チン味! デパ地下の食文化

2018/05/10

人々が通学、通勤に足を運ぶ駅。
30階を越える巨大なオフィスビル、そして午後、買い物客でにぎわう地域に浸透するスーパーマーケット……どこにでもある、いつもの光景。
しかし、そこには現代の我々から見て、ひとつの大きな違和感があった。
どこにも“男性”の姿が見えないのだ。
一体、いつの頃からだろうか。
教科書からも消えたその歴史を知る者はもういない。
それでは、男はどこにいったのだろうか?……この時代、男性が人々の目に触れる場所は限られている。
そのひとつが、デパートの地下にある、生鮮食品売り場の一角にある食肉店だ。
店先には、牛肉、豚肉、鶏肉と並んで大きく“男肉”と書かれていた。
-----ショーウィンドウの脇には、両手を縛られて吊るされている5、6名の少年が並んでいる。
見た目は10歳から12歳ほどで、身につけているものといえば、口を塞ぐガムテープと胸元に張られたシールだけ。
つまり、少年たちは“商品”として、全裸で陳列されているのだ。
胸元のシールには、入荷先や日付などのデータに並び、「Y12 P13 B7 ¥38000」などと書かれている。
これが少年の主な商品スペックだ。
Yが年齢、Pがペニスの長さ、Bが睾丸の最大幅、そして¥が価格。
この少年なら12年ものでペニス13センチ、ボール7センチで38000円。
つまりは、そういうことだ。
それがわかればあとは簡単だ。
看板の“男肉”とは、男性器のことである。
肥育に時間がかかる上に、食肉にする部位の小さい、またとない高級食材としてそれは売られている。
ショーウィンドウに群がる女性たちは、ほとんどがしげしげと少年たちの性器を眺めて「おいしそうだけど……やっぱ高いわあ……。」とため息をついて去っていく庶民ばかり。
実際に注文するのは新鮮な男肉を求めてここまで足を運んでくる、一部のセレブなお嬢様や奥様方くらいのものだ。
「いらっしゃいませ!」白衣に白帽の肉屋の女性が、客の目線に気づいて元気な声で挨拶する。
男性がいなくなったこの世界では、雇用制度も少し変わっていた。
スキルや適正があれば、どの世界でも14歳から雇用を許しており、この肉屋に勤めるサトミも、17歳にして3年のキャリアを持つフロアチーフだ。
「そちらの手前にあるお肉、いただけますか? あ、おちんちんは薄めにスライスしてください。」品のよい服装にブランド物の革製トートバッグを下げ、豊かなストレートヘアをたたえた18歳そこそこの少女が店員に声をかける。
物静かに男肉を注文した少女は、先ほど説明したシールのついた少年の股間を指差す。
「ありがとうございます! 少々お待ちください!」店員は笑顔で軽く頭を下げると、ショーウィンドウの中に移動する。
「こちらでよろしいですね?」
「ええ。それお願いしますね。」女性が少年のペニスをすくい上げるようにして客に見せて確認すると、その根元を細長いクリップのようなもので挟んだ。
少年の体が一瞬強張る。
次は自分の番だ……これまでここでつるされながら、出荷されていく少年を見てきたこの少年は、これより自分の体から、ある一部分を切り出されることを理解していた。
その行為は、自分の余計なものを取り去り、自分を育ててくれた美しい飼育員のような体になれる手段なのかもしれない……という希望を抱きつつも、どこか生命としての存在意義を失うという、とても恐ろしいことのような怖さもあった。
本当は、少年にもその答えはわかっていた。
少し前に虚勢された少年の嗚咽からも、その行為が、後者のものでしかないということを……。
しかし少年の脆弱な心は、その真実を真摯に受け止めて、覚悟を決めるほど強くはなかった。
痛くて怖くて悲しくて……これから起こる真実を認めたくない少年は、いつの間にか、大粒の涙をポロポロとこぼしていた。
そんなことは気にもかけず、肉屋の女性は小さく湾曲した、男肉専用の肉切り包丁を取り出した。
専用の研磨機で砥がれたその刃先は銀色に輝き、数百、数千もの少年の血を吸ったその刀身は、ザラザラとした鈍色をたたえ、少年の股間からほとばしる血液を欲しているようだった。
「それでは準備しますので、そちらでご覧になってお待ちください。」肉屋の少女はそう言うと、包丁を持っていない方の手で少年のペニスを無造作に掴み、そのままリズミカルにしごき始めた。
美しい少女の手でペニスをこすり上げられる甘美な快感に耐えられず、少年はあっという間に勃起してしまった。
飼育によって、平常時でも13センチあるという、少年の体に不釣合いなほど大きなペニスは、より大きさを増していた。
ふと、少年はショーウィンドウの外に目を向ける。
そこには「女」という生き物がいた。
彼女たちは、自分たちに似た、元は「男」と呼ばれていたという生き物が顔をくしゃくしゃにして泣き叫び、高級食材であるその部分を切り離される痛快な様を見ようと、次々と集まってきていた。
少年は、視線の向かう先が大きく形を変えていることを知り、なぜか少し恥ずかしくなった。
