母ちゃんより怖い女に初めて会った 1
2024/08/05
新入時配属先で紹介が済んだ後のこと。
嫁「指導担当の○○です。」
俺「××と申します。よろしくお願いします。」
値踏みするように見られた後で
嫁「合宿研修で教えられたことは全部忘れて下さい。クソの役にも立ちませんから。」
俺「はい?(この女今クソって言った?)」
嫁「三ヶ月で業務内容全部覚えてもらいます。」
俺「三ヶ月ですか!?」
嫁「出来ませんか?出来ますか?」
俺「がっ、頑張ります!」
嫁「頑張るとかそういうのは当たり前なので一々言わなくてもいいから。」
俺「・・・・・・」
嫁「事務関係は一ヶ月で掌握してください。」
俺「・・・はい・・・」
ようやく笑って
嫁「私のミスはなたのミスにならないけど、あなたのミスは私のミスになるので忘れないで下さいね。」
怖かった。
母ちゃんより怖い女に初めて会った。
小便ちびるかと思いました。
びっちり後くっついて回って、
部内で「影」ってあんまり嬉しくないあだ名までつけられたが、宣告期間内に仕事は一通り覚えた。
その間プライベートな会話一切なし。
業務内容以外は沈黙タイム。
指導終了後ねぎらいの言葉も何もなかったけどやっと解放された。
万歳!
んで正式に別のチームに組み込まれて1/4人前位の戦力として働きはじめた。
当時完全フリーだったのと何となくって雰囲気で、そのチームの嫁と同期の女と付合うことになった。
嫁とは正反対で優しいし、目が合えば笑ってくれるし、もうパラダイス状態ですよ。
でもな、1年ちょっとたって段々その彼女の本性というか
他人への姿勢みたいなのが見える事件があった。
チーム解散どころじゃなくて一部転属されかねないくらいの痛恨のトラブル。
原因はその彼女がやらかしたことなんだけど。
でもいつの間にか俺がしでかした帳票入力ミスが全部原因みたいなことになってた。
覚えは一切なし。
査問委員会みたいなもんまで開かれそうになっちゃて、涙目の俺に彼女が言ったのが
「私のためだったらかぶってくれるよね?」
もしかしてそれ、泥かぶって辞めろってことかよと抵抗したんだけど
なんだかチームの他の何人かもそんな空気になっちゃってて。
逃げたいけどトラブル処理もあるし、下っ端なんで逃げるわけにも行かないし。
でもそれ済んだら辞めろみたいな、中半ウツ状態のまま出社してた。
TR定時に押されてでも残り7時間は毎日サー残な?みたいな扱いです。
昼休もデスクでとり、間パン食いながら検算してろって感じ。
そしたら他のチームにいた嫁が来て言った。
「××君(一応別チームなんで君に昇格してた)ガント出して見せて。」
で言われるままにガントチャートとか日報とか手帳出して見せました。
嫁「××、今のチーム外れることになってもいい?」
そんなこと言われてもどうせ社に残ってられないっすよ、○○先輩。
言いかけたけど下に付いてる間、泣き言いう前に頭と手を動かせって調教されてたので、yesともnoとも言わずに嫁が見やすいようにデータ出し続けた。
嫁「今のチームに未練あるかって聞いてんの。答えなさい。」
相変わらず怖え。
感情が全然こもってない声で言われるから泣きたいくらい。
実はもう泣いてたんだがw。
嫁「泣くな。泣いたってどうにもなんないでしょう。聞いたことに答えなさい。」
仕方ないから答えたよ。
俺「未練はないです。」
嫁「ないね?」
俺「ないっす。」
指導中も何回か見せられた、すっげー乾いた笑い顔で言われたのが
嫁「悔しくはないんだ?」
むっかつくー、なんだこの女。
でも出たのが怒りの言葉とかじゃなくて
俺「おえっはうっふぅ~」
精神的に折れちゃってました。
嫁「××最近ちゃんと眠れてないんじゃないの?セブンでビール買って来て飲んでそこらでひっくり返ってなさい。」
初めて優しいことされた。
いや、久しぶりに他人に優しいこと言われた。
いくらなんでもそういうわけにはいかないので
俺「いいです。」
そう答えるのだけが精一杯。
やっぱ情け容赦ない感じで
嫁「××の意見はどうでもいいんだよ。言われたとおりにしなさい。私にはルーツのブラック6本買ってきて。はい、お金。」
万券握らされてお使いに行かされました。
嫁「行く前に鼻くらいかんで顔洗っていきなさい。」
ちょっと怒られてからだけど。
んで自分用に発泡酒、嫁には言いつけどおりルーツ買って帰社しました。
そしたら嫁がもう、ものっすごい勢いでチーム全員のデスク周り漁りまくってた。
引き出し開き放題。
プリンタからはシュッシュ、シュッシュ何やら出力され放題。
アホみたいにコンビニ袋ぶらさげて呆然と立ち尽くすしかない俺に
嫁「今私がしてることは全部××は見ていない。知らないことだから。いい?ほら、コーヒー頂戴。そしてあなたは寝てなさい。」
静かに言い放ってコーヒーごくごく喉鳴らして飲み始めた。
俺「先輩・・・何やってんですか・・・?」
そりゃ当然聞くし。
嫁「あーなーたーはーなーにーもーみーてーいーなーい。OK?」
嫁らしからぬ言い方でにっこり言われ、目であっち行ってろと部屋の隅っこに行くように指示された。
嫁「ほら。ビールも買ってきたんでしょう?買ってこなかったとは言わないよね?」
