久しぶりの女友達からメールが届いた 1

2024/08/27

俺は36歳の会社役員。今年1月に7歳離れた妻と結婚して、
現在妻の身体には新たな生命が宿っている。至って普通の夫婦だ。

しかし3月11日に起こった東日本大震災の影響で心が
ナーバスになっていた妻が10日間くらい実家に帰りたいと言うので、
5日前に里帰りした。

俺としてはこれからお腹の子供も早く成長するだろうし、
なかなかすぐに行ける所ではないし(妻の実家は九州の温泉街)、
何よりも義父母や親戚が凄く心配していたので帰郷する事を許可したのだ。

本当の事を言うと俺も付いて行きたかったのだが、
仕事の関係もあって断念した。

そろそろ本題に入る。

3日前の午前中に1通のメールが入る。
妻だろうと思って携帯を開くと女友達からのメールであった。

「お久しぶり!ちょっと○○(苗字)さんに御願いがあって。
昼休みに電話していい?」という内容のメールだった。

俺は少し驚いてしばらく考えてから「いいよー。」と返信した。

何せその女友達から連絡が来たのは5、6年ぶりだし、
いや、向こうから連絡して来たのは初めてじゃないかと思ったので躊躇してしまったのだ。
その女友達をSちゃん(苗字の上+ちゃん)。
年齢は俺より2つ年下の独身。
実際「女友達」と言っているが、大して仲が良いという訳ではない。

俺は大学受験を2回失敗し、専門学校に通ったのだが
その時のクラスメイトがSちゃん。

Sちゃんにはその他に女友達が4人居て、割かし俺の友人達共に
気が合ったせいか学校の行事や、飲みに行く時は
必ずそのSちゃん含む女子グループを連れて遊んでいた。

しかし男女共にくっ付いた事は無かったのだが・・・。

で、そのSちゃんというのは堅物と言うのか、
とても真面目で成績はいつもトップであり、
俺らと飲んでいる時でも一切下ネタとかには参加しない。

言ってみれば「私は安っぽい女ではないぞ。」と
振舞っているような感じでもあった。

普通に話をしている分には問題は無く、ふてぶてしさは無かった。

顔は特に芸能人の誰かに似ているというのは無いが、
普通のOLっぽい色白で大人びた顔付きだった。

で、スタイルはというと・・・。
これが結構グラマーで身長は155cm位で目立つのは
胸とお尻の大きさであった。

しかし、夏場なんかでも胸やお尻を意識した薄着なんかを
着ている訳では無く下はいつもジーパンだった。

その当時から俺は『こいつ本当に損しているよなー。
もしかしてレズビアン?』っていう感じで見ていたのだ。

多少長く書いてしまったが、女の可愛らしさというものが余り無く、
俺も男友達もSちゃんに対して恋愛感情とかそういうものは皆無であった。

Sちゃん自身も男と付き合っているという感じではなかった。

学校を卒業した後でも、その男女グループとはほぼ年1回は
飲み行くという関係は続いていたが、Sちゃんは相変わらずであり、
派遣会社を転々とし男っ気が無い生活をずっとしていたらしい。

そして時が経てばグループ内で結婚だの職変えただのと
各自忙しくなってきてからは遊ぶ事も少なくなり、
年賀状での挨拶で情報を知るような間柄になっていた。

そのような長い年月が経ってからのこのメールだ。
別に胸が高鳴る事も無く、「御願いって何だろなー?」
「金の相談は無理だな。」位しか思っていなかった。

そして昼休みにSちゃんから連絡が来たのだ。

S 「お久しぶりー!元気だった?忙しいのにごめんなさい。今大丈夫?」
俺 「おおー!久しぶり!大丈夫だよ。どしたー?」

久しぶりに聞いたSちゃんの声は昔と違って
だいぶ垢抜けたように明るくなっていた。
少しの間は近況報告だとかを話をしていた。

そしてメールの本題に入る。

俺 「で、御願いって何よ?」
S 「うん。実はね・・・。私の恋人になって欲しいの。」
俺 「!? はぁ~?お前、何言ってるんだ?さっきも言っただろ?
俺は結婚したばっかだぜ。」
S 「ごめんなさい。違うの!(笑)そういう意味じゃなくて!」
俺 「ったく・・・。どういう意味だよ。
Sちゃんも冗談が言えるようになったか。」

最初は余りにも常識外れな事を言ってきたので多少言葉使いが荒くなったが、話を聞いてみるとつまりこうだ。

1ヶ月位前にSちゃんの職場での飲み会があって、
その場には会社の御得意様の何人かも招待していたらしい。

その中に年齢42歳の独身の男が居て、そいつがSちゃんをお気に
召したようで、一緒に参加していたSちゃんの先輩の女が
その男と同級生であったということで、
その先輩を通じて飲み会を企画したらしいのである。

