頭の弱い子が色気づくと怖い

2024/07/30

登場人物

T太=俺より7歳下。近所のガキ
K子=俺の彼女の後輩。T太の3つ上
チンピラ=T太の先輩。年齢不明。ヤクザのしたっぱ
俺=T太のおさななじみ
俺彼女=俺の彼女。当時OL

俺んちの三軒隣の末っ子として生まれたT太はちょっと頭の弱い子だった。
池沼ってほどじゃなく、ギリギリボーダーって感じ。
小学校の時から普通学級と特殊学級を行き来して
自分の名前が漢字で書ければ受かる地元の最底辺高校に進んだ。

勉強は壊滅的にできないが、自分のことは最低限自分でできるし
素直だし、たまに癇癪を起こす癖があるのを除けば扱いにくいやつではなかった。

ただ癇癪を起こすと、体がデカいこともあって誰も止められなくなるので
そういうときよく俺が呼ばれることがあった。
T太は子供の頃から俺になついていて俺の言うことはよく聞いたから。

そのT太が地元でもっとも偏差値が低くかつガラの悪い高校へ入り
「不良カッケー」
に目覚めてしまった。

その年頃としては「悪っぽいのカクイイ」的な思考は珍しいことじゃないんだが、T太は一度そう思うと加減がわからずにのめりこんでしまうから、
二ヶ月もしないうちにミナミの帝王みたいなカッコをするようになった。

言葉はエセ関西弁と広島弁のミックス。
「吐いたツバ飲まんとけよー」
「みこしが一人で歩けるもんなら歩いてみいやー」
ってリアルで言うやつを俺は初めて見た。

T太の両親も兄弟もかなり恥ずかしがってたが
ほっとけばそのうちに目が覚めるだろうと半分放置されていた。
実際、高校の本当に悪いやつらにはT太はスルーされていたようだし。

だがそのうち計算外なことが起きた。
T太が色気づいた。
俺が彼女と歩いていると、ニッカボッカみたいなズボンを履いたT太が左右に体を揺らしながら歩いて来て、
俺に話しかけるフリをしながら彼女の匂いをクンクン嗅いだり
バッグの中に手を突っ込もうとするようになった。
(※金とかじゃなく、なんでもいいから若い女の持ちものが欲しかったらしい)

俺が一喝するとすぐ逃げるんだが
彼女もいやがるんで、なるべく俺んちの周囲ではデートしないことにした。

夏になり、俺は彼女と地元の花火大会に行った。
そこにT太もいた。
彼女に寄ってきたが適当にかわして花火の見えるスポットへ移動。
だがしつこく追ってくるT太。
最終的にきつく言っておっぱらった。
だがT太のやつ、彼女が長蛇のトイレ待ち列に並んでる間に彼女の手帳を抜いたらしい。

手帳にはさんであったプリクラ+プリクラに書かれた「Kちん」の名と
K子の住所録でT太はプリクラ中一番の美少女K子に目をつけたらしかった。

しかし俺と彼女はそのことにしばらく気づかなかった。
彼女はただ手帳をなくしただけだと思ってたたしそこにT太を結びつけることはなかったから。

何ヶ月かして、K子から彼女にSOSが来てやっと事態が発覚した。
発覚した時にはすでに事がけっこう大きくなっていて、
簡単に書くと
T太、美少女K子のプリクラ+ケーバンGET→毎晩それでオナニー
→T太、オナネタを自慢
→先輩のチンピラがそれを聞いてK子を気に入り、T太からケーバン等GET
→チンピラがK子につきまとう
という流れだったらしい。

知った時にはすでにチンピラが××組に話を通してたとか通してないとか
そこまでいっていて、K子が拉致られてチンピラの女になるかソープに沈められるか、とかいうヤバいところまでいっていたらしい。
こっちには関係なくても向こうで勝手に好きなだけそういう話は進むんだそうだ。