俺「・・・買ってきました。」
嫁「飲みなさい。」
体育会系ってわけじゃないんだけど逆らったら酷い目に合わされるイメージってわかるかな。
そんな感じ。
飲むしかない。
そのころまともにメシ食えてなかったし眠れてもいなかったので3本目くらいで酔いが回ってきた。
俺「先輩。俺こんなんなら帰って寝ますけどいいですか。」
考えたらすごい失礼な言い方だけど酔ってるしな。
ダッシュで走ってきて頭スコーンと叩かれました。
嫁「何で君に残ってもらってると思ってる?私が散らかした後片付けさせるために決まってんでしょう。落ち着くまで寝てなさい。そして起こしたらてきぱき動きなさい。」
掃除要員っすか。
妙に納得して寝た。
嫁「××、起きて。」
ちょっとウトウトするつもりだったのが、いつの間にかガン寝しちゃってて嫁に揺り起こされた。
俺「すみません!片付けですよね。今します!」
飛び起きたら何もなかったみたいに片付いてた。
テンパり過ぎて夢でも見たかと思ったんだけど、嫁がそこらにあった紙袋にいくつか大型封筒つめて立ってた。
嫁「あんまり気持ちよさそうに寝てるんで自分でやったから。疲れてるのね。」
俺「本当・・・すみません・・・」
口の周りガビガビだったんで多分よだれ垂らしながら寝てたんだと思う。
穴があったら入りたい。
というかこのまま静かにどっか違う世界にフェードアウトしたい。
そんなこと思って真っ赤になってうつむいてた。
嫁「家どこだっけ?」
俺「☆☆です。セカンド最寄は★★。」
嫁「セカンド最寄?なにそれ?アハハハハハ。」
俺「言わないですか?セカンド最寄。」
嫁「言わないよ、そんなの。ハハハハハハ。」
なんかメチャウケしたらしくて大笑いされて、つい俺も笑ってしまった。
嫁「もう終電過ぎちゃってるわね・・・・タクチケはな・・・・まだまずいか・・・そうだ。泊まっていきなさい。」
俺「は?」
皆さんお待ちかねのエロ展開ですよといいたいところなんだが・・・
別に嫁の家に泊まっていけとかそんな色っぽい話じゃなくて、このまま会社に泊まってけってだけの話でした。
俺「まずくないですか?就業規定とか。」
嫁「ああ、いいんじゃないの?あなたすごいミスしたことになってるんでしょう?いつもと違って終電間に合わなかったし、お金もったいないから泊まったことにすれば?ちょっと怒られるくらいで済むんじゃないの?」
俺「あの・・・先輩はどうするんですか?」
一応礼儀上聞く。
だって時計見たらもう深夜2時過ぎだし。
嫁「私はタクって帰るわ。」
むごい。
せめて送ってくださいとも言えず、よくわからんまま御礼だけ言って通用口まで送ろうとして拒否られる。
嫁「今日××は私と一緒にいなかった。いい?守衛室いったらばれるでしょう。よく考えなさい。」
もういい加減怒られ慣れましたけど。
バカですみません。
嫁「もうしばらくは大変だと思うけど最後まで頑張って。お疲れ様。」
疲れることなんて何もしてません。
酒飲んで寝こけてました。
そうだよね。
辞めるまで手抜くなってことですよね。
相変わらず手厳しいや。
○○のバカッ!死ね!
内心毒づきながら非常ランプで薄緑に光る廊下を颯爽と去る嫁を見送った。
まだビールあったよなと思ったら、ゴミごと持ち去られてて更にガックリきたのを覚えてる。
当然シャツもよれよれだしネクタイも替えてないし、やっぱ怒られるよね。
と思ったらあっさりスルーされるような存在感。
忘れてました。
俺もうこの社にとっちゃいらない子だったわ。
そんな感じのまま半ばチームで浮いたまま、正直言えば半無視状態のまま残務処理を続けた。
針のむしろって言うけど、そんなことも感じられないくらい温度も感情も感じられない毎日がその日から一ヶ月ちょっと過ぎたある日、部長から呼び出し。
来るべき日がきちゃったかな。
暗鬱な気持ちを抱えて別室に向かうと直属の部長だけじゃなくて、新人研修の時に見た人事の部長やら法務の部長やら偉い人が待ってました。
頑張って入ったとこなのに。
こんな前歴ついてたら多分転職も出来ねーや。
仕方がないから故郷に帰って兄貴のやってる畳屋で使ってもらおう。
ああー、俺の人生終わった。
うつろな気持ちで一礼して立ってたら座るように促された。
直部長「今回は大変だったな。まぁお疲れさん。」
毎日のように謝ってたんでもう謝るのもいいやって気持ちになってたけど社会人ですから。
俺「この度は申し訳ありませんでした。」
謝ったさ。
だってそういう状況になっちゃってんだもん、仕方ないよ。
コンプラ部長「んー・・・まぁね。君の立場じゃどうしようもなかったね。気の毒だけど。」
入社2年目のペーペーっすから。
抗う力も何もないっす。
法務部長「何か希望はありますか?」
俺「・・・・ありません・・・・あの・・・辞表は・・・」
法務部長「依願退職じゃないから辞表なんて必要ないんだよ!」
また怒られた。
人事部長「正式な辞令は末締めで出しますから、それまで自宅待機していなさい。」
決定的なお言葉を頂戴しちゃいました。
皆さん他にも色々言ってたけど全然耳に入らないし、理解も出来ないまま部署に戻って荷物まとめて帰宅した。
<続く>