人を騙すと金がもらえるバイトをしたら彼女ができた 前編

2018/01/16

高校二年の秋のときの話。
友達のせいでコンビニバイトをクビになって、
金に困ってたんだわ、俺。
そのときに、その『人を騙すと金がもらえるバイト』っていうのを
仲のいい先輩から教えてもらった。
もともとその先輩からは、高校入ったときからバイトを紹介してもらってたんだ。
あんまり詳しくは書けないけど四時間働いただけで、
一万以上の金くれたりするバイトとか。
一方で八時間働いても四千円しかもらえないバイトとか、
とにかく変なバイトを、ツレと一緒によく紹介してもらってた。
だけど、先輩の紹介するバイト先はいっしょに働く連中が、
コワイ連中ばかりだった。
俺はいつもバイトしながら密かにビビってたわけ。

だから高校二年になってからは、普通にコンビニでバイトをはじめたんだよ。
で、俺の友達も同じことを思ってたらしくて、
途中から俺の紹介でそのコンビニで一緒に働いた。
まあ最初に書いたとおり、紹介したヤツのせいでクビになったんだけどさ。
で、そのことを先輩に話したら、
「人を騙して金が手に入るバイトがあるらしいんだわ」って、俺に切り出してきた。
今までとちがったのは、先輩自身もそのバイトをうわさでしか知らないってこと。
「すげー興味あるし、ほんとは俺が行きたいんだけど時間がねえからさ」
この先輩は先輩で、バイト人間で放課後はほとんどバイトに費やしていた。
俺は部活もしてなくて暇だったし、先輩は珍しくしつこかった。
いちおうケータイでネット検索すると、店の名前だけは出てきた。
詳細についてはなんも載ってなかったけどな。
興味ある方は電話してくださいとだけ書いてあったから、休み時間に電話してみた。
電話をしたら、学校帰りでもいいから是非来てくれって、
優しいおっさんの声が答えてくれた。
もちろん完全に信じてたわけじゃない。
正直半分は冷やかしのつもりだったし。
まあ話のネタにでもなればいいか、ぐらいにしか思ってなかった。
高校時代の俺、頭の中が空っぽすぎる。
で、放課後にケータイホームページに書かれたビルに行った。
郵便局の隣にある小さなビル。
玄関に入ると、「電話をくれた子?」って、
背の低いおっさんが俺をむかえてくれた。
声の感じで、そのおっさんが電話の対応した人だっていうのはわかった。
すぐに三階の事務所に連れてかれて、面接がはじまった。
ただ当たり前の話なんだけど、急な話しすぎて履歴書も、
なんにも持ってなかったんだよな。
そのことを伝えると、
「大丈夫だよ、ちょっとしゃべって簡単なテストして、
合格だったらそのときに履歴書とか書いてもらうから」
おっさんはそう答えた。
でも、そう言ったくせにおっさんは全然話そうとしないわけ。
沈黙が気まずくて、俺から口を開いた。
「ここのバイトって人をだましたらお金がもらえるって聞いたんですけど」
俺がそう言うと、おっさんはいきなり、
「いいですね、キミ」って俺を人差し指でさした。
「は?」
「まずここで話せなかったら、帰ってもらってたよ」
おっさんは俺から口を開かなかったら、
この時点で本気で帰ってもらうつもりだったらしい。
それから、おっさんはバイトについて話しはじめた。
「このバイトはね、難しいことはなにもないんだよ」
「人をだます仕事って聞くと、ついつい構えちゃうでしょ?」
「だますって言うより、ウソをつくって考えたほうがいいなあ」
「誰でもいいから、その人にたいしてウソをつく」
「キミはそれだけで、お金がもらえる」
「いやあ、いいバイトだねえ! こんなのなかなかないよ!」
おっさんがニコやかに話せば話すほど、俺の表情はけわしくなってたね。
「ボク、頭悪いんで……ちょっと今の説明だとよくわかんないです」
おっさんは目を丸くした。
ちょっと西田敏行に似てるなって思った。
「むずかしく考えなくていいんだよ。
僕が言ったとおりのことをする。
それだけで、キミはお金をもらえるんだよ」
「あー、じゃあたとえば。
ボクが実はゲイだとか、そういうテキトーなウソをつくだけでいいってことですか?」
「まあ、ようはそういうことだね」
なんだそれ。
そう思った。

