書店でバイトしている天使にあの手この手で猛アタック 1
2023/11/21
チョイブサメンの私が、昨晩、童貞を卒業して参りました。
よろしければ、お耳を貸していただけると嬉しいです。
まず僕、173cm、ホリケンから愛嬌を取り上げたような顔、会社員1年目。
ブッサ!というほどではないが、良く言って中の下、悪く言えば下の上くらいの俺は大学時代からモテる事はなかった。
告白された事もない事はないが、特に可愛くもない好きでもない子からだったので、断った。
まあ1回しかないんだけど、ね。
そんな俺が卒業できたので、ブサメンすぎるわけではないのに童貞というやつがいたら参考にしてほしい。
まず、俺は4月、るんるん新入社員となって会社勤めを始めた。
しかし、毎日21時を過ぎる退社・・・ヘタレな俺は1週間目にしてもー疲れた降参だとなっていた。
唯一の楽しみは、会社の近くの本屋さんで漫画を買って家で風呂に入りながら読む事だった。
俺はその本屋さんで天使を見つけた。
天使:155cmくらい。華奢でいつも後ろで髪を束ねている。可愛いいいいいい!
たまにメガネしてる。
天使は女子大生ちゃん!21歳!
天使は本屋でバイトしていた。
俺は毎日会社帰りに本屋に立ち寄って天使を眺めていた。
天使はたまにレジを打ってくれたりもしたので、俺は天使から受け取ったお釣りは財布に入れず大事に持って帰り、ブレンディーの空瓶に貯めた。
でも俺は遠くから見つめるばかりで、何のアクションも起こせずにいた。
そこで俺は、隣に住む幼馴染の女ニートに相談する事にした。
女ニートとは小学生の時からの付き合い。
いつからかニートになっており、俺の愚痴を聞いてくれる優しいニート。
チョイポチャで、痩せれば可愛い。
俺は小さい頃からこいつの家に上がり込んでいるので、おじさんおばさんも俺がこいつの部屋に入ったくらいでは何も怪しまないんだ。
チースとか言いながら俺はこの事を相談。
どうにかしたい、でも話しかけられない、俺が話しかけたらキモいんじゃなかろうか、など。
女ニートは俺にこう助言を与えた。
「本屋の店員ならおすすめを聞け。そこから"これ読んでるんですかー"などと話は弾むはずだ」
と。
俺は、それはいいと膝を打った。
この頃になると天使のシフトを把握していた俺は、天使が確実にいるであろう日にブレスケアを食べ、本屋へ向かった。
ちなみに俺は、いつも天使がレジの時は見栄を張って、三島由紀夫だの太宰治だのの文庫本を買っていた。
大体400~500円くらいで買えるしインテリジェンスもアピールできていると思っていたのだ。
もちろん俺は読んだ事はない。
代わりに暇な女ニートが読み、どんどん文学通になっている。
天使はちょうど少年マンガコーナーでせっせと本を並べていたので、しめた!と思い、俺は声をかけた。
「あの、お勧めとかないですか?」
天使はこちらを向き、
「あぁ、いつもありがとうございます!」
とまずニコッと挨拶をしてくれた。
俺はウホォと勃起しそうになった。
そして、へえ、これはそうなんですね、面白そうですね、ほうほう、などと、この後繰り広げられるであろうマンガトークの返事をイメトレしまくった。
しかし、天使は少年漫画コーナーの担当ではなかった。
「えーっと、少年漫画でお勧めですか・・・ちょっと待っててくださいね、○○さーーん!」
と、小太りのニコニコしたおっさんを呼ばれた。
おっさんが来て天使は去った。
おっさんはニコニコしながら
「はいはい、どんな感じのがよろしいですか?」
と、丁寧にカウンセリングしてくれ、仕事帰りにだらだら読めるもの・笑えるものなどの意見を取り入れ、最終的にはスーツを着た俺にボボボーボ・ボーボボを薦めてくれた。
俺が断れずボボボーボ・ボーボボの1巻を持ってレジに行くと、天使が会計をしてくれた。
