思い出の白い紐[第5話(終)]
2018/05/02
ついにM美の股間全体を手の平で覆い尽くし、中指全体に柏餅の合わせ目を感じる。
初めて味わうその不思議な柔らかさに、たとえようのない満足感を得た。
中指の第一関節を軽く動かしてみると、かなりの湿度と更なるM美の秘密に誘われる。
M美は激しい吐息とともにしがみついてくる。
俺自身も再び激しい興奮に包まれるが、力を入れるな力を入れるなと、呪文のように心の中で繰り返した。
M美は息も絶え絶えで「M美、M美、準備が出来たみたい」とうわ言のように呟く。
もう、なにがなんだか本能だけでM美に身体を重ねると、亀頭にニュルリという感覚を覚えた途端、あっさりと挿入が完了していた。
ハッと我に返り、M美の表情を覗き込む。
眉間に皺を寄せ口を半開きにし、神経を一点に集中し何かを必死で確かめている。
俺は腰を動かさずにM美の表情だけをみつめていた。
「痛い?」
「・・・大丈夫」
痛いようだ。
ほんの少しだけ腰を動かす。
「痛い?」
「・・・大丈夫」
相当痛いようだ。
俺は肘と膝で自分の体重を支えてM美に負担をかけないようにし、一切の動きを止めた。
M美の呼吸の乱れのせいなのか、チンポにM美の収縮を感じて暴発寸前だが、M美の様子だけを窺うことに決める。
どれくらい経っただろうか?
少しずつM美の呼吸が整い始めてきた。
「だいぶ楽になったから少しだけ動いてみて・・・」
やっぱり痛かったようだ。
M美の反応を見ながら出来るだけゆっくりと腰を動かす。
「それぐらいなら大丈夫そう・・・」
痛みはまだまだ伴うようだが、間をおきながら、ゆっくりとゆっくりと腰を動かす。
一往復する度に快感に包まれることがなんとも申し訳ないのだが、どうにもならない。
数秒だったのか数分だったのか定かでないが、ともかく激しい絶頂を迎え、M美の腹に果てた・・・。
俺はM美の柔らかい胸に顔を埋めた。
M美が優しく俺の髪を撫で、M美の温かさに包み込まれる。
なんとも言えない充実感がそこにはあった。
M美も頬を紅潮させ、やり遂げた達成感を噛み締めているようだ。
しかし、M美の腹に放出した大量の精液が鼻につき、とりあえず後作業に取り掛かる。
枕元のティッシュボックスに手を伸ばし、M美のお腹を掃除する。
「こんなに一杯出るんだねぇ!」と、こっぱずかしい一言を浴びせられる。
「M美にメチャクチャ興奮しちゃったからね」
「M美も凄くよかったよぉ」
嘘でもそう言ってくれたのが救いだった。
俺は慣れた手付きでチンポの精液をぬぐい去る。
ティッシュを丸めてゴミ箱にと一連の動作を行った時に、ティッシュの一部がほんのり紅に染まっているのに気付き、チラリと横目でM美を見た。
ベッドに敷かれた赤いバスタオルを引っ張り上げ股間を拭っていた。
陽が沈み、壁にかかるペンダントライトの淡い光が二人を包む。
初めての体験を終えた気恥ずかしさや照れくささを適度に誤魔化してくれる。
全裸のまま身体を横たえた二人は、しばらくのあいだ色々なことを語り合った。
M美は一年の時から俺のことを知っていたという。
学食にはサッカー部シートや野球部シートと呼ばれる一角があり、一般の生徒が座れない暗黙の了解があった。
なんの根拠もないルールなのだが、そういう校風だから仕方がない。
三年の気まぐれで行われる『部活対抗演芸大会』は一年にとって地獄だ。
俺は満員の学食で何度も唄わされた。
俺は音痴である。
あまりにも音痴なため学食が爆笑の渦に包まれた。
ただの変な奴だった俺だが、いざサッカーとなれば中学経験があり、試合に唯一出場する一年としても次第に有名になる。
M美も校内で開かれた試合を何度か見てたという。
「二年生になってYちゃんと一緒のクラスになって、なんとなく嬉しかったんだよ」
Y君からYちゃんへ変わっていた。
「M美がおはようって声かけても、『おお』とか『ああ』しか言わないんだもん。
嫌われてるのかなぁ、雑誌のこと軽蔑されてるのかなぁとか悩んじゃったよ」
雑誌のことで軽蔑されるのは俺の方だよなと思い、正直に話すことにした。
学校でM美を見てはドキドキしてたこと、M美が掲載された雑誌を今でも持ってること、それを見て何をしたのか、全てを語りそして謝った。
M美は兄の部屋に転がってるエロ本のことや、周囲から言われる『オカズにしました』に慣れてしまったこと、反面『こいつじゃ抜けねぇよな』と言われる女の子も存在すること、など男の生理をそれなりに理解していると語ってくれた。
「でも、Yちゃんがそんな風に見てくれてたってちょっと嬉しいかも、えへ。抜けないとか言われたら泣いちゃうよね」
本心かもしれないが慰められた気がした。