しかし、Sちゃんはその男に対して良い印象を持っては無く、
飲み会でかなりしつこくアタックされたらしく、
自分には彼氏が居るという事実を解らせて諦めさせたいと言う訳である。

何とも下らない話である。

俺 「嫌だったら行かなければ良いだけの話じゃないの?
女を頼って企画させるその男も情けない奴だな。」
S 「そうなんだけど、会社同士の付き合いもあるし、
先輩に彼氏が居る事を話しても信用してくれなくて、
連れて来なさい的な事を言われたから・・・。」
俺 「それで俺にSちゃんの彼氏役になって飲み会に参加しろと?」

S 「御願い!○○さんは年上で安心だし、御礼に何か御馳走するから!
他にも大勢居るから堅苦しさは無いし、奥さんには私から説明してもいいから。」
俺 「あっ、言って無かったけど嫁は里帰りしていて居ないよ。」
S 「それじゃあ好都合じゃない!人助けだと思って御願いします!」

とまぁこんな会話のやり取りだった。

相変わらず高飛車な女だと思ったが、本当に困っている感じは
痛い程伝わったし、どうせ今は俺1人で暇しているし、
こんなに御願いされたんじゃと思い、
考えに考えてOKした。

しかしその飲み会は翌日土曜日の午後6時から。
急過ぎる話だから駄目と言ったが、
当の本人は散々悩んだ挙句、こんなに時間が掛かってしまったと言っていた。

というような事でOKはしたが、ある程度の打ち合わせと
情報は必要なのでそれを聞いてみた。

それは以下の通り。

① 明日はスーツで来て欲しい。
② 本当の彼氏のように振舞って欲しい。
③ しかし変な事はしない。
④ 全員の前では紳士的に接して欲しい。
⑤ 下ネタはNG!

それを聞いて俺は「やっぱり俺、辞めるわ。そういう男を早く作んな。」
と言ったら、余りにもばつが悪かったのか、ある程度は俺に任せるという事で一致した。

そして当日が来た。

飲み会の会場は比較的会社から近い所だったので余裕であったが、
出掛けようとした時に得意先から電話があり、
話をしていたら30分位経過してしまい、
焦った俺は電話を切った後すぐSちゃんに
「30分位遅れる。ごめん。」とメールを打って急いで会社を出た。

タクシーを捕まえて居酒屋に到着。
到着してSちゃんに連絡したら出なかったので、
そのまま係りの人に案内して貰い、部屋に通される。
そして俺は「初めまして。」と15、6人集まっている人達に挨拶をし、
Sちゃんを探した。すぐに奥の方でSちゃんは
「○○、こっち!こっち!」と手を挙げて俺を呼んだ。
Sちゃんは俺の名前を呼び捨てに呼んだ。

『おー、なるほど。もう彼氏と彼女役が始まっているという事か。』
そして「おう、待たせたなA美。」
俺もSちゃんの名前を呼び捨てにして、今日は徹底的に
彼氏役をこなそうと思い、男らしく強引的な感じで演出しようとした。
『案外今日は楽しめるかもな。』と、愛想笑いを振り撒き部屋に中に入った。

(以下、SちゃんをA美にする。実際これ以降はずっとA美と呼んでいたので。)

それにしても5、6年ぶりに会ったA美。俺は少し驚いた。

服装は白の黒いラインが入ったスーツで、胸元が少し見えて色っぽい。
髪は相変わらずの黒毛だったが、ずっとセミロングだった髪が多少長くなっていた。
白のカチューシャを付けて可愛らしい感じもする。
顔は薄い化粧をしていて全体的に今までに見たことが無い
色っぽいA美がそこに居た。

「○○、おっそーい!もう!」と俺をドンと叩いてきた。
たった30分の間でA美も周りの人達もかなり出来上がっていた。
そしてA美に飲み物を頼んでと御願いし、集まっている人達に紹介された。

A美の彼氏という事で、かなり俺は注目されてしまい、
物珍しいような目で見ていた奴も居た。
『こいつは相変わらずお堅い奴で通っているんだな。』
とすぐに解ってしまうのが何とも可笑しくてしょうがなかった。

そしてA美はトントンと膝を叩いて俺の耳元に口を寄せて
「前に座っている男が例の人、その隣が私の先輩ね。」と囁いてきた。

その時A美の囁き声と明らかに俺の耳に彼女の唇が少し触れた時、
一瞬ゾクッとしたが冷静さだけは保てていた。
そして目の前に居るその男と先輩とやらに改めて挨拶をした。

