成犬譲渡ボランティア

2018/01/24

石田るか「わんこの涙 成犬譲渡ボランティアが見た泣ける話」
兄が経営する犬猫病院を手伝う傍ら、成犬譲渡ボランティアをしている作者が自分の体験をもとにして描いたエッセイ。
その中から特に後味の悪いエピソードを一つ。
作者は都内の成犬譲渡ボランティア団体で働いている。
成犬譲渡ボランティアとは、街中で保護された野良犬や保健所で殺処分を待つ犬を引き取り、
適切な躾や手当を行い、新しい飼い主に渡す活動である。
3年前、同じ団体のボランティア、AとBが珍しい犬種を保健所から引き取ってくる。
その犬は取扱いが難しい(骨が弱い、散歩の際には細心の注意が必要)犬種の上に骨折しており、
本来どの団体も引き取らないようなケースだった。
ボランティア団体の代表者は犬の引き取りや飼い主の調査は慎重に慎重を期して行うべき、
一度引き取ったら最後まで責任を持って飼い主を探すべき、しかし難しいケースは最初から引き受けるべきではないと考えており
その犬の引き取りは団体の趣旨に反していた。
しかしAとBは「このままでは殺処分されてしまう」
「可哀想だったから、仕方ない」と代表者に確認もとらず、勝手に引き取ってきた(保健所へは、別の犬を引き取る予定で行った)
案の定、骨が弱い犬の治療には大変な手間がかかり(普通の犬のように、針金やプレートを入れることが出来なかった)
人間のようにギプスをはめ、半年にもわたるリハビリが必要になった。
立つことが出来ないため、大小便は垂れ流しとなり、粗相をする度にお尻を拭き、床を拭かなくてはならなかった。
肝心のAとBは、「他の犬を担当しているから」と引き取った犬の世話を拒否し、著者らが数人がかりで世話をした。
8か月後、犬の怪我は完治した。
最初は予定外の厄介者の世話に辟易していた著者らボランティアも
世話をしているうちに情が移り、「フルート」という名前をつけ、可愛がるようになった。
前述のように怪我をしやすい、とても世話の難しい犬種の為、フルートはこのまま団体で飼おうと代表者は考えていた。
著者達ボランティアもおおむね賛成だった。
しかし、それまで一切フルートの世話をしなかったAとBは「この団体は犬を飼う団体ではない。
団体の理念に則って新しい飼い主を探すべきだ」と主張し出した。
その際、AとBは代表者とかなり激しくやり合い(代表者もかなりキツイ性格)、AとBは自分達は会を離脱して新しい成犬譲渡ボランティアを作る。
フルートの譲渡をこの団体での最後の活動にする、と言い出した。
出ていくと言っている者を留めるわけにもいかず、フルートはもともとAとBが連れてきた犬ということもあり
フルートの譲渡はAとBに一任されることになった。
AとBはインターネットで新しい飼い主を見つけた。
その飼い主は
・30代のシングルマザー
・無職だが、資産家の父親が生活支援してくれているので暮らしぶりは裕福
・小さい女の子と二人暮らし
・亡き夫が残した都内の豪邸で生活(広い庭つき)
という相当に恵まれた条件の人だった。
一度だけ作者も面会したが若く可愛らしい感じの人で理想的な飼い主に見えた。
フルートはその飼い主(以後、C)に引き取られた。
数年後、作者はネットで犬を飼っている人たちのサイトめぐりをしていると偶然、フルートそっくりの犬の写真を載せているブログを発見した。
骨折した際に残った傷跡といい、特徴的な顔の模様といい、年齢といい、引き取られた日にちといい、どう考えてもフルートであった。
懐かしさで胸が一杯になった作者はフルートの飼育状況を載せたブログを読み進めた。
引き取られた初日のブログでは元気いっぱいのフルートの写真が載せてあり、Cがフルートを引き取ったことをとても喜んでいることが伝わってきた。
しかし、翌日のブログには目を疑うような文言が踊っていた。
「今日、散歩中にプルートを自転車のかごに入れて散歩してたら、あのバカ犬勝手にカゴから飛び降りやがったの★
リードで首つり状態になるわ、足は車輪に挟まれて複雑骨折するわ最悪★獣医に連れて行ったら
特殊な犬種で特別な治療が必要だから滅茶苦茶高い治療費かかるって♪でも金ないから放置?#9829;」
混乱した作者がCのブログを読み進めるととんでもない事実が判明した。
・Cは生活保護を受けている母子家庭
