんだろ?」
「………」
「知ってんだよ。お前さ、これって浮気だよな?俺って一体何なんだよ?」
それでも尚泣きながら謝るだけの圭子。
「圭子、俺と別れたいのか?タダオと付き合いたいのか?」
「…わかんない…」
「わかんないじゃねえだろ!順序が逆だろ?お前、人として最低の事やってんだぞ!」
絶句した圭子の嗚咽だけが受話器から聞こえるだけ。俺のイライラは頂点に達しようとしていた。
「タダオに抱かれて気持ち良かったか?付き合ってる俺とは全然しないのにな」
「…………見たの?」
「鍵も掛けないで大声で喘いでるくせによ。見たんじゃねえよ、見えたんだよ!」
「…ひどい…」
「お前に言われたくないよ!この半年間俺を騙しやがって…」
「…見てたなんて…最低…」
「お前いい加減にしろよ。本気で怒らせんなよ…しかしタダオもいい奴だと思ったのに…人の彼女寝とるとは…」
「和重と私の問題…タダオ君は関係ない…」
「お前馬鹿じゃないか?関係ないわけないだろ。あいつ何考えてんだか…あいつ呼び出して聞いてやろうか…」
「やめて。それは絶対やめて」
いきなりはっきりとした口調で言う圭子。
「なんなんだ、お前…」
「お願い、彼は関係ないの、本当なの…」
俺は圭子の言ってる意味が全く分からなかったが、いろいろ聞き出してやっと理解できた。つまり、タダオは俺と圭子の関係を知らないという事だった。圭子はタダオに言えずにいたらしい…
都合のいい女だ…半年間俺を騙し続け、自分の都合の良いように振る舞う圭子。本当にこれは圭子なのか?と思える程、変わってしまったと思った。
でも、浮気相手をかばう圭子の言葉は、正直キツかった…
俺はタダオに話そうと思った。俺を騙し続けておきながら、タダオには会うなという圭子の身勝手が通るはずがない。
そこまで舐められるわけにはいかない。
俺は知人から聞き出したタダオの携帯に連絡した。
第一声からタダオの人の良さが現れていた。本当に、やっぱりいい奴だった。考え様によっては、タダオも犠牲者だ。
俺は感情を抑え、圭子とは高校からの付き合いである事、そして今も続いている事を伝えた。
当然、タダオは驚いていた。そして俺に謝ってきた。
タダオに謝られる筋合いはなかったが、更に彼は圭子とはすぐに別れると言ってきた。タダオは、圭子とは「付き合う」という明確な意思表示はお互いないままここまできてしまったが、タダオの中では完全に「付き合っている」ものと考えていたとのこと。する事してるんだし、普通男はそう思うだろう。
タダオには、今まで通りの関係を圭子と続けて欲しいと言った。真面目なタダオは、それは出来ないと言っていたが、俺のプライドの為にも今までと同じ関係を続けて欲しいと頼んだ。
正直、根拠のない意味不明なプライドであったが、タダオは渋々了解してくれた。
かと言って、この時点で俺は圭子と別れたいとは心の底からは思えないでいた。圭子の心は俺には全く残っていないとは思っていたが、これまでの三年間の歴史が心にあり、期待感みたいなものがこの期に及んでも残っていたのだと思う。
その翌日、圭子から連絡が来た。当然、俺にとっては不本意な内容だった。
「どうしてタダオ君に言ったの?彼は関係ないって言ったじゃない」
ややヒステリックに突っかかってくる圭子。
「関係ないわけがない。君の身勝手さが招いた結果だと何故気付かない?」
「タダオ君まで傷つける事はないと思う。傷つくのは私達だけで充分でしょ?」
「私達?傷つくのは俺一人だけだろ。俺がどれだけつらい思いをしていたのか考えた事があるのか?大体君は俺との関係をどう考えてるんだ?」
電話はいきなり切れた。
このやり取りでやっと俺は圭子を諦める決心がついた。
それから春の新歓の季節になるまで、俺達三人はニアミスする事もなかった。俺自身、最低限の単位を取る為の授業しか出なくなったし、後はサークルだけ。圭子とはあの日以来全く連絡はとっていなかった。
タダオとの始まりがそうだった様に、俺との終わり方まで曖昧にするつもりなんだろうな…とボンヤリ考えていた。
そして、再び俺はショッキングな場面に遭遇する事になる。
