母ちゃんより怖い女に初めて会った 3
2024/08/05
帰社してから新主任にお前もちゃんと確認してくれないからとかネチネチ難癖つけられて退社時刻が若干ずれ、5分前の法則を叩き込まれていたのにスタバに着いたのは約束の時間を10分近く過ぎてからだった。
嫁「××くん!」
わっ、やばし、怒られる。
必死に探したんだが声はすれども嫁見つからず。
嫁「こっちこっち。」
ん?
誰ですか?
何か見たことないお姉ちゃんが手招きしてますが?
ゆるーくウェーブかかったブラウンのロングヘアにターコイズブルーのニット。
それにダークグリーンのロングスカート。
よ・・・嫁・・・・?
よく見たら嫁の顔くっついてる、お姉ちゃんに!
俺「○○先輩・・・ですよね・・・?」
嫁「何言ってんの。今日はわざわざごめんね。何飲む?」
俺「あ、自分で買ってきますから・・・」
嫁「いいってば。何?」
俺「キャラメルマキアートトールで・・・」
嫁「OK。クッキーは?」
俺「いえ・・・いいです・・・」
見たことない人が目の前通り過ぎてカウンターに並んで少しして戻ってきた。
嫁「それでポーチは?」
目の前にサーブしてくれた後座りながら聞いてきた。
俺「あ、はい。こちらになります。」
ショルダーから熊ポーチ取り出して渡すと、なんてんですか、破顔一笑?あんな感じで、
「よかったーっ。そっかー。@@先生のとこにいたかー。」
いたじゃなくてあったじゃ?
ポーチだし。
「探してたんだよね。xxxx個限定でシリアルも入ってんの、この子。」
この子って・・・
目の前に俺よりもアホの子が座ってめっちゃ喜んでる。
俺「ははは。そうですか。無事見つかって良かったですね。」
多分、俺は逆に顔強張ってたと思う。
俺の中で培われていた嫁のイメージはダークカラーのビジネススーツにひっつめた黒髪。
後楽園で僕と握手のヒーローも剥いたらこんな感じなんだろうか。
嫁「××君変わらないね。どう?仕事うまくやってますか?」
あんた変わりすぎだっつーの。
アブダクションされてどこぞの星からでも戻られたんですか?
俺「はぁ、何とか頑張ってます。」
嫁「相変わらず頼りないわね。」
頼りないとか言ってくれちゃってるし。
俺「でもアレとアレとアノ案件すべてクリアできそうなところまで持っていきましたよ。」
ちょっと自慢げに言ってみる。
嫁「当たり前です。仕事はクリアして初めて仕事。ちゃんと教えたでしょう。」
うわ、外見だけで中身全然変わってねぇ。
嫁「今日は@@先生のところに行ったのはどの案件?」
俺「**号の権利関係確認です。書類に不備がありまして、そのサポートに。」
嫁「不備。何でそういうことが起きるのかな?ん?」
やっぱ目の前のお姉ちゃんは嫁だ。
確信した。
でももう辞めた人間だし、怖くねーよ。
多分・・・怖くは・・・ない・・・はず・・・。
失礼を承知で思い切って言ってみる。
俺「ところで先輩随分お変わりになられましたね。イメチェンですか?」
嫁「イメチェン。はははは。そんな大げさなもんじゃないけどね。もう出社しなくていいからラフなスタイルでもいいかなって。」
俺「髪なんて染めちゃうんですね。びっくりしました。」
嫁「遊び遊び。カラーじゃなくてマニキュアだからすぐ戻せるし。」
照れてます。
そんな変な照れ方されると背中に嫌な汗かくじゃないか。
嫁「そうだ。××君ご飯まだでしょう?」
俺「あ、はい。社から直接来ましたから。」
嫁「ですよね。この後誰かと約束あります?」
俺「ないです。」
嫁「じゃあお礼にご馳走しちゃおうかしら。大丈夫?」
そんな、バカな。
私用で二人でスタバ入ってるだけでも奇跡なのに食事なんてムリ。
俺「いえ、大したことじゃありませんから。」
嫁「いえいえいえいえ。あなたにとってはたいしたことじゃないかも知れませんが、私にとっては大したことです。奢らせなさい。」
有無を言わさぬ強制力も相変わらずだ。
もう合計で3年近くも躾けられちゃってるので条件反射的に唯々諾々と流される俺。
「お供させていただきます。」
食事することになっちゃいました。
二人で。
夜に。
嫁「男の人だからお肉がいいわよね?ここ来る前にそばに美味しそうなとんかつ屋さんあったけどそこでいい?」
俺「はい。結構です。」
嫁に上ロースかつ定食とエビフライ単品2本、あとビールゴチになりました。
嫁「暇な時にでも遊びましょう。」
その日はそのままなぜか握手して帰った。
味はよくわからなかった。
その夜ちょっと悪夢見た。
帰宅します。
それからしばらくは俺も忙しかったし、嫁も色々あって(後で書く)連絡は取らなかった。
四ヵ月後。
携帯に嫁から着信。
嫁「久しぶり。元気にしてた?」
俺「はい。お久しぶりです。先輩もお元気でしたか?」
嫁「元気元気。今日はどうしてるかなって思って電話してみました。」
俺「相変わらず走り回ってますよ。」
嫁「あはは。そうだ。暇な時遊ぼうって約束覚えてる?」
俺「冗談かと思ってました。」
嫁「そうだよね。でも気が向いたら誘って下さい。それじゃ。」
ちょこっと話して通話終了。
ふふ、惚れたな・・・・・
なんて微塵も思わなかった。
そもそもそういう対象でも関係でもなかったし、ただの気まぐれか暇つぶしかなと。
でも何かちょっと引っかかるものもあったのは確かだった。
お世辞にも当時の俺にとって嫁は愛想が良いほうではなかったし、社交辞令を口にするタイプでもなかったから。
喉に小骨が引っかかった感じと言うか、指のささくれが剥けかけた感じというか、そんな気持ち悪さもあって翌々週の土曜日に食事に誘った。
前回は自分に合わせてもらったので今回は嫁に希望を聞いてギリシア料理。
メシ食った後ちょっとダーツして解散。
それから月に何回か食事したり、飲みに行ったりするようになった。
垣根が下がるっての?