突然M美が「あ、まだこんなになってるぅ!」と照れ笑いを浮かべながらチンポを人差し指で撫でた。
「裸のM美が横にいるんだ。こればっかりはしょうがないんだよ」
事実、おさまる気配は全くない。
「M美ね、いずれエッチする時のことはなんとなく想像出来たの。怖くて痛いんだろうなぁって。でも裸を誰かに見られるなんて考えられなかったよ。きっと恥ずかしさで死んじゃうかもしれないと思ってたもん」
そう言いながら羞恥に襲われ頬が染まる。
「最後に紐を解かれた時は、心臓止まるかと思うほど恥ずかしかったんだからね」
口元に笑みを浮かべながら軽く睨みつける表情は、ドキリとさせられる可愛らしさだ。
「いや、紐を解いた瞬間、俺の心臓は止まりました」と、つまらないギャグを交ぜ「もう一度見せて」とM美の身体にかかる淡色の夏掛けをそっと捲った。
「恥ずかしいよぉ・・・」と言うものの抵抗はしない。
相変わらず勃起状態では説得力がないのだが、放出の欲求よりも純粋にM美の身体を鑑賞したかった。
ペンダントライトが照らしだしたM美の身体は神々しさすら感ずる。
先程は無我夢中で気付かなかったが、曲線だけで構成される身体のアウトラインに思わず見惚れてしまう。
「そんなにジィ~っと見られると恥ずかしいよぉ」と言いながらも身体を隠さない。
俺はM美の一番恥ずかしい部分を凝視する。
正面から見た時の唯一の直線だ。
M美は自身のクレバスを2本の指で確認するようにひと撫でし・・・。
「ここを誰かに見られるなんてホント想像つかなかった。今でも不思議な気持ちだよ」
「どんな気持ち?」
「う~ん、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど、すっごいドキドキする。う~んもうダメェ」
さすがに両手で秘密を覆ってしまうが、顔はニコニコしている。
今度は逆に俺のチンポの先っぽを人さし指でツンツンし、「どうすれば、小さくなるの?」と真顔で尋ね、続けざまに、裸や水着を見ると必ず大きくなるのか?大きくなるのにどれくらいの時間がかかるか?などの質問を浴びせてくる。
結局、異性への疑問や好奇心を満たす為、お互いの身体と時間をタップリ費やしてしまった。
恥ずかしいのだが、ふいをつかれたM美のタッチに暴発し、射精の瞬間まで見せてしまった。
玄関でキスをしてM美の家を出たのは23時を回っていた。
翌日は学校でどんな顔をすればいいのか悩みながら登校した。
おそるおそる教室に入ると、M美はいつも通り女の子とはしゃぎ、目も合わない。
M美はある意味わが校一番の有名人だ。
うかつに昨日のことは喋れないと思っていたし、俺からM美に声を掛けることはやめておこうと心に誓う。
昼休みになり、いつものように学食のサッカー部シートで飯を食っていた。
「座ってもいい?」
こちらの返事も聞かずに俺の隣に腰かけたのはM美だった。
一般の男子生徒が座ることはありえないのだが、たまに女子生徒が座ることはある。
もちろん誰かの『彼女』だ。
他のサッカー部員が目を丸くしている。
他の生徒達もチラチラこちらを窺っている。
学食の一件はあっという間に広まってしまったが、この日を境に俺とM美は公然の仲になった。
10月の完全復帰まで残された時間はあと僅かである。
俺とM美は寸暇を惜しむように二人の時間を作り、共に過ごした。
日が経つにつれ、「ずっと9月ならいいのに」がM美の口癖になった。
そして9月最後の土曜日をM美の家でいつものように過ごし、別れ際の玄関で「明日の日曜日はどうする?」と俺が問い掛けると、「明日はお兄ちゃんが戻ってくるの。それで近所の叔父さん夫婦も遊びにくるって・・・」と申し訳なさそうにつぶやかれた。
明日の日曜は9月の末日だ。
月曜にはとうとう10月に入ってしまう。
残念だが仕方がない。
怪我がなければありえなかった夢のような数日間だし、これ以上望んではいけないと自分に言い聞かせた。
「明日一日会えないけど月曜にな、あ、でもこれからは週末だけになっちまうけど、その分一杯いっぱい遊ぼうな」
笑顔で返事をし、玄関のドアを開けようとした時だった。
M美の瞳が潤んでいる。
(あれ?)っと思って「どうしたの?」と尋ねると、「抱き締めて、キスして」と声が震えている。
「ばぁか、さっきまで散々やったじゃん」
そう言いながらも、とりあえず唇を軽く重ねた。
「M美のこと忘れないでね」
「あ?一日だけじゃん、大袈裟だよ。じゃ、月曜にな」
そう言ってM美の家を後にした。
日曜日は久しぶりにぼんやり過ごした。
M美の居ない時間はぽっかりと穴があいたような虚しさがある。
偶然、放課後の教室で出逢い、あっという間に駆け抜けた数日間を思い出し、まるで『M美ワールド』に引きずり込まれ…