俺のインテリジェンスなキャラはガラガラと音を立てて崩壊した。
俺は憎きボボボーボ・ボーボボを献上品として持参し、女ニートに泣きついた。
女ニートはニートのくせに、
「私、漫画は読まないから」
とかさらっと言っていて俺は少しむかっとしたが、頼れるのはこいつしかいないので我慢して教えを乞うた。
問題は、天使の担当が分からない事だ。
女ニートは面倒臭がっていたのか、
「もういいじゃん、天使に君のお勧めは何ですかって聞けよ」
と、超ハードモードな提案をしてきたが、今のところそれ以外に策はないように思われた。
俺は勇気を出して実行する事にした。
しかし、いきなりお勧め何ですかって聞かれても、天使も困ってしまうだろうという事で、俺と女ニートは綿密な設定を考えた。
親戚の女子大生が入院しているので、お見舞いに何か少女漫画を持っていきたい、という設定だ。
あの書店には天使以外にはおっさんとおばさんしかいないので、そいつらを呼ばれそうになったらいやいや、天使さんと同じくらいの年齢なので君のお勧めが知りたいんです、と乗り切れるだろうという事からこの設定は完璧だった。
俺は書店でまた天使に声をかけた。
「あの、これこれこういうわけで漫画を探しているんですが、何かお勧めはありますか?」
「少女漫画ですか?それでしたらこれとか・・・これとか・・・完結してるものがいいですよね?」
「は、はい」
みたいになんと俺は天使と順調に会話していた。
俺は、おおおおと手の中は汗でぐっちょりだったが、天使と金の受け渡し以外でこんなに長く喋ったのは初めてだったので、もう興奮MAXだった。
天使はある程度可愛らしい表紙の漫画を揃えてくれた後、ある事に気付いた。
「あ、でも、その方が持ってる漫画だとダメですね」
俺はそこまで考えていなかったので、計画から外れたこの一言に動揺した。
「あ・・はあ」
「お見舞いだったら、あらかじめ希望聞いておいた方が安全ですよ^^よかったら、また聞いてきてください」
天使からの再来店のお誘いを受けた俺は、浮かれ心地で女ニートの元へ向かった。
女ニートは、毎日来る俺を明らかにウザがっていた。
「もう知らんわ。ベルバラでも全巻買ってこい。それなら読んでやる」
と言われたので、俺は次の日また書店へ行き、ベルバラの文庫版を買った。
レジで天使は、
「あーこれ私も好きです^^面白いですよ!」
と言ってくれた。
何事も起きずに、俺のお勧めおねだり作戦は幕を閉じた。
俺はもっとお勧めを色々聞こうと思ったが、これ以上お勧めを聞いたら不審者だろうと女ニートが言うのでやめておいた。
俺達は、次の策を練った。
女ニートはあからさまに面倒臭がっていた。
「もう直接ご飯にでも誘え」
「いやいや無理無理」
「バカが!飯にも誘えないような奴がどうにかなろうなんて100万年はええだろうが!」
「・・・」
など説教をくらい、根負けした俺は飯に誘う事を決意した。
しかし、人生23年の中で女子を飯に誘った事など一度たりともない。
第一、俺の会社が終わるのが21時、書店が閉まるのが22時、その後閉店後作業なんかを彼女がしていたら、恐らく飯に行けるのなんて22時半過ぎとかになる。
そんな遅くから飯に誘っても下心丸見えきもーくらいにしか思われないだろう、という事に終着した。
もうこうなっては八方塞がりだった。
女ニートは、一か八かで連絡先を渡せと言ってきた。
しかし、もし迷惑がられてしまったら、俺は恐らく今後何十年務めるであろう会社の横の唯一のオアシスに立ち入れなくなってしまう。
これはどう考えてもリスキーだった。
もうどうしようもなくなった俺は、それでもただただ天使を見るために書店に通い、文豪の名作を購入した。
5月の終わりくらいかな、そんな俺に転機が訪れた。
「いつもありがとうございます!毎日文庫本買っていかれるなんて、凄い読書家さんなんですね。何かお勧めとかあったら教えてください^^」
