なおぼんとヤノさん

2018/04/10

あたしが十歳ころのことでした。
小学校の生徒数が多くなりすぎて、分割化が盛んに行われたころのことです。
今からでは考えられないでしょうが、一学年が十クラス以上なんてザラでしたよ。
あたしの家のすぐそばの田んぼがつぶされて、学校につくりかえられました。
それまで、三、四キロメートルも遠い小学校に通っていましたので、とても嬉しく、あたしも友達も出来上がるのが待ち遠しかったんです。
実は、五、六年生だけは、新しい小学校ができても、元の小学校に卒業式まで通って中学に上がることになっていました。
(現六年生は竣工に間に合わなく卒業を迎え、新六年生となる当時の五年生だけがそのまま元の小学校に通うのよ)
あたし、四年生だったんでギリギリセーフだったの。
あたし、楽しみなもんだから、学校ができる工事現場に足しげく通って、その様子を眺めていたわ。
ダンプカーがひっきりなしに土砂を運んできて、田んぼがみるみる埋まっていって、鉄筋の杭打ちが始まるの。
工事現場の休憩時間に、おじさんたちと仲良くなって、遊んでもらったりしたよ。
ずいぶん遠くから来たダンプの運転手さんがいて、とても優しかった。
たしか、みんなから、ヤノさんと呼ばれてた。
ある日の夕方、ヤノさんが一人で、緑のダンプカーを洗車していた。
ガーっとダンプの後ろを上げると、水がざばーっと勢いよく流れ落ちてきた。
あたしは飽きずに眺めていたよ。
「なおちゃん。一人か」
ヤノさんには、「なおちゃん」と呼ばれる仲だった。
「うん」
「運転席に乗ってみるか?」
「え?いいのぉ」
「ええよ。乗せたる」
ヤノさんに、抱っこされて、高い運転席に上げてもらった。
お父さんと同じタバコの匂いがした。
「うあー。高いっ」
外を見ると、家の二階から見ているみたいだった。
ヤノさんが運転席に座ると、ドアがバタンと締められ、ひざの上においでと言われた。
あたしは、何も考えず、ヤノさんのひざの上に乗って、ハンドルを持たせてもらった。
「どや」
「運転してるみたい」
しばらく、そうやって、あたしは運転席の感触を楽しんでいた。
ヤノさんがときおり、あたしの腰を持ち上げるようなことをしたり、なにかごそごそするのが変だなと思ったけど。
ヤノさんがあたしの髪に鼻をつけてくんくんしたり、耳たぶをぺろっと舐めたりした。
「いやん。くすぐったいやん」
「かわいいなぁ。なおちゃんは」
そう言って、お尻になにか硬い物をぐりぐりしてくる。
あたしは何かわからないから、座りにくいなと思って腰を浮かしたりした。
「なあ、なおちゃん。ちょっと後ろに行こか」
「後ろ?」
あたしは振り向いた。
そこには、人が一人横になれるくらいのスペースがあった。
あたしは、ひざから降ろされ、助手席に移った。
ヤノさんがズボンのファスナーをしゃっと上げるのが見えた。
「何してたん?」
「なんもなか」
ズボンの前が異様に膨らんでいた。
「そこに上がり」
「ここ、何するとこ?」
「寝るとこや」
「ここで泊まるの?」
「遠いとこから来るからな。仮眠をするようにできてんね」
あたしは、その場所に首を突っ込んでみた。
今で言う「エロ本」がちらかっていた。
「いやっ。おっちゃん、こんなん見てんの。エッチぃ」
あたしは、笑って言った。
「なおちゃん、おっちゃんとエッチなことしよか」
「ええーっ」あたしは、あまり嫌な気はしなかった。
「エッチなこと」といっても、実感がわかなかったというのが正直なところだった。
「おっちゃんな、なおちゃんのことがすっきや」
そう言って、あたしは仮眠室に押し込まれた。
ヤノさんは、あたしにさっきのズボンの膨らみを向けた。