次第に行く店もランクが変わり始めて、お好み焼き屋とか、二人で結構飲み食いして会計3000円いかない小汚い謎の飲み屋(嫁に連れてかれた)とか。
そうすると会話も柔らかい感じになっていった。
件のトラブルの真相聞いて憤慨したり、元カノ達のその後聞いてリアルガクブルしたり。
お互い趣味の話もした。
俺はグッピーやインコの遺伝系統組み合わせてアルビノ作出するのを続けてたのでそんな話
嫁は嫁で機械でする編み物(着ているニットは全部自作)の話。
カラオケ行って自虐的にクレイジーケンバンドのコロ歌ってソファ叩いて泣き爆笑もされたな。
あとあれだ。
お子様に混じってキディランド行ってリラックマ大人買い。
嫁「××君、両替してもらって。」
俺「ういっす。5000円でいいっすか?」
嫁「早くー早くー」
ガシャポン買い占めたりもしました。
みっともないことこの上なし。
ガシャポン堅くて開かないなんて泣き言言うんで踏み割って差し上げて、
嫁「なんてことすんのよ!」
と腹に3コンボ叩き込まれるくらいの仲の良さになった頃、栄転拒否って辞めちゃった理由を聞いてみた。
嫁「私飛行機駄目なんだよね。」
俺「高所恐怖症かよw。」
嫁「だって怖いじゃん。一番怖いのランディング。こう体がファーって浮くじゃない。」
俺「浮くねぇ。」
嫁「あれ駄目。お尻スースーして落ち着かなくなる。」
俺「子供かよw」
嫁「だって**じゃ国内も移動全部エアバスじゃん?死ぬって。」
俺「堕ちなきゃ死なないから大丈夫だよw」
ぽかぽか暖かい秋の日差しの中上野動物園の不忍池んとこで嫁が作ってきたおにぎり食いながら笑った。
おこぼれ狙い?のハトにおやつのキャラメルコーン投げたりしながら。
嫁「飛行機なー、空気すごい乾燥してるじゃない。」
俺「そんなん水分大目に取ればいいじゃん。怖かったら酒にして寝ちゃうとか。」
嫁「違うっつーの。顔が乾燥すんだっつーの。」
俺「顔w水でも塗っとけば?w」
嫁「女ナメんな!」
にっこり笑って飲もうと思って手を伸ばしたコーラガッシュガッシュ振ってから渡された。
俺「ひでー。コーラぶっかけるよ?」
嫁にむかって傾けてプルトップ引こうとして
嫁「やーめーてーよー」
楽しい。
別に付き合ってるとかじゃないけどなんかデートっぽい。
ボソってほんと小さい声で言った。
嫁「んー、あとさ、私のとこ父親入院してたから。出張ならともかく転勤はちょっとね。」
中年過ぎるとやっぱあちこちガタくんのかなぁ。
うちの親父もそう言えば去年糖尿で入院したわ。
俺「どこか悪いの?」
軽い気持ちで聞いた。
嫁「うん。ALS。」
俺「早く治るといいよね。今度お見舞い行くよ。」
そしたら嫁上向いてはははははって笑ってんの。
友達の父親が病気してたらお見舞いぐらい行くし。
まだ信用されてねーのかなーなんて思った。
嫁「もう。大丈夫。」
俺「退院したんすか?よかったじゃん!」
嫁「退院・・・うん・・・退院かなぁ。」
俺「???」
嫁「7月にようやく死ねたんだ。楽になれたんだからよかった・・・よ・・ね・・・」
頭から水ぶっかけられた気分だった。
嫁空見てたんじゃなかった。
泣いてた。
何て言っていいかわからなくて、黙ってキャラメルコーンの袋クシャクシャしてた。
そしたらな、嫁泣き笑いした顔で俺のこと見て言うんだよ。
嫁「××、どうしよう。私一人ぼっちになっちゃった。」
友達だって肩くらい抱いたっていいよな?
