変態レズなお姉さんと初めてのホテル

2018/12/13

その日は一晩よく寝付けず、完全に寝不足。まぁ今日は金曜日。今日一日耐えれば明日お休み。と、寝るのを諦めてシャワーを浴びる。朝ごはんを食べていると、父が珍しく笑顔。両親は今夜から夫婦で旅行に行くとのこと。なんだか会社から賞を貰ったんだって。
じゃあ今夜はバカ兄貴と二人っきりか。兄貴のことは別に嫌いじゃない。前も両親が実家に法事に行ったときに二人で留守番したけど、格闘ゲームで一晩徹夜するくらいの仲良し。ただその兄貴は友達と麻雀の約束をしていたらしい。両親からきつく二人で留守番するように言われて、ハタチも過ぎてるのに口を尖らせて不貞腐れる。相変わらず子供っぽい。
その日は学校の授業が眠くて眠くて・・・。さすがに友人たちにも心配された。それを『恋の病』と一刀両断の親友A美。
「だからそんなんじゃないってば」と声に出し、自分に言い聞かせてみる。
ヘトヘトになり帰宅。両親はもう出かけた後みたい。ドラマみたいに作り置きのご飯とかはない。そんなに気が回る家族じゃないし。バカ兄貴はまだ帰ってきてないみたい。とにかくジョギングの時間まで横になる。ご飯は帰りにコンビニで買ってくればいいや。制服のままベッドにうつ伏せに飛び乗ると、すぐに眠気が襲ってくる。
何時間経ったんだろう。LINEの更新音で目が覚める。部屋の中は真っ暗で、スマホの画面が部屋を照らしている。重くダルい手を伸ばしてスマホを取り画面を見る。眩しい。兄貴からだ。
『やっぱ麻雀行くから留守頼む。親父が帰ってきた後の口裏合わせ頼むね』
寝起きで情報が頭に入ってこない。3回くらい読み直してやっと理解して、「・・・バカ兄貴」と呟く。『死ね』と送り返そうすると続きが。
『お前も最近はジョギング行って彼氏と会ってんだろ。今日は誰もいないんだからうまいことやれよ』
返信を打ち込んでいた手が止まる。ベッドの上に胡坐をかいて座り直し、(やっぱりそう思われてたか・・・)と納得する。つーことは兄貴の麻雀も怪しいもんだ。『しね』で変換待ちになっていた文字を消して、『もう帰ってくるな』と打ち込み送信する。意味不明のサンキューマークが送られてきて通信終了。
部屋の電気を点けて、自分が制服のままなのに気が付く。あーシワシワだ。時間を見るともう22時。ジョギングの時間。レギンスにジョギング用の黄色のミニスカートを穿き、上は白の長そでのシャツにグレーの半袖のパーカー。そろそろこの恰好じゃ寒いかな。髪を束ねて外に出る。やっぱりちょっと肌寒い。着増そうかと思ったけど、どうせ走ったら汗かくし、そのまま行くことにした。玄関のカギを掛けて家の前の通りに出てストレッチ。大きく息を吸い、ゆっくりと走り出す。
公園に着いて松林に向かうと、涼子さんはもうストレッチをして待ってくれていた。私の姿を見ると、「ちょっと寒そうだね」と笑った。笑顔に胸がキュッとなる。
「じゃぁ行こうか」
ゆっくりと走り出す。いつも私が後ろをついて走る。ものすごく気を遣ってくれているのがわかる。早すぎず遅すぎず、疲れてくると少しスペースを落としてくれる。すごいきれいな腰のくびれと、走りに合わせて揺れるお尻。周りの闇も相まって、何回か本当に抱き付きそうな衝動に駆られた。
なんとか抑えて中央広場の自動販売機の前に到着。いつもここでお茶を飲む。今日は迷いなくHOTのお茶を選んだ。先にベンチに座って冷たい水を飲んでいる涼子さんの横に座る。温かいペットボトルで手を温める。走っていたので体は温かいんだけど、それもどんどん冷えていくのがわかる。急に運動をやめたのでどんどん体が冷える。ブルブルっと震える私を見ると涼子さんは来ていたウインドブレーカーを脱いで私に被せ、上から肩に手を回してゆっくりと擦る。
「やっぱり寒かったんでしょー。風邪ひいちゃうよ」
いい匂い・・・。頭がぽーっとなる。
「涼子さん・・・」
声に出してしまう。不意に呼ばれて、「ん?」と私を覗き込む涼子さん。その視線でハッとなる。何かしゃべらないと。
「涼子さん、彼氏とかいるんですか?」
涼子さんは肩に回した手を止めて「んー」と考えると、「知ってると思うけど、私、結構趣味が過激だからさ。出来てもすぐに逃げられちゃうんだよね」と笑う。そして、肩に回した手をまた動かし始めた。温かい。
「わ、私なら多少のことなら頑張ってついていきます」
しどろもどろで返す。何言ってんだ私。また手が止まる。俯いてしまう。今、涼子さんはどんな顔してるんだろう?私を見つめていることは空気でわかる。
「そう。嬉しいなぁ」
さっきと変わらない調子で返してくれる。ちょっとほっとする。2、3回と肩に回した手で、私の二の腕を擦ると、「私も美枝ちゃんにずーっと興味があったんだ」と今度は囁くように続けた。
シーンという沈黙。ジンジンと頭の中が鳴る。
