妹のミカ

2018/05/06

きっかけは実にありきたりで些細な事だったと思います。
僕が小学4年生で妹が小学3年生の3学期末のことです。
両親が念願の一戸建てを購入して僕達は住み慣れた街から少し離れた街の
新興住宅地に引越し別の学校へ転校しました。
新興住宅地というだけあって当時周りは建設予定の空き地と田園が混在し
僕達の家以外に新築の家がまばらに立ち並ぶ寂しい場所でした。
最初は転校に不安だった僕も真新しい自宅から通う毎日にも直ぐに慣れて
2年に一回のクラス替えのタイミングで5年生になれた僕は
クラスにも上手く溶け込んでいく事ができました。
毎日楽しい学校生活を送っていた僕でしたが一つ不満もありました。
当時新興住宅地に住んでいるのは同学年では殆どおらず
しかも住宅地がかなり離れた場所にあったせいで家に帰る時は殆ど妹と2人
友達や一緒に遊べそうな年代の子が近所に一人も居ませんでした。
当然休日も殆ど妹と遊ぶだけです。
友達は僕の住む地区の真反対に住んでる人が殆どで
遊びにいくにも当時の僕にはちょっと遠すぎました。
余りにも退屈した僕は部活を始める事にしたのです。
コレなら遅くまで友達と遊べますし休日は部活で皆と会えます。
両親も快く賛成してくれ僕は当時仲の良かった友達の誘いのままサッカー部に入部しました。
当時サッカー部は第一次Jリーグブームで三浦カズなどを筆頭に
子供達の間で大人気のスポーツでした。
休日は学校対抗の練習試合などもあり両親は良く妹を連れて試合を見に来てくれました。
父も母も楽しそうに応援してくれましたが・・
一人・・妹だけはいつもどこかつまらなそうにしていました。
「お兄ちゃんだけずるい・・」
この頃の妹の口癖です。
恨めしそうにしながら何かとそういうのです。
「お前も部活やればいいやんw」
大して気にもしないで僕は楽しそうに言ったと思います。
「ミカ・・・体育上手くないもん・・」当時の妹のミカは、一言で表現するといつも
教室の隅に居るようなタイプの地味な子
人見知りが激しくて恥ずかしがり屋でいつも下を向いているタイプです。
妹の容姿自体は普通だと思います。
むしろ兄の欲目でいえば十分可愛い方です。
・・でもこの時期の子供ってニコニコ元気な子が
無条件に可愛く見えるものだと思います。
妹は僕と違いクラスにも上手く馴染めず
友達も余り居ないようです。
転校して仲の良かった友達と離れ離れになった妹は
僕とは対照的に益々人見知りと恥ずかしがり屋が度をましたようでした。
そんな妹は休日僕が部活で居ない時は
殆ど両親と一緒か自宅で一人本を読んだりTVを見たりしていました。
そんな妹の寂しさも知らず
僕は毎日部活に明け暮れサッカー部でレギュラーを貰ったりして
実に充実していました。
季節は夏休みになり僕は部活と友達との遊びに夢中になっていた時です。
いつものように遊びに出かけようとしてふと
庭で一人で遊んでいる妹の姿が目にとまりました。
最近の妹は口数も減って元々暗かったのが
余計にその暗さを増したようになっていました。
日当たりの悪い場所でシートを敷き一人で黙々と御人形相手に
おままごとのような事をしてる妹を見た僕は
急に妹が可愛そうに思えました。
僕が毎日友達とサッカーやゲームセンター
公園や校庭を駆け回りどろんこになって楽しんでいる時に
妹は寂しくこうして一人で遊んでいるのか・・・
そんな事に初めて気がついたのでした。
「ミカ」
僕は思わずミカを呼んでいました。
ミカは何かわからない顔で振り向きます。
「なに?お兄ちゃん」
「ミカもお兄ちゃんと一緒に遊びに行こう」
そういった時の妹の顔は今でも忘れません
まるで大きなひまわりがスロー再生で花咲くように
ミカは眩しい笑顔でわらいました。
「いいの!?」
ミカのこんなに嬉しそうな笑顔を見たのは初めてでした。
いつも嬉しい時もどこか控えめにはにかむだけだった妹が
とても素敵な笑顔で笑ったのでした。
僕はそんなミカの笑顔を見ただけで
本当に声をかけてよかったと思いました。
「うん、良いよでも男子ばっかりだからつまんないかもしれないけど・・」
「ううん、良いよミカお兄ちゃん達と遊ぶ!」
ニコニコと笑顔で飛び跳ねて喜ぶミカ
このとき僕は初めてミカってこんなに可愛かったけ?と思いました。
勿論この時の僕の気持ちは
妹としてみた時の可愛いというものでしたが
今でもこの経験から言えることは、どんな女の子も
良い笑顔で笑ってる子はそれだけで十分魅力的だという事です。
それから僕は出来るだけミカと遊んであげるようになりました。
家に帰るときも出来るだけ一緒に帰り
サッカーや友達との遊びも少しだけ減らして
週に何度かは妹と過ごすようになりました。
そんな僕達を両親はとても喜んでくれました。
そんな事があってから僕達兄妹の関係は前よりも断然よくなりました。
妹は何かというと僕の側に居るようになり
