彼氏と喧嘩した次の日 3
2024/04/12
わたしはすぐさま簡単にシャワーを浴びると新しい下着を身につけました。
それまでつけていたのと似たような感じですが、レース部分の面積がより増えたものです。色はごく淡いブルー。
同じ黒だけど襟ぐりが大きめで半袖のカシュクールに少し短めの白いプリーツスカート、お気に入りの銀のネックレスをつけるとメイク直しをしてわたしは家を出ました。
電車が一駅、一駅と目的地に近づくたびに胸がはずむのが分かります。こんな気持ちで人に会うなんて、はじめてのデートの時以来じゃないでしょうか。久しぶりに履いたヒールの高いミュールのせいもあって、なんだかいつもと視界が違う気がします。
待ち合わせの場所に着いたのは指定した時間の一〇分前でした。あたりには同じような待ち人がたくさんいます。
わたしは肩にかけたトートバッグから携帯を取り出すと教えてもらった番号にかけてみました。
発信音のあと、電話はすぐに繋がりました。
「はい」
はじめて聞く彼の声は、なんて言うんでしょう、高すぎず、低すぎず、チャットのイメージそのままのクールさをたたえた、それでいてどこか暖かみを感じる声でした。
「あの、かずさんですか?ゆんです。さっき言っていた場所に着いたので、お電話させてもらいました」
彼の声を聞いたときから明らかにわたしは舞い上がっていました。しどろもどろになりながら話すわたしに電話の向こうのかずさんが苦笑したような気がします。
「こんにちは。多分、君の後ろから歩いていると思う、そのまま待っていて」
彼の言葉にわたしは慌てて後ろを振り返りました。
携帯電話を畳みながらわたしの方に向かって近づいてくる一人の男性が見えました。
ゆったりとした黒のジャケットに濃い緑のスタンドカラーのシャツ、淡いグレーのチノパンで身を包んでいて、身長は一七五くらいでしょうか。中肉で癖のない髪はきちっとセットされています。穏やかな微笑みを浮かべた彼は、わたしの目の前に立つと会釈をしました。
「こんにちは。失礼ですが、ゆんさん、ですか?」
「あ、はい、そうです、あの、はじめまして」
わたしも慌てて会釈しました。思わず顔が赤くなります。
「かずです、はじめまして。結構待たせちゃったかな?」
「い、いえ、わたしも今さっき着いたところです。あの、今日は無理を言っちゃってごめんなさい」
「無理だなんてとんでもない。ヒマにしていたところだったし、お会い出来てうれしいですよ」
相変わらず穏やかな笑顔のかずさん。特別かっこいいというわけではないのだけれど、笑顔がすごく魅力的で、わたしの方を見つめる瞳に吸い込まれそうになります。
「お昼はもうすんだの?」
「いえ、まだ、です」
「じゃあ、この近くに旨い蕎麦屋があるから行ってみない?蕎麦がいやなら他の店でもいいよ」
「あ、いえ、ご一緒します」
近くのデパートの上階にあるそのお店は高級そうな感じで、普段のわたしなら絶対に入らないようなお店でした。
「ここは関西風のだしだからね。おいしいよ」
「そうなんですか」
バカみたいな返事しかできない自分に少しいらだちながらも、わたしは緊張しきって黙りこくっていました。
「チャットじゃ似ている芸能人がいないとか言ってたけど、本上まなみと感じが似ているね」
「えっ、そ、そんなことないですよ」
天ぷら蕎麦を豪快にすするかずさんの一言にわたしは口にしていたおそばを慌てて飲み込みました。
そんなわたしにかずさんは、湯飲みにお茶を注ぎながらあの穏やかな微笑みを浮かべました。
「どうして僕と会おうと思ったの?」
「わたしにも、よく分からないんです。でも多分・・・」
そこから先が上手く言えません。言っちゃうと、身体の力が抜けていきそうな予感がするのです。おなかの下の方がぎゅっとなるのが分かります。
わたしの不審な態度にかずさんは何も言わずおかしそうに笑うだけでした。
「・・・ごちそうさまでした」
「いや、付き合わせて悪かったね」
自分の分は払うつもりだったのですが、かずさんに止められて、結局おごってもらう形になりました。
「それじゃ、行こうか」
「・・・・はい」
すたすたと歩いていくかずさんにわたしは黙って着いていきました。
駅前ビルのパーキングに停めてあった、かずさんの車に同乗して(レガシィだったかな)向かった先は海沿いにある有名な高級ホテルでした。
すでに部屋は取っていたのでしょう。フロントでキーを受け取るとわたしとかずさんはエレベーターで最上階へ向かいました。
「さぁ、入って」
かずさんに招かれて入ったお部屋は、とても広くて、これがスウィートって言うんでしょうか?
