うちの母ちゃん凄いぞ 前編
2018/04/20
母ちゃん48歳
自分23歳オヤジの借金で家に乗り込んできた893相手に
「そんな雷おこしみたいな髪の毛して!恥ずかしくないの!?」と
馬頭して追い返した事のある母ちゃん。
ありがちな、母ちゃんが死んじゃうオチや、母ちゃんが病気しちゃったオチはないけど、
ちょっとお前らに母ちゃんを自慢したかったのでスレ立てた。
自分は3人兄妹。
3つ上の兄と、7つ下の妹に挟まれた真ん中。
母ちゃんはどこにでもいるような母ちゃん。
若い俳優にキャーキャー言うし、
パートから帰ってきたらオヤジにパート先の愚痴をこぼしたり、
普段はお菓子なんか作らないくせに、
自分や兄妹の友人が遊びにきた時だけクッキーやマドレーヌを焼いて、「いつも作ってるんだけど、今日はちょっと失敗しちゃったわぁ」とか言って焦げた手作りお菓子を友達に振舞うような、見栄っ張りな母ちゃんだ。
例えるなら、クレヨンしんちゃんの「みさえ」がぴったりだろうな。
そんな母ちゃんだったんだけどさ。
自分が14歳の時、オヤジの借金が発覚したんだよ。
元々詐欺みたいな学習用品のセールスをしてたオヤジは、
その会社でずっとトップセールスマンでな。
自分が9歳(妹が赤ちゃんの頃だな)くらいまでは月収手取りで100万以上稼いでたらしい。
そんな高収入(だった)オヤジが借金を始めたきっかけは、バブル崩壊。
バブルが弾けてからどんどん売上も落ちていくし、どんどん給料も落ちていって、
オヤジの手取りが『来月は頑張る』
『来月こそは』というのがオヤジの口癖のようになっていって、
100万の収入は、20万16万10万…と、カウントダウンのように減っていった。
母ちゃんは「パートへ出る」と言ったんだけど、
オヤジが「いや、来月こそは絶対稼いでくるから!」と母ちゃんを引きとめて、
貯金を切り崩す生活をしばらく続けていたようだ。
当時妹はまだ2歳とかだったし、自分も9歳。
そして兄がちょうど中学校に入学する、そんな大切な時期だったからこそ、
母ちゃんに家にいてみたかったみたいだけど、オヤジの収入が8万を切った(家のローンがいよいよ払えなくなった)時点で、オヤジは何も言わなくなった。
オヤジが静かになったのを見計らって、缶工場へパートへ出た母ちゃん。
自給だが、やはり母ちゃんがパートをしてるのを快く思わなかったのであろうオヤジ。
何を思ったのか、サラ金から生活費を借りて
「ほら、一時期収入も落ち込んでたけど、また100万くらい稼げるようになったぞ」
「だからお前もパートを辞めなさい」
サラ金から借りた札束をひらひらさせながらそう言ったオヤジ。
母ちゃんはパートさえ辞めなかったけど、それでも、
『あぁ、これで生活が安定する』と思っていたらしい。
ほっと安心する母ちゃんの顔を見て、オヤジは能天気に
「笑った顔が可愛いなぁ」と思っていたらしい(後日談)しかし、いよいよ。
自分が14歳、中学二年生の時だな。
危ない所から生活費を借りてたオヤジの付けが回ってきたようで、
昼夜問わず893が家に来るようになった。
今みたに回収が甘くないからな、平気で扉をドンドン叩くし、
時間なんか関係なしにインターフォンも鳴らし続ける。
893が来ない日でも、ポストには“融資可能”“審査なしで即融資”と書かれたDMが沢山入ってた。
サラ金から金を借りきれなくなったオヤジが、ヤミ金へ手を出した証拠だったんだけどさ。
家に来る893、そして仕事してんだかしてないんだか分からないオヤジ。
