一生忘れられない夜 1

2023/06/20

去年、体験した忘れられない思い出。
胸を張って語れる筈もない話なのに、誰かに知ってて欲しい。
そんな話にどうかお付き合い願えるだろうか。

最初は簡単に済ませるつもりだったのだが、いざ書き出すと、次から次へと言葉が溢れてきて、このままではかなりの長丁場になりそうで、前半だけでも何度も書き直しをするはめになった。

なのに一旦、全文を書き直して一度に投下するには、自分の中の衝動が治まらず、ともすればキーボードを叩く指が走りすぎないよう、ある程度の落ち着きをもってPCに向かえる。

去年、俺は出張で10日間程、東海地方の某県へ行っていた。
あたらしい事業所を開くため、現地採用した人間の指導というのが俺の役目だった。
上司と呼べる人間は役員が初日にいるだけで、実質おれと他所の営業所から来ていたもう一人で営業所を立ち上げ、採用したばかりのおっさんたちに仕事を仕込むようになっていた。

この年は何度も台風が日本列島を襲うことになるのだが、俺はその最初の台風に追いかけられるように、高速を自分の車をとばし現地に向かった。

現地に近づくにつれ風雨は強まり、夕刻から何度か出くわした交通規制が段々長くなり、渋滞にはまる時間も次第に長くなり、通行止めを心配する頃になって、俺はやっと目的のインターチェンジを降りた。

予定を大幅に遅れ、寮に指定されたウイークリーマンションに着いたのは夜の11時。
もう一人の指導社員は先着している。ベルを鳴らすとき、俺はけっこう緊張していた。

何故かと言うと、そのドアの向こうにいるのは、まだ20代の女性と知っていたからだ。


俺たちが勤めていた会社は出鱈目なところで、こういうことを平気でやる。
マンションの別室ではない。同じフラットで初対面の男女がこれからの10日間暮らすのだ。

あらかじめ聞いてはいたから心の準備はしていたし、当時、俺は婚約して間が無かったから女性に餓えていたわけではないのだが、なかなかに非常識なシチュエーションであることに変わりはない。

向こうはもっと緊張しているだろう。
とにかくインターフォンを鳴らすと、落ち着いた女性の声がした。いい感じの声だ、と思った。
俺が自分の名を告げると少しの間を置いてドアが開いた。

その瞬間、ゴッという音とともに、半分トンネル状になった通路に突風が吹いた。

「きゃっ」
ドアの隙間から吹き込む風をまともに受ける形になって、長い黒髪が派手に乱れたのが見えた。
俺は慌てて左手に持ったバッグを玄関に放り込みながら、自分の身体も捻じむようにして屋内に入ると同時にドアが勢いをつけて背中ごと叩きつけるように閉まり、ドアを開けてくれたその人影に、危うく体当たりをするところだった。
「あーびっくりした!大丈夫ですか?」
それが彼女、Mさんとの出会いだった。
トレーナーの上下を着込んだすらりとした立ち姿と、艶のある長い髪は好印象。
化粧っけもなくやや地味ではあるが、まずまず整った目鼻立ち。
目をひくような美人、というわけではないけれど、男女問わず人に好かれそうな顔だ。

「すんません、こんな遅くなって…」
とりあえず姿勢を正して、自分でははっきりと発音したつもりだったのだが、十時間以上荒らしの中を運転してきた疲れと、駐車場から建物の入り口に至るまでの間に濡れ鼠になったせいか、初対面の挨拶は口の中で、もごもごとこもるだけだった。

「さ、はやくあがってください。風邪ひいちゃいますよ」
彼女はそう言って俺を招き入れると、手際よく乾いたバスタオルを差し出してくれた。

上がり框に置かれたマットの上で自分の身体を拭き、そのままバッグの水滴を拭おうとして、これは彼女のタオルかと思った俺が一瞬手を止めると
「あ、どうぞそのまま拭いてください、ここにあったタオルですから」
彼女はそういうとにっこり笑った。