なんで俺らがわかったかというとT太が俺に自慢したからだった。
T太にとってはチンピラと女を共有できる=出世だったらしい。

俺「女?おまえに女って誰よ?」
T「にいちゃんも知っとろうが。K子だよ」

俺「K子?知らん」
T「知らんことなかろうが。にーちゃんの彼女の後輩の…。(ここでT太いろいろ暴露)」
T「~~なわけで、K子はチンピラ先輩の彼女にしてもらえるんだ。女として名誉じゃろ」

俺「はあああああ???なんでそんなことになっとんの?つかそのチンピラの彼女にならんかったらK子どうなるの?」
T「知らんー。まあ先輩、今まで何人もソープに沈めとるそうじゃけー(なぜか自慢げ)」

うわああああああ。
これはもう一刻を争う事態ということで、T太両親、俺両親に即報告しての警察沙汰にした。
今までT太を「頭は弱いが根はいい子」と思っていたT太両親は愕然。
最初は信じなかったがT太がみずからべらべら自慢しまくってくれたせいで信じざるを得なくなった。

結局警察だけじゃ埒があかず地元議員まで駆りだす事態になったわけだが、
上から話を通してもらってとりあえずチンピラはK子から手を引いた。
しかし万一の場合にそなえて両親によってK子は県外に逃がされ、遠い地に転校。

前置き長いがここからが俺的には修羅場。
まわりが何と言おうとT太には「女の貞操観念」が理解できなかった。

「風俗で働く→毎日エッチできる→俺もしたい!→女も毎日気持ちよくて最高なはず!→なんで風俗がいやなの?」
このどうどうめぐり。
女の子が感じる屈辱だとか、恥ずかしい職業だってことが
どうしても観念として理解できないらしい。

何度も周囲がうるさく言ううち、T太は逆に、親や俺のことを「わからずや」と思い
「わからずやのにいちゃんを説得するには…そうだ!(ピコーン)
にいちゃんの彼女に気持ちいい仕事だってわかってもらって、彼女からにいちゃんを説得してもらえばいい!」
という結論に至ったらしい…Orz

ある日俺が仕事を終え、ロッカーに置いてる携帯を見ると彼女から鬼の着信。
そして見知らぬ番号からも着信。
リダイヤルしたら警察署だった…。

俺が残業してる間に「セックスの気持ちよさを俺彼女に教えよう」としたT太が俺彼女のアパートに突撃し、もちろんドアをあけない彼女にブチギレ、
暴れて通報されたらしい。

駆け付けた警官に対しても自信たっぷりに
「セックスを教えに来ました!」
「セックスは気持ちいいんだから俺彼女だってしたいはず!」と
持論をぶちあげ、現行犯逮捕されたT太。

彼女のアパート前でも「セックス!」「セックスするぞー!」と
連呼してドアをがんがん叩きまくったそうで
彼女の恐怖はもう想像するだに…って感じだ。

俺は慌てて彼女のアパートに駆けつけ、怖いめにあわせてすまなかったと平謝り。
彼女の両親にも土下座。
T太がまだほんのガキだった頃、彼女のアパートに連れてきて
場所を教えてしまったのは俺だから確かにもともと俺が悪い。

別れの危機にまでいたったが謝り倒し、T太とは縁切りすること、彼女の引っ越し費用を俺がもつことでなんとか許してもらえた。

セックスセックスとT太が騒いだせいで、彼女もあのアパートにはもう住めないと言ってたし。

その後T太は両親がいたたまれなくなったらしく、一家で引っ越した。

最後の日、T太がうちに訪ねてきたが俺は会うのを拒否。
「せめてこれを」と言われて母が受けとった餞別?は
なぜかディズニーランド土産のお菓子の空き缶だった。
ドナルドのやつだった。

最後までT太は自分の何が悪いのか
わかってなかったと思う。

いつかどこかでT太のあの歪んだ女性観が治っていますようにと
俺としては祈るほかない…。

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