ちろん口には出さなかったけど。
ただ、さすがにこの説明じゃあ、おっさんも足りないと思ったんだろうな。
そのあと、詳しい説明をつけたした。
おっさんの言ったことをまとめると、こんな感じになる。
・人をだますと金がもらえる。
・ただし、きちんと相手をだまさなければならない。
・だましの質によって、もらえる額が変動する。
そのほかの情報。
・ケータイ登録が必須で、バイト代はこの会社のサイトで常に確認できる。
・基本的にこのバイトは十代しかやらせてもらえない。
・やめても、再度、お誘いのメールが来る場合がある。
説明をくわえられても、いまいちピンと来なかったけど面倒だから、
それ以上俺はなにも聞かなかった。
おっさんは一通りの説明を終えると言った。
「じゃあ、最期に簡単なテストをしましょう」
「なにやるんですか?」
「簡単です。
これから僕が呼ぶ女性社員と、二十分間話して。
そしてその会話の中で、彼女をだます……いえ、彼女にうそをついてください」
おっさんが「入って」と言うと、スーツを着た女が入ってきた。
やぼったいメガネをかけた地味な人だった。
その地味な社員さんと俺だけの会話がはじまった。
「どこの高校に通ってるんですか?」
俺は人と話すのは、きらいじゃなかった。
いや、むしろ好きなほうだ。
さらにいうと、俺は年上の女の人に惹かれるんだよ。
さっそく調子にのってウソをついた。
自分の通ってる高校とは、ちがう学校の名前を言った。
よくよく考えると、俺の高校は私立で制服もブレザーだったから、
ここらへんに住んでる人だったら、一発でわかるウソだった。
言ったあとで「しまったな」と思ったけど、結果から言えば、
俺がつけたウソはこれだけ。
なにせ、このお姉さん。
めちゃくちゃおしゃべりだった。
俺にしゃべる隙を与えないんだよ。
このお姉さん、ほぼ二十分間俺に向かって、
俺の通っている高校のことについてしゃべりたおした。
「いやあ、あたしが通ってたときはまだ女子高だったんだよねえ」
気づいたら、俺ってば一言しか話していない。
このままではマズイ。
「ちょっと待ってください。ボクも話したいんですけど」
俺は、無理やり会話に割りこんだわけだ。
でも俺が会話にわりこむと、お姉さんったら露骨に悲しそうな顔するんだ。
申し訳なくなって、俺はまた黙ってしまった。
あっという間に、おしゃべりタイムは終わった。
話が終わると、地味なお姉さんはお辞儀をして満足そうに部屋から出ていった。
「あー、落ちたな」って俺は目の前の机にうなだれた。
でも結論から言うと、俺は合格してしまった。
「え? オッケーなんですか?」
「うん、よかったよ。なかなか素質あるね、キミ」
優しそうなおっさんという最初の印象は、すっかり胡散臭いものになってた。
ていうかあのお姉さんとのやりとりで、なにがわかったんだよ。
それからはあっという間だった。
書類に簡単な個人情報を書いて、ケータイアドレスの登録をする。
口座番号については後日でいいって言われた。
で、おっさんから腕時計を手渡された。
Gショックのワインレッド色の時計だった。
「これ、このバイトやってるときはできるかぎり、つけておいてね」
「ただの時計ですよね?」
「キミのバイト代を決める時計だよ」
俺はもうなにも言わなかった。
まあなにはともあれ、俺の新しいバイトは決まったわけだ。
うちの高校は、そもそもバイトをやることじたいが禁止されてた。
バレたら停学処分。
だからやるなら、当然隠れてする必要があ…

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