促されるままに短い廊下を抜け、リビング兼ダイニングといった部屋へ入る。
右手に小さなキッチンと冷蔵庫。中央にテーブルがフローリングの上に置かれてあり、ベランダへ抜けるアルミサッシが正面、その手前にある少々くたびれた小型テレビ。

たったそれだけの殺風景な部屋ではあったが、台風のなかを走り続けてきた身が人心地つくには充分だった。
「大丈夫でしたか?こんな天気だから、途中で事故に遭ったらって心配してたんですよ」
「ええ、まあ無理だったらサービスエリアに避難しとこうかと思ったんですけど、通行止めにもならなかったし、なんとか無事に辿り着きました」
とりあえず落ち着きを取り戻した俺は、改めて彼女に言った。

「ご心配かけました、T営業所のNです。宜しくお願いします」
「G営業所のMです。噂は専務から聞いています、こちらこそ宜しくお願いします」
彼女はそう言って、ぴょこんと頭を下げた。

新しい営業所の名目上の責任者になる、60を越えた婆さん専務とは、俺はあまり折り合いがよくない。
「はは、ロクな噂じゃないでしょ」
「いいええ、この会社に入る前も同じお仕事なさってたんでしょう? この際だから、しっかり勉強してくるようにウチの所長からも言われてます」
彼女はそう言って笑うと、向かって左の壁にふたつ並んだドアの、手前を指差して言った。

「あの、勝手にお部屋決めちゃいましたけど、今夜のところはこっちを使ってください。 それからお風呂湧いてますので、おなかがすいてなかったらどうぞ暖まってください」

短い期間しか滞在しない部屋がどんなものでも別に構わなかったが、会っていきなり風呂に入るのもなんとなく気がひけた。向こうだってしらない男と同じ湯を使うのは嫌だろう。

「あ、お湯は新しくしてますから。風邪ひいちゃわないうちにどうぞ」
受け取りようによっては嫌みになりそうなことを、そう聞こえないように気遣う言い方がいい。

俺はとりあえず自分にあてがわれた部屋へ荷物を置き、手早く着替えとタオルを取り出して浴室へ向かった。
廊下からわずかにひっこんだ脱衣所にはドアもカーテンもなく、足拭きマットと洗濯機があるだけ。

知らない男女が一緒に暮らすことなど普通は考えないだろうから、不思議ではないが。
さっさと濡れた服を脱いで洗面器の上に置き、ガラス戸を開けてバスルームに入った。
狭い洗い場と小さな浴槽。彼女が使ったのであろうシャンプーの甘い匂いがほのかに鼻腔をくすぐる。
ゆっくりと湯につかり、雨に冷えた身体を暖めながら、俺は今後のことについて考えた。

風呂に入るときはお互い気を付けなければならないだろう。
どちらが先に入るか、決めておいたほうがいいかもしれない。
そう言えばあてがわれた部屋にも鍵はない。トイレも彼女が使ってすぐに行くのは避けたほうがいい。
いくつかの注意事項を頭に整理して、俺は風呂からあがった。

リビングに行くと、彼女はテーブルの前に座りテレビを観ていた。
「あ、はやいですね。お湯加減、だいじょうぶでしたか?」
「はい、ちょうどよかったですよ。ここ座っていいです?」
なんとなくそのまま座るのも気がひけて、俺は一応尋ねた。

「どうぞ。あの、いちいちことわらなくてもいいですよ?」
ありがたい言葉だが額面通りに受け取らないように気をつけるくらいがちょうどいいだろう。

「え~と、こんな天気ですけど、明日のことについてなにかお聞きになってますか?」
タオルで頭を拭きつつ、俺はまず必要なことから訊いた。
「朝には台風は通過してるらしくて、とりあえず事務所には行けると思います。
ここから20分くらいのところで七時半に出れば、途中でお昼ご飯を買っても余裕で間に合うでしょう。
でもNさんは大変なお天気の中で来られてお疲れでしょうから、なんならお昼くらいからで大丈夫ですよ」
気遣いは有難かったが、そういうわけにもいくまい。