男というのが見た目は小太りでちゃんとしたスーツを着ていた。
見た目はまあ悪くないが、どこかしら内気な感じのつまらない男だった。

先輩はというと、既婚者で話は面白く、感じは悪くない。
容姿とかは特徴の無い女だったからこれ以上書く事が無いのだが、
2人は明らかにつるんでいて俺達の関係とかの話を突っ込んできていた。

いつの間にか、先輩が先陣切って話をし、俺達がその話を聞き答えをし、
その男を弄るという構図になっていた。
実際にA美の彼氏が来たという事でそのような流れになっていたのだ。

俺は話を聞きながら周りに合わせようと急ピッチで酒を飲んでいたが、
あっという間に他の連中は男女同士がくっ付き合って楽しそうに話をしていた。

まるで合コンのようであった。
いや、最初から合コン前提の催しのようであった。
こっちでは段々と俺達に対して下らない話を先輩がぶつけ、
男がそれに反応して先輩とA美はゲラゲラと笑っている。
段々と俺は腹が立ってきていた。こんな安っぽい所にこの俺を参加させるとは。

俺は少しの間を見てA美の耳を引っ張った。

「イテテ・・・。」
そして思いっきりA美の耳に口を付けながら
「冗談じゃない。俺、もう帰るぞ。」と多少大声でA美に言った。
A美は「御願い、もう少し居て。御願い。」と懇願するだけだった。

今更、もめたくは無いのだろう。

そんなこんなで時間が経ち、だいぶ酔いも回っていた頃に先輩とやらが、
「貴方達ってどんなキスとかするの?教えてよ?」と言ってきたのだ。

俺もA美も少し驚いてしまっていたが、俺は「普通ですよ。時には優しく、時には激しく。なっ?」
とA美に振ると、「そうそう。先輩なんかと同じですよー。」
と俺達は笑いながら答えたのだ。そして次に出た先輩の言葉。

「じゃあ今ここでしてみてよ。」

俺達は完全に固まった。すかさずA美を見たら下を向いてモジモジしていた。
恥ずかしいのか、やばいと思っているのかは解らなかったが・・・。

俺は「止めて下さいよ。もう。A美も困っているじゃないですかー。」
と話題を早く逸らそうと思っていたが、そこで先輩の隣の男が

「いや、僕も見てみたいなー。キス出来ない理由なんて無いですもんねー。」
とニヤニヤしながら言ってきたのだ。

俺はこの男の何とも言えない態度に腹が立ち、ぷっつり何かの糸が切れてしまった。
その瞬間俺はA美の頭を少し強引に寄せてA美の唇を奪ったのだ。

「っん・・・。ぅ、ぅ~ん・・・。」

A美は突然の出来事に身体を硬くしながら少し震えていた。
そして微かにA美の唇も震えていたようだった。

俺は『まさかこいつ、本当にキスの経験も無いのか?』
と思いながらそろそろ俺が離そうと思った時には、
少しずつA美の身体から力が無くなり
自分の身体を俺に預けるような感じになっていた。

俺はそっと口を離し、「もう少しエロく・・・。」
と囁いて再びA美の唇に俺の唇を重ねた。

そうして俺はA美の唇に自分の舌をゆっくりなぞるように這わせ、
唇の中に舌を差し込もうとすると、A美は舌を微かに震えながら出してきたので優しくA美の舌を俺の舌と絡め合わせた。

自然に俺は片方の手をA美の腿に這わせていたら
A美は俺の手を握ってきたのだ。
その手は暖かく少し湿っていて、もっとキスを求めているようにも感じた。

次第にA美の息使いが激しくなってきて
「んふ~。あっ、はぁ~、はぁ~・・・。」
といやらしい声が漏れ始めていた。感じてきているようだ。

A美の体温、声、息使いの生暖かさに俺は少し興奮していたが、
妙な落ち着きもあった。A美の唇と身体を優しく離し、
「こんな感じでいいですか?」と前の2人を少し睨みながら
言うと、先輩は

「本当にすると思っていなかったぁー。ごめんなさいね。」
と謝ってきたのだ。

男はというと・・・。
目の前で好きな女が男とキスをしている光景を
まざまざと見せられてかなりショックを受けたらしく、
酒を飲みながらダンマリこくってしまった。

おそらく俺を本当の彼氏と思ってなく、
完全に納得する為に最後の砦と思い、俺達を煽ってみたのだろう。

そして俺はA美に耳元で「ごめんな。」と囁くと、
「ううん。大丈夫・・・。」
とA美は俺の目を見ると顔を赤らめながら下を向いてしまった。

しばらく我々は普通に話をしながら酒を飲んでいたが、
A美の様子が少しずつ変わってきたのだ。

<続く>

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