夜も毎日僕のベットに入り寝るまで一日の事を話すようになりました。
「最近はすっかり仲良くなったわね」
母がそんな僕達を見て嬉しそうに言います。
「うん!ミカお兄ちゃん大好き!沢山遊んでくれるもん」
「ミカ大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる!」
ミカが行き成り言うので僕はなんだか恥ずかしくてビックリしました。
母はそんな僕達が面白かったらしく大笑いします。
「ばか!妹とは結婚できないんだぞ!!」正直そんな妹の気持ちが嬉しくもありましたが恥ずかしくてぶっきらぼうに
言ってしまいます。
「えー?なんで?なんで?」
妹は良く解っていないらしく不満顔でした。
妹は僕と遊べるようになってから
随分明るく良く笑うようになり学校でも友達ができたみたいで
仲の良い友達の事を僕によく話して聞かせてくれました。
友達はできたようでしたが
妹とは相変わらず良く遊んでいました。
というのも相変わらず妹が何かと僕の所へ来る事もあるし
僕もそんな妹が可愛くてついつい構ってしまうからです。
時間は少しだけ前に進み僕が6年生妹が5年生に上がって直ぐの事です。
「お兄ちゃんキスってしたことある?」
妹がいつものようにベットの中で質問してきました。
「えっ?」
僕は恥ずかしくてとぼけてしまいました。
実は僕は5年生の時サッカー部の試合を見に来たクラスの女の子に告白されてちょっとの間つたないおつきあいをしたことがあったのです。
とはいってもキスは一回きりでその後つまらない事で喧嘩をして
ソレっきりになっていました。
「ある?」
妹が聞きます。
「え・・・・あるけど・・なんだよ」
「本当?」
妹がちょっと不機嫌になって聞きます。
「うん・・一回だけな」
「だれ?」
「ミカの知らない子だよ」
「ふーん・・」
妹がなんだか怒っているように見えました。
「なんだよ急に・・」
「サヨちゃんがねファーストキスは一番好きな人とすると幸せになれるんだって」
どうやらサヨちゃんというオマセな友達に何か吹き込まれたようです。
「ふ、ふーん・・・良くわかんないけど・・」
僕はなんだかドキドキして妹の話を聞いていました。
「お兄ちゃんもその子のこと一番好き?」
妹がまた聞いてきます。
「・・・わかんない・・・好きだったと思うけど・・・」
「わかんないの?」
妹はふに落ちないという顔で覗き込んできます。
実際僕はその子の事が本当に好きだったか解りませんでした。
告白されて舞い上がってつきあってみたけど
喧嘩してソレっきりになってからあの日々はなんだったんだろうとむなしくなった覚えがあります。
「ミカちょっと顔近いよ」
僕は無意味にドキドキして焦ります。
「ミカね・・ファーストキスはお兄ちゃんとが良いなぁ・・」
焦る僕の隣で僕を見つめたままミカが言いました。
僕の鼓動は早鐘をうって変な汗が額からわいてくるようでした。
「ば、馬鹿!キスは兄妹同士ではしないんだぞ!」
「なんで?」
「何でって・・・なんででもだよ!」
「お兄ちゃんミカの事嫌い?」
「そういう事じゃないだろ!」
「だめ?」
「絶対だめだよ!」
「・・・・・」
「わかった・・もういい・・」
妹は断固として嫌がる僕をみて諦めたのか背中を向けてしまいました。
僕は妹が諦めてくれたことでホッとしたと同時に
少し残念というか勿体無い事をしたなというような気持ちがあることにも
自分で気がついていました。
(相手は妹だぞ・・ダメだよ・・でも・・ミカ可愛いからキスしたらどうなんだろう?)
背を向けて寝るミカの頭を見ながらグルグルとそんなことを考えて
目がさえてきてしまいました。
するとしばらくしてからグス・・グスッと
すすり泣く声がします。
「・・・ミカ?」
なんとミカは声を殺して泣いているではありませんか
「ミカ?!」
僕はパニックになりました。
「お兄ちゃんミカのこと嫌いなんだ」
「馬鹿!!そんなことないよ!!」
「ミカは全然可愛くないもんね・・お兄ちゃんだって可愛い子が良いよね」ミカはシクシク泣きながらそんなことを言います。
「なんだよミカは可愛いよ・・・そんな事ないって」
「じゃあキスしようよ・・」
妹の泣き顔に弱い僕はほとほと困ってしまいました。
随分長い事だまって悩んでいた僕でしたがとうとう決心します。
「わかった・・でも一回だけだぞ・・もうこういうの無しだからな」
「うん・・解った・・」
ミカはまだ納得してないようでしたが一応了解したようです。
「するよ・・」
「うん・・」
そういうとミカは目をつぶります。
僕はもうやけになってミカの唇に短くチュッとキスしました。
「はいもう終わり!もうしないからな!」
もう恥ずかしいやら何やらで僕はドキドキは納まりません
「うんw」
ミカはいつものような笑顔で嬉しそう…

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