17時までだったパートの時間に、残業をいれ始めた母ちゃん。
全てに嫌気がさした自分、当時中学2年生。
厨二病まっさかりなその時期、家の混乱を受け入れられなくて、こう思った。
「あ、頭おかしくなろう」頭がおかしくなれば、精神病っぽくすれば、家族はみんな自分を心配してまた元に戻るかも!!まぁ当時は本気でそう思ってな、中学3年生に上がったばかりの頃、精神病っぽく装い始めた。
どう装ったかといえば、今も昔もエセメンヘルに大人気の、多重人格(笑)だよ。
ほんとにこの病気で悩んでいる人、もしいたら、不謹慎ですまん。
多重人格を装うのは意外に簡単だった。
簡単2ステップだ。
「あ…!頭が…!!」
と言いながら、頭を抱えてうずくまる
「ふふふ…私は誰か分かるか?」これでエセ多重人格の完成しかし両親、そんな厨二病と向き合った事がなく、本気で自分の頭を心配してくれたようで。
何度も何度も病院へ連れていってくれた。
その間もずっと、オヤジの借金取りは自宅へ来るし、
まだ小学2年生だか3年生だかの妹の方が、よっぽど精神的に辛かったなんて知るよしもなく。
エセ病気のふりをする度に両親が力を合わせて病院探しに熱中しているのを見て、
「あぁ、これでまた幸せな家族に戻れる」とか本気で思っていた。
そしてある日だ。
中学3年生の夏休み。
自分は自宅にいて、アニメスペシャルを見ていた。
はずだったのだが。
気づいたら病院にいた。
気付いたら、というのが遅すぎたようで、丸々2週間人工呼吸機で命をつないでいたようだった。
原因は首つり。
首を吊った覚えなんかないし、
夏休みアニメスペシャルのスラムダンクを見ていた記憶しかない自分は、
病院、というか集中治療室で目が覚めてマジでびびった覚えがある。
正直、この時母ちゃんが見舞いに来て鏡越しに
なんか涙ぐましい事言ってた覚えはうっすらあるが、ぶっちゃけ覚えてない。
ただ、集中治療室で流れてたラジオの音しか、今でも記憶はない。
どうやら、多重人格を装っていた自分は、まじで多重人格になってしまったようで、
他の人格が首つり自殺を図ろうとしたらしい。
だけどな、2週間意識不明、しかも首つり。
母ちゃんが「なんか胸騒ぎがするから」っていう理由で
自宅に戻ってきて自分を発見してくれて
救助されたようだが、マジで覚えてない上に、
医者が心配するような後遺症も全然感じられない結局そのまま3カ月入院。
後遺症はなかったが、再発防止とかいって、
変なカウンセラーの元で何度も変な絵を描かせられたりする日々で
貴重な受験期間を潰してしまった。
まぁお約束のように、自分は高校受験に失敗。
中卒ニートで、毎日毎日家で薬を飲みながら生活していたわけだ。
趣味は2ちゃんとアニメ。
外出は週に一度の精神科通院。
あーら見事に絵に描いたようなメンヘラが出来あがった訳だが、
相変わらずオヤジの借金とりは家に来るし、ヤミ金DMも毎日のように届く。
みかねた母ちゃんがオヤジをけしかえるように、
パートで働いていた缶工場で社員として働くようになった。
その頃トラックの運転手に転職してたオヤジ。
そこそこ稼いでいた物の、母ちゃんの収入にあっというまに並ばれていた。
母ちゃんに収入も並ばれ、自分のせいで出来た借金で毎日家族が取り立てられる毎日。
ストレスがたまったオヤジは、
仕事帰りに自宅で酒を飲みながら意味不明な言葉をずっと叫んでいた。
「ダァっ!!!」みたいな言葉だったな。
今でも意味わからん。
兄は高校へ行きながらバイトもして、自宅へ戻らないよう彼女の家へ入り浸ったりし…