「いえ、大丈夫ですから。朝一緒に出ましょう。じゃないと道もわからないかもしれないし。 Mさんは何時くらいに起きます?」

「6時過ぎですけど」

「じゃすいませんけど6時半に目覚ましかけますが、もし起きないようだったら声をかけてもらえませんか?」

「わかりました。でもわたしが寝過ごしたりして、エヘへ」
そういって彼女はすこし頭をかいた。

「朝、苦手です?」
と訊く自分もあまり早起きは得意ではない。

「はあ、あんまり強いほうじゃないですけど、でも大丈夫です!普段はいとこと二人で暮らしてるんですけど、いっつもわたしが先に起きてますから」

「あはは、そう言ってふたりとも寝過ごしたりして」
俺は努めて軽く言った。

「じゃ、お願いしますね。とりあえずもう寝ますんで」
こっちが先に寝たほうが安心だろう。俺はそう言って立ち上がった。

「はい、わたし、もうちょっとだけ起きてます。おやすみなさい」
彼女は俺の方を向いて座り直すと、ぴょこん、と頭をさげた。

「おやすみなさい。え~と」
どう言ったら彼女が安心するのかはわからなかったが、結局俺はストレートに言うことにした。

「知らない男と10日間も一緒って、嫌かもしれないけど気をつけますから。気に触るような事があったら言ってください。気が付かないうち失礼があるかもしれないから」

スラスラと言葉が出てきたわけではないが、彼女は素直に受け取ってくれたようだ。

「はい、でも大丈夫ですよ、信頼してますから。わたし、初対面の印象ってけっこう自信あるんです。さっきNさんの顔見て、なんか安心できましたから」
屈託のない笑顔にこちらも頬がゆるんだ。

「はは。襲ったりしませんから、安心してくれてけっこうですよ。あ、その、あんまり大丈夫って言うと却って失礼かもしれませんけど。」

「え?」
彼女は軽く首を傾げた。

「その、Mさんが魅力がないってわけじゃなくて、自分も婚約したばっかりで…」

却って意識させる言葉だったか?とも思ったが、言いたいことはわかってくれたようだ。

「はい!わかってますから。あまり気を使わないでくださいね。おやすみなさい」
ころころと笑うその顔を可愛いと思った。

翌日からの仕事は順調だった。
名目上の上司である婆さん専務は、午前中だけ顔を出しただけで他所の営業所へ行ってしまったが、居座られても邪魔なだけなので、正直、有難かった。
事務所は取引先の某大企業のビル内の一室を借りていたのだが、先方の窓口になるスタッフが、腰の低い人間だったのがなによりの幸運だった。

こっちは所詮下請けなので、担当者の相性というのはかなり重要なのだ。
現地採用したおっさんたちの教育も、機械を扱うのは俺、デスクワークはMさんと分担を決めたのがはまり、予想以上に効率よく仕事は進んで、いい雰囲気のうちに初日の仕事は定時の6時前に終わった。
おっさんが帰ったあと、俺たちもすぐに営業所を後にした。

途中でスーパーに寄って、食材を買おうと思っていたのだが、Mさんの提案で一度ウイークリーマンションに帰ってから、一緒に買い物に出ることになった。
先着していた彼女が、市内を案内してくれるというのだ。
俺は有難く好意に甘えることにし、彼女の車で出かけることになった。
まずスーパーではそれぞれが別に買い物をした。肉、魚と野菜、それに缶ビールとつまみをカゴに入れレジに向かった俺は、総菜売り場のところで彼女に声を掛けられた。

「Nさん、ひょっとして自炊されるんですか?」
いかにも意外だったようだ。どうも俺はあまり生活感がないように見えるらしく、地元で買い物をしていて知人に遭うと、大抵驚かれる。