と、天使の方から声を掛けられたのだ。
「お・・おすすめ・・!?」
「はい!この間授業で金閣寺を読んだんですが、文章の綺麗さに感動してしまって。活字あんまり読まないから、これを機会に何か読んで見ようと思って」
わーーー大人、が、問題が1つ。
俺の買った本は全て女ニートの頭に吸収されており、俺は何1つ知りはしない。
どうしよどうぢよとなった俺は賭けに出た。
「うん。よかったらお勧め考えとくよ。後でメールするから連絡先教えてくれない?」
いきなり聞くよりはスマートだし、これは断られたとしても今後この本屋にキモい人扱いされる事もないだろう。
女の子は連作先を聞かれるとは思ってなかったのか困った顔をしていたが、じゃあ、とフリーメールのアドレスを教えてくれた。
明らかに捨てアドだったがまあいい。
俺はこの急展開を急いで女ニートに報告した。
女ニートはにやりと笑って俺の携帯を取り上げ、ぱぱぱぱとメールを打った。
こんな感じだった。
『俺です。いつもお疲れ様。お勧めという事なんだけど、三島由紀夫の金閣寺が好きなんだよね?だったら、同作者の春の雪とか、別の人だと文章が綺麗なのは谷崎純一郎とか・・・うんたらかんたら~~~みたいな感じかな?一応、俺全部持ってるから、読みたいのあったらメールして。いつでも貸すよ』
この、彼女が俺と今後も本のやり取りという形で接触出来る画期的なアイディアに俺は歓喜し、女ニートに好物の干しイモを献上した。
天使は
『わー嬉しい^^では、よかったら「◯◯◯」「□□□」を貸してください!』
と返してくれた。
それから女ニートは俺にその本の内容を教えてくれ、天使に質問されても大丈夫なように十分な知識を仕込んでくれた。
俺は会社帰りに書店へ行き、書店員に本を貸すという生活を始めた。
天使は読んだ感想などもメールで送ってくれるようになり、それに対する返信は女ニートが請け負ってくれた。
女ニートのメールテクにより、天使の携帯アドを聞き出したのが6月終わりくらいの事。
天使とのやり取りを完全にニートに預けていた俺に、ニートは爆弾を仕掛けてきた。
ニートは、なんと天使を食事に誘っていた。
いつも携帯を預けて文学メールを打ってもらっていた俺は、ニートが送った内容を事後確認していたのだ。
ニートは大丈夫、絶対大丈夫とニヤニヤしていたが、俺は気が気じゃなかった。
そして、返信が来た。
「日曜日のお昼なら空いてます」
との事だった。
俺は今まで一度も女の人と食事なんて行った事なかったので、これは青天の霹靂だった。
女ニートは快諾の返信を送り、あれよあれよと食事デートの約束を進めていった。
「どうしよどうしよ!?俺服とか無えよ!?」
「焦るなよ。週末までに買いに行きゃいいじゃん?」
「いやいや、俺毎日会社でそんな暇ないよ!?」
「じゃあ私が買っといてやる。サイズ教えな」
という感じで、俺は女ニートに俺のサイズを教えた。
女ニートはネットでピッピッと買い物をし、コンビニ支払の金額と支払番号をメールしてきた。
「これ明日コンビニで払っといで」
60,000円弱だった。
女ニートの話によれば、男はとりあえずシャツ着とけば清潔に見えるとの事だった。
ショップからは、細すぎず太すぎないネイビーのズボンと、薄いグリーんのシャツ、中に着る無地のTシャツ、デッキシューズが届いた。
サイズはぴったしで、俺の全てを女ニートに知られているようで、俺は少しゾクッとした。
お婆ちゃんは、その服を着た俺を
「あらあら、ハンサムになって^^」
とニコニコ褒めてくれたので、俺はおおこれはいけるかもしらんと思った。
女ニートは、ランチの予約、その後のプランなど綿密に計画を練ってくれ、俺は自分の考えを微塵も挟む事なく天使とのデート当日を迎えた。
<続く>