保母になった幼馴染み(彼氏に調教済み)が、突然電話をかけてきた

2018/06/02

俺には千里ちゃんという物心ついた時からの幼馴染がいて、ちーちゃん、ちーちゃんと呼んでいた。
周辺に俺たち以外子供のいない地域だったので、いつも一緒だった。
しかし中学校に上がる前にちーちゃんが引っ越してしまい、それ以来交流は無くなった。
親同士が仲が良かったので、俺が中学や高校に入学した時、お祝いで家に来てくれたことはあったが、この年頃になるとお互いの世界があるわけだし、会っても一言も口をきかなかった。
で、いつしか俺は大学を卒業し、就職で故郷を遠く離れた都会に出てきたわけだ。
こうなってくると、もう一生会うこともなさそうだが、話はここから始まるので、世の中は訳が分からない。
働き出して二年目のこと。
会社帰りに携帯をチェックすると、見知らぬ番号から何度も電話が掛かっていた。
ワン切りか何かかとも思ったが、それならこうも掛けてくるはずが無い。
俺はちょっと不審に思いながらも、その番号に掛けてみることにした。
プルルルル・・・プルルルル・・・ガチャ。
俺「もしもし・・・」
ち「あー!かっちゃん(俺)、久しぶり!声の調子と、国の訛りですぐに分かった」
掛けて来たのはちーちゃんだった。
スゲー懐かしい思いで話をした。
と言っても、今どんな仕事をしているとか、どこに住んでいるとか、そういう話だ。
ちーちゃんは短大を出た後、保育園の保母さんになっていた。
子供の頃から保母さんになりたいと言っていたから、夢を叶えたことになる。
しがないサラリーマンになった俺は、その点を素直に凄いと伝えた。
ちーちゃんは照れくさそうに、「そんなこともないよ」と言っていた。
ち「ところでさあ、かっちゃんは仕事忙しい?」
俺「スゲー忙しい。俺さあ、会社から出て、すぐ電話を掛けてんだぜ。それでもこんな時間(23時)になってんだから、分かるでしょ。
毎日夜は10時まで仕事してるよ」
ち「凄いね!ちーちゃんの仕事は夕方4時くらいまでだよ」
俺「それはそれでスゲー(笑)」
ち「でも忙しかったら、こんなこと頼めないかなあ・・・」
聞けば、ちーちゃんは最近、鬱病だと診断されたそうだ。
田舎の町では少子化の進行が早いらしく、保育園の先生は人余り状態で、ベテランの先生から嫌がらせを受けたそうだ。
けど保母さんという職業は、ちーちゃんにとって簡単に諦められるものではない。
懐いてくれている子供もいる。
その軋轢が引き起こしたもんだろうと、話を聞いた俺は判断した。
今回、急に俺のところに電話を掛けてきたのも、ちーちゃんの鬱病が関係していた。
病院で渡された薬を飲んでいるらしかったが、それがどういう薬なのかちーちゃんには今ひとつ分からない。
それに鬱病にかかったことがバレると、ますます保育園を辞めさせられそうで、周囲の人間に相談することも出来なかったようだ。
俺が頼まれたのは、ちーちゃんが飲んでいる薬がどのような効果のあるものなのか、副作用があるのかないのか、それを調べることだった。
俺は昔から本ばかり読んでいたから、そういうことも知っているだろう考えて電話したそうだ。
俺「それなら大丈夫。大学の時に薬学部にいた友達がいるから、そいつに聞けばすぐ分かると思う」
ち「ありがとう。でね、一つどうしても知りたいことがあるんだけど・・・」
一番の問題は薬の副作用だった。
飲み続けることで将来、子供が産めなくなるのは嫌だというのだ。
保母さんになったことからも分かるとおり、ちーちゃんは子供好きだった。
将来結婚しても子供が産めないのは嫌だという気持ちは痛いほど分かる。
そういうことなら、よし、すぐに安心させてやろうということで、俺は薬の名前を聞き出すと、薬剤師の資格を持ってる友達に電話して色々調べてもらった。
幸い、ちーちゃんが飲んでいた薬は軽いもので、将来子供が産めなくなるというものではなかった。
夜中12時近くなっていたが、それでもいいと言っていたので、俺はちーちゃんに電話してそのことを伝えると安心したようだった。
ち「ごめんね、かっちゃん。急にこんなこと頼んで」
俺「ちーちゃんのためなら、これくらいなんでもないって」
ち「でも、びっくりしたでしょう。ちーちゃんが鬱病だって聞いて」
俺「別に。ま、そういうこともあるでしょう。それより一回こっちにおいでよ。色々案内するからさ」
ち「そうだね。ちーちゃんもそっちに行ってみたいよ。そうなったら部屋に泊めてね(笑)」
俺がこっちに来いと誘ったのは社交辞令みたいなものだった。
笑いながらとはいえ、部屋に泊めてくれなんて言われると思わなかった俺は、一瞬沈黙した。
ち「大丈夫だよ。ちーちゃんが泊まるんなら、おばちゃん(俺の母)だって、いいって言うよ」