「ええ、好きなんですよ料理。おかしいですか?」

「う~ん、男の方だからちょっとびっくりしましたけど…でもそう言ったら女のわたしみたいに料理しない人間もいますしねえ」

言われてみると彼女の買い物カゴの中身は、レトルトとインスタント食品だけだ。
「なんか、恥ずかしいですね、ふふ」
おかしそうに笑う彼女につられて、ついこちらも頬を緩める。

「いやあ、好きずきですから、そんなの」
本当は、高校を出てから最初の職場で、野外での料理(のようなもの)を余儀なくされたのがきっかけだったのだが、それを言ってもしょうがない。

「あ、あれ、おいしそうですね」
総菜売り場の一角に、ウインナ・ソーセージの試食コーナーがあり、いかにも美味そうな匂いを漂わせている。

「あの、ひとついいですか?」
試食コーナーのおばさんに言ってウインナーを口に放り込む。普通のものより厚めの皮に歯を立てると、バリッとした音とともに濃厚な肉汁が溢れてきた。うまい。ただ少し高いか?と思案してると
「どう?今日までだよこれ、奥さんもひとつ」
おばさんはMさんに向かって小皿を差し出した。

違う、と訂正しようと思ったがなんと言ってよいかわからず、ウインナーを飲み込んでなかった口をもごもごやってるうちに
「そうですか?では」
Mさんはさっとひとつつまむと口に入れ
「はふ、おいしい!これ一袋ください」
と言って、自分のカゴの中に入れてしまった。

「えへへ、買っちゃいました。どうしましょ、オイルないからボイルしよっかな」
レジで支払いを終え、品物を袋に入れながらMさんは言った。

「あの、なんなら俺、焼きますよ。バター買ったし」
「ホントですか?」
「ええ、焼いたほうがよさそうだし、これ。Mさんさえよかったら」
「じゃ、お願いします」
彼女はそう言うと、ポケットから車のキーをとりだすと
「ふふっ、“奥さん”だって」
と、ぺろり、と舌を出した。

「ああ、間違えられちゃいましたね。こんな美人の奥さん、もらった憶えはないけれど」
言ってから、自分でも似合わない軽口か、と思ったが、彼女は少し赤くなって
「もう!彼女さんが怒りますよ」
と軽く俺を叩いて、こうつけくわえた。
「わたしこそ、光栄ですけど」

食材その他を後部座席に置き、俺たちは車に乗り込んだ。
「このまままっすぐ帰ります?どっか寄りたいトコあったら言ってくださいね」
と彼女が言うので、途中でツタヤがあったのを思い出して
「それじゃツタヤに寄ってくれませんか」
と言った。

「え?いいですけど、あそこのツタヤはレンタル専門で本とかってありませんよ?部屋にはビデオないし…」

「ノートパソコンでDVD観れますから。普段からあんまりTVとか観ないし」
まるっきり嘘でもないが、そう言っておけば彼女もリビングでテレビも観易いだろうし、こちらも部屋にひっこみやすくなるから、なにかと気楽だと思ったのだ。
「それに、ツタヤの会員証は全国共通ですからね。地元に置いてないDVDとかあったら観てみたいんですよ」
「なるほど!それじゃ寄ってみましょうか」

通学通勤の客が多い時間だったので、ツタヤの駐車場はいっぱいだったが、なんとか隅の方に開いてる枠があった。

「わっ、けっこういっぱい置いてるんですね~」
店内は外から見るより意外に奥行きがあり、Mさんは無邪気に廻りを見渡していた。

「Nさん、どんなのがお好きなんですか?」
「洋画が多いですね。わりと」
中でもサスペンスとかホラー、それも昔のものが好きなのだが、あまり危ない人間と思われるのも面倒なので、そこは黙っておいた。ホラーファンに対して偏見を持ってる人間もいることだし、Mさんがそうでないとも限らない。ひとつ屋根の下で過ごすわけだからあまり嫌われそうな要因は排除しておいたほうがいいだろう。