ペニスが完全に勃起したことを確認して、肉屋の少女が右手に肉切り包丁を持ち替えた。
ショーウィンドウの向こう側で、これから起こることに期待する女性たち。
後列の女性たちは首を左右に動かして、切り離すところがよく見える場所を探している。
いよいよ始まる……その器官がかつて、繁殖のために女性たちの体内に侵入していたものであることは、女性なら誰もが知っている。
しかし、今の女性たちはそれを、生殖器官としては見ていない。
たとえば古代ヨーロッパでは、発酵させた尿で洗濯をした、という歴史があるというが、現代人は尿で洗濯など考えもしないだろう。
それと同じなのだ。
彼女たちにとって、家畜の肉体を膣内に侵入させることなど、歴史の教科書にしか書かれていない、グロテスクな行為でしかないのだ。
しかし、わずかに残った人間の本能だろうか。
単なる食材でしかなくなった男のペニスだが、それでも“ちょっとドキドキしちゃうお肉”程度には彼女たちを興奮させるものがあるようだ。
サトミもまた、それが好きで食肉業界に入社した。
ペニスを切り刻み、睾丸をすり潰す作業を始めるたびに、少年が次はどんなの反応をするのか楽しみだったが、それも新人の頃の話。
3年間それを続けてきた今では、かつてほどの情熱は薄れていた。
男はただの家畜、性器はただの肉。
自分の作業はそれを切り離して食べやすく加工すること。
彼女にとって、仕事という日常の一部に組み込まれた去勢という作業。
今でも嫌いではないが、楽しいとも面倒とも思わない。
少年の悲鳴も気にならない。
考えるとしたらせいぜい「けっこう大きくて、いい肉ね。」くらいなものである。
ペニスの先をつまむと、尿道口のあたりに刃先を突き立て、ピッ、とまっすぐ下に下ろす。
「んんっ!」という少年のくぐもったうめき声とともに、尿道がたやすく根元まで切り開かれる。
その根元からゴムのチューブを尿道の奥にもぐりこませる。
この先の作業で少年が失禁して、肉が尿まみれになるのを防ぐためだ。
さらに店員の女性は、左手の上に乗せるようにペニスを持ち上げると、その上でスーッ、スーッとなめらかに包丁をスライドさせる。
手の上からあふれた血が肘を伝って下に落ちる。
今の感覚では、とてもショーウィンドウ越しに見せるようなものではなさそうだが、血に慣れている女性たちはそれをグロテスクだとは思わない。
十数回、包丁が往復したところで、女性は少年の体から離れた。
その手には、機械で測ったかのように、4ミリほどの間隔で見事に輪切りにされた男肉が、その原型を残すようにまっすぐ並んでいる。
そして、男肉を取られた少年の股には、クリップの根元についた円い切り口と、そこから飛び出すゴムチューブだけが残った。
ペニスを奪われた少年は、先程の考えが後者であることを確信した。
繁殖のために必須の、ある意味生命としてもっとも重要な器官。
無知な少年はそのことを知らないが、それを同族の女性たちによって切り取られてしまったショックは大きい。
痛さ、怖さ、そして、何か大事なモノを失った、絶大な喪失感……「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」少年は口に貼られたテープの中で、声にならない声を上げてた。
女肉屋は手の上に載っている輪切りの男肉を、慣れた手つきで亀頭よりギュッと絞り、海綿体に残った血を抜き終わると、カウンターに用意してあるビニールパックの中にそれを入れる。
「お客様、キンタマはどのように召し上がられますか?」店員に聞かれたお嬢様は、ちょっと考えたりショーウィンドウの中をを見渡してから「そっちは普通に取ってもらって……あと、そちらの少し小さいのもいただけますか?」
「あちらですね。」
「はい。それで、そちらはソース用に。」
「かしこまりました!」女はまず、ペニスを切り落とされて、顔を真っ赤にしてウンウンうなっている少年の陰嚢を、スパッと縦に切り開く。
2つの白い楕円状の球体が、切れ目からポロリとこぼれ落ちた。
それを無造作に掴むと、表面に刃を走らせる。
切れ目から指を入れて、みかんの皮を剥くように外皮をはがす。
こうして中から一回り小さな赤い肉塊を取り出して包丁で切り離した。
少年は作業の間、体を引きつらせて悲痛なうめき声を上げていたが、限界を超えたのか睾丸の中身を抜かれたその瞬間、糸が切れた人形のように力が抜けた。
気絶したようだ。
「うわー……おいしそう。」ショーウィンドウ越しに眺めていた女性の一人がつぶやく。
おそらく、他の女性たちも同じことを考えているのだろう。
抜き取った精巣を、さきほどのビニールパックに入れると、肉屋の女は次の1つに取り掛かる。
客の目の前で切り離すのは、商品の鮮度を示すため、ということもあるが、それ以外にも、男からそれを切り離す行為自体が、女性客を惹きつけるよ…

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