中の調度品も高そうな物ばかりです。こんな部屋に入ったことのないわたしはひとりで目を丸くしていました。
「すごいお部屋ですね・・・」
わたしはもう、それだけを言うので精一杯でした。
「気に入ってもらえたかな」
ジャケットを洋服掛けにかけたかずさんはゆったりとした足取りでわたしに近づくと背後からわたしの肩に手をかけました。
「バッグはそこに置くといいよ。まぁ、ゆっくりしていって」
「は、はい」
かずさんの手が肩に触れた瞬間、身体に電撃のようなものが走ったのをはっきりと覚えています。
わたしのあの部分がじわっと湿り気を帯びていくのが分かりました。
わたしは必死に平静を装ってバッグをソファの上に置きました。自分の身体の変化を悟られたくなくて、ごまかすようにわたしは窓辺に近づきました。
「ステキな景色ですね・・・」
声が引っかかって最後のほうがかすれたようになります。
「海がよく見えるでしょう?だからここのホテルにしたんだ」
いつの間にか背後にいたかずさんがごく自然にわたしの腰を抱いてわたしのそばに寄り添っていました。
もう、ダメでした。全身の力が抜けて膝が笑いそうになります。ぐったりとなってかずさんにもたれかかるようになったわたしをそっと肩で支えて、かずさんはあの柔らかな微笑みをわたしに向けました。
「どうしたの?」
わたしは何も言えず、無言でかずさんに見とれていました。
「可愛いよ。ゆん」
かずさんはそういうとわたしの頬を撫でるようにして、そっとわたしにキスしました。
触れるか触れないかくらいの優しいキス。それだけでわたしは息が止まりそうになりました。
無我夢中で彼の身体にしがみつくと、今度は深々とキス。差し込まれた彼の舌先がソフトにわたしの舌を突いたかと思うと、歯の裏側や上あごなどをくすぐるように滑っていくのに、わたしは全身がとろけるような錯覚を覚えました。
「ん・・っ・・・んん」
自然と声が漏れていきます。わたしがおずおずと舌を差し出すと、絡まった彼の舌先があくまでソフトにわたしの舌をなぞっていきます。そして、いきなり強い力で吸い上げられました。
瞬間、頭の中が真っ白になります。
気づいたときわたしは背後から抱きしめられていました。チャットの時のように、おなかのあたりから、すーっとなぞるような彼の指先。それと合わせるように首筋を生暖かい何かがゆっくりと這っていきます。
「はぁ・・・・んっ」
身をよじるわたしに構わずに胸のふもとまでたどり着いた彼の指先が、ぞわぞわ・・・・という感触と共にわたしの敏感なポイントまで一気にたどり着きました。
軽くつままれたかと思うと、じわっとかけられた力が、強くなったり弱くなったり・・・・。
同時に耳たぶを甘噛みされ、舌先が耳全体を嬲っていきます。
「ふぁあっ・・・・んぁ」
我慢していた声がどうしても漏れていきます。
「可愛いよ、ゆん。もっと可愛い声を聞かせて」
彼の甘いささやきが耳から飛び込んできます。再び、彼の手がおなかの方へ戻っていました。
彼の指先がそっとカシュクール風ブラウスの裾をめくりあげていきます。少しひんやりとした空気がわたしの火照った身体にとても心地良い感覚を与えてくれます。胸のすぐ上で引っかけたようにめくりあげられて、ブラがむき出しにされました。
「服装もそうだけど・・・。ブラもチャットの時とは違うんだね。清楚な感じは変わらないけど・・・とてもえっちだよ」
少しトーンの低くなった彼のささやきに全身が熱くなります。
「はずかし・・・・い。でも、かずさんに見て欲しかったから・・・」
自分のものとは思えないほど淫靡な声が出ていました。
「そんな風に言われるととても嬉しいよ、ゆん」
ささやきながらついばむような軽いキス。同時に、滑らかな手つきでブラのホックが外されていました。
あの奇妙な開放感と共にブラがすっとめくりあげられ、外気がわたしの胸をそっと包みました。
「思った通り、きれいなおっぱいだよ、ゆん。とてもキレイだよ」
「あぁん・・・、そんな・・・」
手を触れずに、じっと見つめる彼の視線を感じてわたしは胸を震わせました。
「あまり見ないで。すごく、恥ずかしい・・・・」
「乳首の色も、淡いピンクだし・・・・とてもステキなおっぱいだよ」
言いながらかずさんの温かい手がわたしの両胸を下から持ち上げるように掴んでいました。
「それに・・・ココが感じさせてって言ってる。すごくえっちなおっぱいだ」
すでに固く尖っていたわたしの敏感な先っぽをつまみ上げると、服の上からの時の愛撫にくわえて、指先でかき回すようにしたり押し込んだり・・・。チャットと同様の責めがわたしの身体をさいなみました。
「んぁっ・・・・っくん・・・あああっ」
びく、びくん、と身体が震えのけぞるのを止めることが出来ません。
息も絶え絶えになったわたしはこれ以上立っていられそうにありませんでした。そのことを敏感に察した彼は、
「辛くなってきたみたいだね。ベッドに行こうか」
彼の耳打ちにわたしは無言でうなずきました。次の瞬間、わたしはひょいと彼に抱え上げられたのです。
「えっ・・・」
俗に言う、お姫様抱っこをされたわたしは慌てて彼の首根っこにしがみつきました。
わたしはそう重い方ではないと思いますが、それでも普通の女の子くらいの体重は間違いなくあります。
そんなわたしを飄々と抱き上げてベッドルームに運んでいく彼に驚きとときめきを隠せませんでした。
<続く>