「いや、そういうことを言ってるんじゃなくて、男の部屋に泊めてくれってのが、どういう意味か分かってるの・・・」なんてことは、これまで友達として過ごしてきた日々を否定してしまいそうな気がして、言えなかった。
俺は、もしちーちゃんが来たらマンガ喫茶にでも泊まろうと考えて、「じゃあいいよ。泊まりにおいで」と答えておいた。
それからひと月も経たない土曜日のことだ。
夕飯を食ってテレビを見ていると、突如携帯が鳴った。
掛けてきたのは、またしてもちーちゃんだった。
俺「どーしたの?」
ち「ちーちゃんね、今どこにいると思う?」
俺「まさか・・・」
本当にそのまさかだった。
ちーちゃんは今、新幹線の駅にいるという。
だが駅の構造が複雑で、どこへ行っていいかサッパリ分からないと言う。
「こっちの駅は広いねー」なんてのんきに言ってるが、そりゃあ1日に10本も電車が走らない地元の駅に比べれば、どこだって広いだろう。
それにしても、まあ、こっちに来いと言ったのは俺だが、ここまで急に来るとは思いもしなかった。
しかし女一人で放っとくわけにはいかない。
俺は駅まで迎えに行って、1時間かけて部屋に戻ってきた。
ち「広いし、きれいだね」
家賃の割にいい部屋だと、ちーちゃんはしきりに感心していた。
その横で、俺はもう一杯一杯。
朝、掃除しておいて良かったと心底ほっとした。
ちーちゃんは荷物を部屋に置くと、コタツに入った。
ここで酒でも飲ませていい雰囲気に・・・ってのが普通なのかもしれないが、あいにくと俺は酒が飲めないから、ビールの1本たりとも部屋にはない。
あったとしても、薬飲んでる人に勧めるのは微妙だしな。
俺は愛飲している玄米茶を淹れて、ちーちゃんに勧めた。
俺もお茶を飲みながら、1人で新幹線に乗るのは寂しかったとか、ちーちゃんの話に耳を傾けていると、話はだんだん昔のことに移っていった。
ち「子供の頃は、毎日が楽しかったね」
楽しいと言う割りに、どうしてちーちゃんがしんみりしているのか、気遣いってやつが苦手な俺に分かろうはずもない。
俺「夏休みは毎日田んぼか川に行って、アホみたいにおたまじゃくしとかメダカを獲ってたなあ」
ち「カブトムシを捕りにも行ったし、節分の時に家の中で豆を撒きすぎて、怒られたこともあったよね」
長いこと思い出しもしなかった子供の頃が、鮮明に頭の中に浮かんだ。
ちーちゃんの言う通り、子供のころは確かに楽しかった。
高いところに登るだけでちょっとした冒険だった。
今の俺は同じことの繰り返しになってる毎日に飽き飽きしているが、どうして子供の頃は飽きもせずに毎日過ごせたのだろう。
そんなことを考えたし、考えさせてくれる幼馴染っていいなあと感じた。
ふと見ると、ちーちゃんが泣いていた。
昔を思い出したから、と言うのではなさそうだった。
何か深刻な雰囲気があった。
俺は泣きたいだけ泣かせた方がいいだろうと思った。
というのは真っ赤な嘘で、当時の俺は女と付き合ったことは一度たりともなかったから、女の涙にどう対応していいのか分からず固まってしまっただけだった。
それから30分近くちーちゃんは泣いて、少し落ち着いてきた頃を見計らって、俺はお茶を淹れ直し、ちーちゃんに渡した。
ち「かっちゃんは優しいね」
これまた何が優しいのか全く分からない。
だが下手に何かするより、泣きたいだけ泣いてもらうという処置はベストだったようだ。
声に笑いが戻っている。
俺「俺さあ、ちーちゃんのためなら何でもするよ。だからさ、何か話したいことがあるんだったら、言ってくれよ」
ち「そっか。ありがとね。じゃあ・・・」
ちーちゃんが何で泣いたのかは分からないが、話したいことがあるんなら真剣に耳を傾けようと思ったのだが・・・。
ち「足が痛いよ。何とかして(笑)」
真剣な話にならなかったので俺はズッコケた。
しかし、ちーちゃんの言うことはもっともなことだった。
俺の部屋はいわゆるフローリングだが、絨毯も敷かず、こたつも板張りの上に直接組んでいた。
30分も同じ姿勢で泣いていれば、足も痛くなるだろう。
だが困った。
俺の部屋には座布団も無い。
ベッドも無いから、そこに腰掛けろとも言えない。
俺「布団を敷くからさあ、その上に座ってくれ」
俺は押入れから布団を出した。
俺とちーちゃんはちょうど横並びの形で、壁にもたれながら布団の上に乗った。
ここまできて、やっとちーちゃんは何故泣いたのかを語り始めた。
どうやら鬱病のせいで、付き合っていた彼氏と最近別れたらしい。
それだけではない。
つい今朝方、母親から、「あんたが鬱病だなんて、恥ずかしくてご近所に言えないわ」なんてことを言われたらしい。
俺の所に来たのも、母親の言葉で家に居られないような気がしたからだそうだ。
俺は憤慨した。
田舎の…

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