泣くな、頭と手動かせって散々言われてきたけど一緒に泣いてやっても別に構わないよな?
みんな見てたけど二人で泣いた。
多分、俺はあの夜嫁が助けに来てくれた時から嫁に惚れてた。
助けてないよ、お前騙されてただけじゃんて奴もいると思う。
実際利用されたわけだし。
でもいいんだ。
味方だって、味方がいるよって来てくれただけでいいんだ。
淡麗3本分とめちゃ軽いけど俺にとっちゃ大事な命1個分の恩がある。
嫁「そんな・・・××まで泣くことないじゃない・・・ぐすっ・・・ずびっ。」
俺「泣いてないっす!今何が必要なか考えて手動かしてるだけっす!」
嫁「泣いてるじゃない・・・」
俺「泣いてねーよっ!」
嫁「涙出てんじゃない・・・」
俺「これは汗!暑いから!」
嫁「嘘つき・・・・ずずずずずっ」
俺「ずびばぜん・・・・おえっふ」
一しきり泣いた後初めて手をつないで動物園の中歩いた。
ゲートくぐって地獄門の前通って上野駅まで歩いてる間もずっとつないでた。
電車の中でもその手は離さなかった。
先輩の住む街の駅まで送った。
嫁「今日はほんとごめんね。せっかくの休み台無しにしちゃったね。」
俺「何言ってんの。楽しかったっす。色んな動物見れたし、先輩の弁当食えたし。」
嫁「良かったらまた誘ってね。でもほんとごめんね。」
俺「先輩から誘って下さいよ。誘ってくれたら俺昔みたいにダッシュで飛んでいきますから。」
嫁「ダッシュってwもう下じゃないんだからw」
その瞬間俺の中で何かがプチって切れた。
俺「寂しいなら寂しいってちゃんと言え!バカ!」
嫁「バカって何よ!バカって言ったほうがバカなんです!。」
俺「うっせ。バーカバーカ!」
嫁人目もはばからず泣き出す。
俺「寂しかったらそばにいてやるって言ってんだ、バーカ。」
嫁本泣き。
俺「好きだっつってんだ、バーカ。俺が守ってやるっつってんだバーカ。」
嫁号泣。
俺?
秘密。
そんなこんなで情けない告白して、その日の夜プロポーズして、翌日半休取って区役所に婚姻届出した。
結論。
勢いで結婚してもどうやら幸せにはなれるらしい。
これが俺達の結婚のいきさつです。
つまらんこと長々とすんませんでした。
パンツ賢者タイムは恥ずかしいので省いた。
狭い心でも許せ。
元カノについては他1名と一緒に別件でスメルご飯を食いかけたとだけ書いておく。
では。
<要望に応えて>
んじゃ初夜話は少しだけな。
告白した後、嫁に怒った顔した嫁に手引っ張られてそのまま改札抜けて、嫁が小走りになるんで俺も小走りでどこかに連れて行かれた。
着いたのは嫁のマンション。
エントランス抜けてエレベーター乗ったらいきなりキスされた。
で玄関開けてそのまま倒れこんでブラずらして胸揉んでたら、
嫁「ごめん。シャワー使ってきてもいい?」
俺「いい。使わなくていい。」
嫁「それは嫌。」
仕方がないので嫁シャワーに行かせて、そう言えば下にローソンあったなと思い出してゴム買いに走りオートロックに締め出される。
20分くらい待ってエントランス開けてもらい再訪問。
嫁「帰っちゃったのかと思った」
俺「買い物してきた。俺もシャワー借ります。」
シャワーから出たら多分親父さん用の新しい下着が出してあったんだけど、白ブリーフだったんで無視して全裸でリビングに突入。
嫁「ここじゃ・・・いや・・・」
良く見たら遺影と花と線香立てとキラキラした箱(後にお骨としりガクブル)があったので、さすがにねと寝室に移動した。
合体。
2個入りのしか買ってこなかったんで追加で同じもの3パック買って朝まで7発した。
プロポーズと入籍が早かったのは、ほんと嫁の部屋がらんとしてて、
目についたのが買い置きの大人用オムツとかベッドとかボンベとかそんなんで、
ダメだ、急いでここからこの女解放してやらなきゃダメになると思ったから。
プロポーズには目丸くしてた。
翌朝会社に腹痛いので病院寄りますって嘘電入れて、昨日とは逆に今度は俺が嫁の手引っつかんで区役所行った。
保証人の欄はそこらにいた人の良さそうなおばちゃん連れに頼んだらあっさり書いてくれた。
式や披露宴は後になってからちゃんとやりました。
こんなところです。