涼子さんが、「さて、完全に冷えちゃう前に行こうか。私も寒くなってきた」と元の調子で言うと立ち上がる。
「今日、帰らなくていいんです」
思い切って言ってみる。キョトンとする涼子さん。
「美枝ちゃん悪い子だなぁ(笑)」
「も・・・もう少しだけお話しませんか?」
「でも今日は寒いし、このままお話しするのは無理だね」
じっと見つめ返す。なんでか泣きそうになる。
「じゃ、とりあえずどっか温かい所に入ろうか?」
ちょっと困った風の表情をする涼子さん。駅方面に公園の中を走っている間、両親が旅行なこと、バカ兄貴が帰ってこないことを話した。涼子さんは、「お兄ちゃんがいるんだねぇ」と、なんだか私の気持ちを知った上で意地悪をするような的外れの会話を続ける。駅前の大通りに出る。
「喫茶店にしようか?それともレストランにしようか?」と涼子さんが話し掛けてくる。
「それともホテルとか?」
そう言って笑う涼子さん。
「涼子さんが迷惑じゃなければ、それでも・・・」と私が言うと、「お父さんお母さんに怒られちゃうよ」と困った顔をする涼子さん。
私はまた泣きそうな気分になる。なんでこんなこと言ってるのかもうわからない。恐らく涙目になっていたんだろう。涼子さんがちょとオロオロする。
「駅前に新しく建ったビジネスホテルが綺麗らしいよ」とかしどろもどろで話す姿がなんか可笑しくて、半泣きのまま笑う。
涼子さんも笑った。
そのまま涼子さんの会社の話とか、学校のA美の話とかしながら駅の反対側のビジネスホテルまで歩いた。ビルは無駄のない真四角のデザインで、いかにもビジネスホテルって感じ。駅の栄えていない側の線路沿いに建ってた。パパッとチェックインを済ます涼子さん。
「金曜日だからラス1だったよ」
なぜか誇らしげにカードキーを1枚、私に渡した。まさか自宅の最寄り駅のホテルに泊まることになるとは思わなかった。涼子さんも同じ感想。廊下を歩きながら、「お風呂は交代で・・・」という話をしたところで私のお腹がグーっと鳴る。そうだ、何も食べてない。自動販売機のコーナーで買い物してから部屋に向かうことに。涼子さんは先に部屋に入った。私はレンジでチンするだけのパスタと焼きおにぎりを買って部屋に戻る。部屋は普通のツインでシングルベッド2脚でビッチリという感じ。ベッドサイドに置かれた申しわけ程度の机には見たことないメーカーのテレビ。
部屋に入ると涼子さんはお風呂にお湯を張っていた。私の買ってきたものを見ると大袈裟に目を見開いて、「結構食べるねぇ。若さだなぁ」と驚いて見せた。
「だから走らないとダメなんです」と笑う。
換気が悪いのか湯気が室内に回るので窓を開ける。防音窓の隙間から外の喧騒が流れ込んでくる。電車の音。窓の下を電車が走っていく。終電まではまだ1時間くらいある。パスタと焼きおにぎりをレンジにかけると涼子さんが、「いいにおーい」と言いながら浴室から出てくる。おにぎりを半分こして、パスタも二口くらい涼子さんは食べた。
「この時間の炭水化物は悪魔の囁きよね」
手をお化けのように体の前でだらんと垂らして低い声で言う。私も笑いながら頷く。浴室からはお湯を張る音が聞こえる。涼子さん、冷蔵庫から水割りの缶を取り出しながら、「こんなところについて来ちゃうなんて、やっぱり美枝ちゃんは悪い子だなぁ」と私を見て笑う。
「悪い子ついでに、美枝ちゃんも一杯やりますか?」
リンゴの絵の描いてある缶を私に放り投げる。今までお酒なんかお正月くらいしか飲んだことない。涼子さんが美味しそうに水割りの缶を煽る。私もリンゴのお酒を開け、一口飲んでみる。口当たりと香りはリンゴジュース。でも飲み下すと、胸がぶわっと熱くなる。思わず舌を出してべーって顔をしちゃう。
「無理して飲まないでね」
足をパタパタさせて、あははと笑う。こういう笑い方もするんだ・・・。ひと缶を半分開ける頃には顔が熱くなって、自分の話をいっぱいした。涼子さんは笑ったり、ときには私の心情に合わせて一緒に怒ったりしながら話を聞いてくれた。
一番大笑いしたのは初めてのエッチを覚悟して彼の家に行ったのに、どうやってもちんちんが立たなくて色々頑張った話。呼吸困難になりそうな声で笑いながら、「じゃあ美枝ちゃんはまだバージンだ」と笑いすぎて出てきた涙を手で拭いながら言う。ヒキヒキする私を見て、「ごめんごめん」と謝った。当時は必死だったけど、こうして笑われるとなんだか吹っ切れるな。
「涼子さんの彼氏はどうして逃げちゃったんですか?」
私が聞くとバタバタさせていた足をピタッと止めて・・・。
「ほら、私は変態さんだから」と、さらっと言う。
そして、「美枝ちゃんはついて来てくれるんだよね?」と続けた。その目が妙に妖艶で、吸い込まれそうになる。

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