出会いと別れ、別れと出会い

2019/03/20

5年前くらいに、引っ越してしまった彼女がいた。
小柄で、顔が可愛くって、甘えん坊で、しかもやさしい性格の人。
付き合ってた時はケンカもしたが、すぐに仲直りできるような仲だった。
Hはしてないが、それ目当てじゃなかったからそれで良かった。
幸せだった。別れる前までは。引っ越すってわかったとき、あいつの両親に怒りをぶつけたよ。
「なんでつれてくんだよ!俺らの仲を知ってんだろ!?」
他にも色々話した。いや、叫んだ。
相手の事情も知らずに。
相手が黙ってるのをいい気に叫びつづけた。
なのに・・・
「もういいよ。二人ともわかってるんだよ。だから、責めないで。お願い。」
あいつはそう言った。
その言葉を聞いた時、矛先をあいつにかえた。
「どうして!?おまえだって嫌だろ!?別れなんて!!
決めたじゃないか!一緒にいるって!絶対離れないって!!」
そう叫んだ。けど、あいつは泣きながらこう言った。
「ごめんなさい。でも、どうしようもないの。仕事だから・・・。」
あいつの父さんは、道路の建築が仕事でよくいろんな県にまわっていたから、止まる事はなかった。
その言葉を聞いたとき、一気に熱が冷めた。
怒りがどっかへ吹っ飛んだ。
「済まない・・・。本当に済まない・・・!」
あいつの父さんは、机に頭がぶつかりそうなぐらい、頭を下げた。
母さんは声を上げて泣いた。
俺は何も言わなかった。言えなかった。
そのまま、この家を後にした。引越し当日。俺は彼女に指輪を渡した。二つ渡した。
「また会える様に、俺の分も渡しとく。次に会ったら、結婚しよう。」
はっきりした声でそう言った。あいつは、目を大きく見開いた。
そして、頬を赤らませながら、嬉しそうに頷いた。
「・・・うん。」
そういって、あいつは抱きついた。
俺も抱き返した。あいつは、肩を震わしながら、泣いていた。
少しおさまったのか、少しだけ離れた。
あいつは俺の方を見て、すっと目を閉じた。
俺はそれに答えるように、唇を合わせた。
人の目なんか気にしなかった。
「・・・またな。」
「・・・うん。」
名残惜しそうに、唇を離して、そう言った。アレから5年。
俺は、大学から帰る為に駅の中にいる。
券売機の前で、困ったようにきょろきょろしている女の子がいた。
遠くから声をかけようかどうか迷っている時に、視線に気付いたのか、こっちを見た。
そこにいたのは・・・まぎれもなく、あいつだった。首には、俺の渡した指輪が、ペンダントになってつけていた。
すぐに気付いて、あいつは俺の方へ走ってきて、俺の胸に飛び込んだ。
俺は抱きしめて、一言、本当に一言だけ言った。「お帰り。」あいつも、一言だけ言った。「ただいま。」

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