うちの大学だけかもしれないが、新入生の勧誘の為に、特に文科系のサークルが手の混んだ出し物を各部室で行う。体育会系と違い、比較的大きな部室を与えられるので、各部かなり気合を入れて取り組んでいた。
俺はクラスの悪友に頼まれ、囲碁研究会なる怪しげなサークルのサクラをしていた。
こないだまで高校生の若者が興味を示すはずもなく、閑古鳥の部室から部員が一人二人と消えて行く…馬鹿らしくなった俺は、奥のダンボールの山に乗って昼寝をしようとした。
しかし、昼寝どころかすっかり眠ってしまい、目を覚ますと外は薄暗くなっていた。
人に頼んでおきながら放ったらかしとは、なんて苦笑いしながら起き上がった。物音一切聞こえない、静まりかえった校舎内を歩き出すと、イキナリどこかの部室の隣の狭い準備室を飛び出して向こう側へ走り出す葉月をみかけた。
「じゃあね」とか、準備室内の誰かに向かって言いながら出て行った。
葉月と圭子は同じサークル。準備室に誰かがいると思っただけで緊張してしまった。
何食わぬ顔をして前を通り過ぎようとした時、やはりというか…圭子の声が聞こえた。
「もう皆帰ったよ。早く迎えに来てね~」みたいな会話だったと思う。
圭子は一人、でもここに誰かが迎えに来る…タダオだろうか…
そう思うと最後まで見届けたくなり、俺はそのまま隣の部室に身をひそめる事にした。
久しぶりの緊張感だった…
約20分後、近づいて来る足音が隣の準備室に入っていった。
二人が話し込む声が聞こえたが、男の声が低くてよく聞こえない。
俺は半年前と同じ様に、ゆっくりと準備室のドアから一歩入り、雑然と配置されたロッカーの影から中を覗いた。
「誰か来たらどうすんのよ」
「来るわけないじゃん。この建物自体、もう誰もいないよ」
どうも声が違う様な気がした。暫くタダオの声を聞いていなかったのもあるかもしれないが。
二人の声が聞こえる方を見ると、椅子に座る男の上に乗っかって抱き合いながらキスをしているカップルが見えた。それ程広くない部屋なので、かなりの至近距離、後ろ姿ですぐに圭子である事は分かった。
お互いの頭を抱きかかえる様にして顔を左右に振りながらの激しいキス、情けないがそれだけで俺は勃起してしまった。
長いキスが終わり、二人が唇を離した時にやっと男の顔が見えたが、俺は一瞬目を疑った。
そこにいたのはタダオではなく、太一だった…
何故圭子と太一が?
俺は混乱した。
太一は葉月と付き合っていたのでは?
俺の知る限り、タダオと太一は正反対の人間。
誠意ある好青年のタダオは男女両方から信頼されている。対して太一は自分の性的欲求をまず第一に考える女ったらし…成宮似の甘いルックスに騙される女は多い。
葉月は単なるセフレか?
なら、圭子は?
圭子は懸命に太一の耳元を舐めあげており、太一は薄ら笑いしながら両手を圭子のミニスカートの中に入れてお尻を撫で回していた。
太一は圭子を促すと、人来たらどうしよう、と言いながらも太一の前に膝間付いて急いで太一のジーンズを脱がせにかかっていた。太一は黙って圭子を見ているだけ…
トランクスからやっとの思いでペニスを引っ張り出す圭子。
俺はそれを見てギョッとした。
相当でかい。
多分、俺やタダオとは比べ物にならないくらい、大きかった。
世間の女達はこの巨大なペニスにやられたのかな…圭子もその一人か…とか考えていた。
下半身裸の太一の膝の間に正座した圭子は、両手で扱き始めた。
「ふふっ…マジ大きいよね…やらしい…ホントに、いやらしい形…」
そう言いながら徐々に口に含んでいった。
太一は目を閉じなから天を仰ぐようにしており、片手で圭子の髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら煽っていた。
圭子は懸命に前後にスライドさせており、信じられないくらい深く深く咥えていった。おかしな話だが、圭子の後頭部から太一のペニスが飛び出して来るんじゃないかと思うくらい、奥まで飲み込んでいた。
その時、廊下をこちらに向かってくる足音が聞こえた。
俺はハッとしたが、逃げ場がない。
太一も「やばっ!誰か来る!」と言って軽いパニック状態。
すぐに電気を消して暗くなる部屋。
俺は三人に見つかってしまう事を一瞬で覚悟した。
<続く>