まさか私の妻では・・・

2018/09/20

今年の春、大きな仕事が一段落し、私(拓哉・35)は妻(章子・32)と一緒に妻の友人が住むW市へ一週間の旅をしました。近くに有名な温泉地があり、観光地としても知られる、賑わいのある街です。
Kは妻の学生時代の同級生。私たちの結婚式に出席し、新居にも遊びに来てくれる程親しくしています。
何故か、数年前W市のホテル街でスナックを始め、忙しくしている様です。今は、逆に妻が、春と秋年二回遊びに行きます。今回はそれに私が便乗した形です。夫婦二人が、一週間も女の一人住まいに宿泊させてもらう訳にもいかず、妻だけが泊めてもらうことにし、私は、一人ゆっくり温泉に浸かるつもりで、温泉地の湯治宿に宿泊しました。
初日の夕食はKの招待で、彼女のスナック(店名・『夢』)へ行きました。結構広く、小奇麗で客も数組居て、流行っている様です。Kと二人の女の子で切り盛りしているとの事です。店に入ると妻はトイレなのか、すぐに店の奥に入って行きました。私はKと挨拶を交わし、店の事やW市の状況等聞きながら話していると、妻が奥から出てきました。なんと店の女の子と同じ服装です。
胸が大きく開いた、黒いタンクトップと膝上10cm以上はありそうな、黒いミニスカートです。
「どう、似合ってる?」とポーズをとる妻。私は30女がミニスカートなんて、無理と思っていましたがその思いは覆されました。似合っています。「おう、いいじゃん」と言ってしまいました。
Kが「うちに遊びに来た時は、いつも店を手伝ってもらってるの、章子は客のあしらいが上手で、本当助かるわ」と言いながら、女の子を呼んで紹介してくれます。二人とも20代前半で、可愛い娘達です。
「章子、今日は旦那さんの相手、お願いね。こっちはいいから」とKと言って、客の方へ行きました。
妻は私の横に座り、Kが用意してくれたご馳走を一緒に食べました。客が帰ってしまうと、三人は私達の席に集まり、ビールや酒を飲みながら、話が盛り上がりました。
店を閉めた後、妻はKと共にKの家へ、私はタクシーで湯治宿へと、店の前で別れました。
あくる日は、昨日の疲れもあって、昼過ぎまで寝ていました。午後から、湯に入り、湯から出て温泉街の散歩、また湯に入るの繰り返しで、過ごしました。次の日も同じパターンの繰り返しです。
温泉ですから、湯に入る外、何もすることがありません。さすがに三日目になると、湯にも飽き人恋しくなってきました。妻のいるKの家にでも、遊びに行こうかと思いましたが、何となく抵抗があり、宿でゴロ寝を決め込みました。そのまま眠ってしまったようです。目が覚めるともう夕方です。食事をしてから、話し相手でも探そうと街中の居酒屋に入りました。カウンター席はいっぱいで、奥の座敷に案内されました。がっかりしながら、酒がくるのを待っていると、相席の客が案内されてきます。「やあ、今晩は、お邪魔しますよ」と言い、向かいの席に座りました。
歳は私より上、40代半ばに見え、体格の良い人です。すでに酒が入ってるのか、少し赤く人の良さそうな顔がニコニコしています。しかし、目は鋭く、抜け目なさそうで、商売人のように思えます。彼も酒を注文していました。「お宅もこちらにお泊りですか?私も一泊するつもりですが一人で飲むのもつまらないので、どなたか相手になって下さらないかと思って、やって来ました」と私の着ている浴衣と半纏を見ながら、言います。「そうなんですよ、一人では寂しくて、話相手を探していたところです」と答えました。「そうですか、それは丁度良かった。今日はちょっと良い事がありましてね、ぜひ聞いて下さい」と言い、席を立つと調理場に行き、何か頼んでいました。
「実は女の事なんですよ、まあ一杯やりながら聞いて下さい。今日は私に奢らせて下さい。
二年前、W市で商用で来た時、商売が思った以上に上手く運び、嬉しかったです。それを誰かに聞いてもらいたくて、ホテルの近くのスナックに行きました。店の名前が縁起のいい「夢」です。
客が多くて、今日と同じように相席でした。私と同じ年くらいの男性が、一人飲んでいました。
彼は律儀そうな人で、私の長い話を最後まで聞いてくれました。でも、すっかり出来上がってしまい、その後は下ネタ話です。私も嫌いではないので、話に花が咲きました。その頃には客も帰ってしまいママと女の子三人が私たちの席に集まってきて、女性の体がアダルト映画のように潮吹きをするのかどうかで、盛り上がりました。私は女性の体が潮吹きすることを、自分の知ってる限りの知識で説明しましたが、誰も信じてくれませんでした。店を閉める時間になり、勘定してもらっていると