・家は狭く古い平屋建ての借家であり、家中に段差がある
・子供は10代後半の男の子で、ひきこもっており、犬を苛めてストレス解消している
・掃除・洗濯は一週間に一回程度
A・Bに渡されていたCのプロファイルは出鱈目だったのだ。
怪我をした後のプルートの写真は載っていなかったがCは高い治療費と、手間暇を食うプルートの介護で
一気にプルートへの愛情が冷めたらしく、わずか1週間で愛犬ブログの更新は止んだ。
それ以降の日付は、月に2~3度思い出したように、更新がある程度になった。
その内容も天気のことや、日常の愚痴の類で、プルートには触れられていなかった。
ブログ最後の更新は1年近く前、しかも内容は
「今日最高気温38度だって★マジやばくね?子供と一緒にファミレス涼みに行って8時間過ごしちゃた★
かえってみたらうちの犬(プルートとは書いてなかった)熱中症で死にかけ♪受ける#9829;でも水飲ませたらふっか????つ」
いてもたってもいられなくなった作者は他のボランティアと共にAとBの元に向かった。
自分たちで新しい成犬譲渡ボランティア団体を立ち上げていたAとBは作者達が2年前のことなどさっぱり忘れており
作者達が詳しい当時のことを話してようやく思い出したようだった。
プリントアウトされたCのブログを見てAとBは流石に驚いたようだったが、
「もう2年前のこと」だとしきりに言い訳を始めた。
代表者が譲渡後に一度も訪問しなかったのか、
家族構成や住居があまりに違うが、引き渡しに行った際家の中に入らなかったのかと問い詰めた。
しどろもどろのA曰く
「新しい団体立ち上げの準備に忙しかった」
「家は改装中なのであげられないと言われた、近所の公園で引き渡した」とのことだった。
何も言う気になれず作者達はAの自宅を去った。
作者達は最初、記録に残っていたCの住所を尋ねてみた。
埃まみれの大通りに面した、築40年はたっていそうなあばら家には庭などなく、既にC達も住んでいなかった。
不動産と大家に問い合わせたところ、家賃を何か月もため込んだ挙句夜逃げしたという回答が返ってきた。
犬が残されていなかった、と聞いてもCが借りていた家は壊れた電化製品と、大量のゴミ山の中に犬の抜け毛やカラカラになった糞が残されていたが
犬の姿はなかったそうだ。
近所に聞き込みをしたがゴミをため込んで腐らせるわ、夜中の2時3時まで大音響の音楽を流して安眠妨害するわ好き勝手にゴミを出すわの
モンスターであったCに近所付き合いなどなく、誰も近況を知っている人はいなかった。
ただ、Cが犬を散歩している姿は誰も見たことがなかった。
次に作者と代表者は緊急連絡先として記録されていたCの実家を尋ねた。
栃木にあるCの実家は、大変な豪邸で「実家は金持ち」だけは本当のようだった。
玄関先に出たCの父親は、Cの名前を出すだけで不愉快になったらしく、作者達を家にあげもしなかった。
父親によると
・Cは高校の時に妊娠し、相手の男と駆け落ちしてからはほとんど連絡がない
・その際に何千万も入っていた通帳を盗んで解約した為、勘当した。
・Cも孫も自分は関係ない
・最後に会ったのは半年前で、その際Cは交際中の黒人と再婚し渡米するので、準備に必要な金をせびりにきた
とのことだった。
犬は連れていなかったらしい。
作者達は最悪の事態を想定し、手分けして都内中の保健所に電話をかけ、フルートと同じ種類の犬が保護されていないか、もしくは保護されたことがないか聞いた。
しかしどの保健所からもフルートの記録は出てこなかった。
結局、フルートの生死すら確認できないままこの件は終わり、作者は後遺症の残った体で虐待を受け続けるなら
死んでいた方がフルートも楽かも知れないと結んでいた。
この件の後、代表者が電話とAに事の顛末を説明したがAは「年間に40万頭も殺されてるんだからまずは助けることを優先すべきだ!
現に私は本来見殺しにされた犬を何匹も救ったではないか!」とガチャ切りしたらしい。
確かに会の主義に背いてAとBが引き取った犬の中には無事回復し、優しい飼い主に引き取られ幸せな生活をしている犬もいる。
しかし、結局難病が治らないままたくさんの手間とお金を注ぎ込んだ挙句…

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