中腰で、ファスナーをジジジと下げると、パンツの間から、赤黒い大きな生き物が顔を出した。
「うあ、何?それ」
「ちんぼや。見たことないけ?お父さんにもついてるやろ?」
「そんなおっきないよ」
「それは、エッチな気持ちやないからや。いま、おっちゃんはエッチな気分やからおっきなってんねん」
「ふうん」
「なあ、なおちゃん。これ、さわってくれんか」
「えーっ」
あたしは、なんだか汚いなぁと思って、しり込みした。
「少しだけ。な」
必死な顔で、ヤノさんが頼むので、かわいそうになって、あたしは従った。
ヤノさんは、いい人やもん。
あたしは、おそるおそる手を伸ばして、そのびくんびくんと脈打つ、生き物に触った。
熱く、太かった。
当時のあたしの腕くらいはあったと思う。
目の前にそれは、生臭い香りをたちのぼらせ、キノコの笠のような形をしていた。
父のもそんな形をしていたが、下を向いて柔らかそうだったのに、ヤノさんのはかっちかちだった。
「ああ、気持ちええで。こうしてな、ぎゅっと握って・・・」
あたしは、教えられるままに、肉の棒を握ってしごいた。
こんなことをして、男の人は、何が気持ちええのやろ?
おしっこの出る穴らしいところから、液がにじんできた。
それは、糸を引いてにちゃにちゃと音を立て始めた。
「ちょっと、横になるわな」
ヤノさんはそう言って、狭いところでごろんとなった。
上を向いたヤノさんの「ちんぼ」がさらに大きく見えた。
しゅっ、しゅっとしごきながら、ヤノさんの表情をながめていた。
ヤノさんの手があたしの胸に伸びてきた。
あたしは、嫌がらず、さわらせてあげた。
まだ膨らんでいない、幼い胸をヤノさんの節くれだった指がなでまわす。
乳首が感じるのを初めて体験した。
「やん」
あたしは思わず声を出した。
すかさず、ヤノさんはもう一方の手であたしの「おめこ」を触ってきた。
パンツの間からすばやく、指先をもぐりこませて、割れ目をさぐる。
ひとりでにあたしの足が開き、ヤノさんの指に押し付けていた。
「なおちゃんも濡れてるがな」
あたしは何のことかわからなかった。
女はエッチな気持ちになると、「おめこ」が濡れるというのだ。
十歳のあたしにそれが起こるとは信じがたいが、濡れていたらしい。
「おっちゃんのちんぼでなおちゃんのおめこを気持ちよくさせたるわ。横になり」
あたしは、なんだか好奇心で嬉々としてパンツを自分で脱いで横になった。
ヤノさんが覆いかぶさってきて、おめこにヤノさんの熱い肉があてがわれた。
粘液質の音がし、リズミカルにこすられた。
「ああん。気持ちええわ」
あたしはそんなことを呟いていた。
「ええやろ。なおちゃんもエッチやなぁ」
「ふふふ。エッチや。あたし」
ヤノさんはあたしの口に口をつけて舌で中をかき回した。
タバコ臭い口やった。
「あ、なおちゃん、おっちゃんもう」
「何?どうしたん?」
ヤノさんが身を起こして、震えている。
ちんぼの先からびゅっと何かが飛んだ。
おなかから、股のとこにかけてあったかいおしっこみたいなものをかけられた。
青臭い匂いが狭い空間に満ちた。
「おっちゃん、何出したん?」
「精子や。あかちゃんの素(もと)や」
要領を得ないあたしはだまっていた。
「なおちゃんは生理がないのんけ?」
「セイリ?わからん」
「そうか、知らんか。まだ。そのうちわかるわ。ありがと。なおちゃん。おっちゃんすっきりしたわ」
「あたしも、すっきりしたわ」
ヤノさんは、ていねいに、あたしをちり紙できれいに拭いてくれた。
やっぱり、やさしいおっちゃんやった。
それっきり、ヤノさんには会えなかった。

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