私の話し相手になってくれた男性が、酔って動けなくなり、女の子に助けてもらっていたので私も手伝って、タクシーに乗せました。その時、女の子の体が私の体に触れ、電気が流れたかと思いました。二人とも顔を見合わせ、何故か手を握り合っていました。彼女は手を離しながら『ありがとうございました。また来てくださいね、私、優子と言います』と言って、頭を下げました。
この時から、私の頭に彼女のスマートな体型、可愛い顔が焼き付いて離れません。
一カ月程して、商用で遠方に行った帰り、彼女の事を思い出し、W市に立ち寄って一泊しました。
食事をしてから、あのスナック「夢」に入りましたが、彼女の姿はありません。立ち入って詳しく聞くこともできず、若い女の子に少しづつ聞いてみました。彼女はいつでも働いている訳ではなく時々、不定期に働いていると、彼女たちが言ったと、私は解釈しました。諦めざるを得ません。
これから話は長くなりますよ。まあ、ゆっくり飲んでください」と言いながら、酌をしてくれます。
銚子が数本と豪華なご馳走が、目の前に並んでいました。話に夢中で気づきませんでした。
話の中に出てくるスナック「夢」の名前をどこかで聞いた気がします。その時は忘れていました。
「秋風が吹き始めた10月、商用がありW市に行きました。今度は厳しい商売で、私と若い社員二人一泊しました。さすが夜まで仕事するわけにいかず、夕食後は部下はそれなりの所へ遊びに行き私は、もしやと思って、あのスナック「夢」に行きました。彼女はいました。嬉しかったです。
大切なものを失って、諦めかけたところで、再び見つけ出したような気持ちです。しかも私を「潮吹きのおじさん」で覚えていてくれました。「優子が忘れられなくて、また来てしまった」とお世辞(本当は本心)を言うと、喜んでくれました。他の客の相手をしながら、私の方にも来て酌をしてくれたり、忙しそうに働いています。私はそれを見ながら、店が閉まるのを待ちました。
客がいなくなると、自然に私の席に女の子たちは集まってきます。私はカラオケは全く苦手ですが思い切って誘ってみました。若い女の子はすぐに賛成してくれましたが、優子とママは、少し考えていました。ママが優子に勧めてくれ、一緒に行くことになりました。ほっとしました。
それから、社員二人に電話すると、ホテルに帰っていたので、女の子達とカラオケに行くと言うとすぐにやって来てきました。歌うことが苦手な私は見てるだけでしたが、楽しく過ごせました。
優子も、若い子達ほど歌わなかったけど、上手に歌っていました。みんな大いに盛り上がりました。
私は携帯の番号を書いたメモ書きを彼女に渡しながら、今度、いつ来るのか聞いてみました。
きっと連絡すると約束してくれました。ホテルに帰ると、もう日付が変わていました。
諦めかけた出会いが、偶然再会し、より親しくなれるなんて、人の巡り合いとは不思議なものだと思いました。話は続きますから、もっと飲んで下さい」と言って、また盃を満たしてくれます。
私は、彼が10月に彼女と出会ったと聞いて、ふと、妻の事を思いました。しかし名前が違います。
妻は「章子」、彼女は「優子」ですから、全く違う人物に違いないと思います。
「去年の春、彼女から2週間後にW市に行くと連絡が入りました。今回は飲食店の組合が主催で公園で夜桜見物があるので、その日に来て欲しいと言います。私は彼女に逢うために、予定の日に行けるように仕事を調整し、あくる日もフリーになるようにしておきました。
当日、公園に行くと、桜園は人でいっぱいでした。人々の中を忙しく動き回る若い女性は、各店の従業員たちです。私は桜を眺めるより、懸命に優子を探しました。やっと見つけました。
店の服装の上に白いエプロンをして、飲み物をトレーに載せ、配っていました。私を見つけると駆け寄ってきて、『遠いところから来て下さって、ありがとうございます、後でゆっくりお話ししたいです』と言って、飲み物を手渡してくれます。『優子の為ならどこへでも行きますよ』と言うと、にっこり笑ってくれます。それから、私は見物客たちと桜を眺めながら、酒を飲み
世間話をしながら、時間を過ごしました。最後の出し物・花火大会が終わり、桜を照らす灯が消え始めると、見物客は少なくなってきます。私は一人ベンチに座り、優子が来るの待ちました。
しばらく待つと、公園の建物から出て来て『待たせて、ごめんなさい』と言いながら駆けて来ました。春らしい薄い黄緑系のワンピースを着て、白いカーディガンを羽織ていました。
『お腹すいちゃった、お寿司食べたいなあ』と言うので、近くの和食の店に入り、私は酒を彼女にはビールを、そして二人分の寿司を注文しました。先に来たビールをコップに注ぐと一気に飲み干し、『ああ、美味しい!喉が渇いてたから最高』『私、酔ってしまうかも』と言いながら、私の顔を見て笑っています。

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