彼女はそれ以上訊かず、奥の方の棚を見にいった。
ホラーコーナーは後日ひとりで来たときに物色することにして、今日のところは新作・準新作のところだけチェックしておこうかと思ったのだが、俺はここで意外なソフトを見つけてしまった。

「悪魔の墓場」1974年に発表された、イタリア・スペイン合作のゾンビ映画の古典。ロメロの「ゾンビ」やフルチの「サンゲリア」以前の作品で、ファンの間では「最も怖いゾンビ映画」と言う人間も少なくない。

永らく幻の作品とされていたのだが、最近デジタルリマスターしたものが新たにリリースされたのは知っていた。もちろん地元でも捜していたのだが置いてある店が見当たらず、しょうがなくアマゾンで購入しようかと思っていたのだ。
思わず手にとってみた。運良く?といっていいのかわからないが、ケースの中にちゃんとディスクが納まっている。レンタル中ではないわけだ。この店に来ることができる日が限られている以上、とりあえずレンタルだけでもしておくか?、でも…
「それ、ホラーなんですか?」
すぐ後ろでMさんの声がして、俺はちょっと後悔した。が
「わたし、この間「リング」シリーズいっぺんに観ちゃったんですよ~。Nさんはホラーとか好きです?」
と彼女が訊いてきたので、つい「ええ」と答えてしまった。

「Mさんもですか?」
「や、あんまり詳しくはないんですけど。あのなにかお奨めがあったら教えてもらえません?」

にこにこしながら尋ねるその表情に、適当に話を合わせているわけではないだろうとも思ったが、まさかいきなり初対面の女性に「悪魔の墓場」を観せるのもどうかと思ったので、とりあえず「リング」を観ておもしろかったのなら、と考えて、邦画で「女優霊」「仄暗い水の底から」洋画で「アザーズ」「サスペリアⅡ」と、無難なところ(?)を奨めておいたら、彼女は「全部観てないですね」と言い、続けて
「あの、もしも借りたら、時間があるときに観せてもらっていいですか?このなかの一本か二本でいいですから」
と訊いてきた。

まさか俺のノートパソコンを借りてひとりで観る、というわけじゃないよな、と考えていると、察したのかどうかわからないが
「あ、もちろんNさんが使わないときに、リビングで…だめですか?」
と、ことわってきたので
「え、ああ、いいですよ。たぶん夜はヒマだし」とついつい答えてしまっていた。
つまりそれは一緒に観るということだ。

「ビデオ、どうします?ご飯食べてから観ますか?」
マンションに帰ってきて、ふたりで買い物を仕分けしながら訊いてみると、
「そうですねえ、できれば食事中に観れるようなのがあったら観たいです。Nさんさえよければ、ですけど。

結局、さっき名前を挙げたDVDは4本とも借りてきてしまったていた。
「別にいいですよ、食べながら観ましょうか」
「ホントですか!?」
Mさんの顔が、パッと華やいだが、しかしすぐに「あ、でも…」と俯いた。
「どうしました?」
「でも、Nさんは一回観ちゃってるんですよね。それに…新しいDVDも借りてらっしゃるし」
「いいんですよ」
俺は、無理にMさんに合わせてるわけでないのを強調するためにも、わざと素っ気なく言った…つもりだったが、成功したかどうかはわからない。
そこで
「それに、自分が借りてきた方は飯どきに観れるようなやつじゃないし」
と付け加えた。

「残酷なスプラッターなんですか?」
「多分。一人で観て、大丈夫そうだったら観せてあげますよ」
「え~、平気だと思いますよ?わたし。Nさんのパソコンで観るんだし、お先に好きなのをご覧になっても」

やはりまだ気になるのか、Mさんが遠慮しているので
「いや、これ前から捜してたヤツでずっと楽しみにしてたんで、観る時は飯喰いながらとかじゃなくて、ひとりでじっくり観てみたいんですよ。こっちの4本はほんと面白いし、何回観ても大丈夫だから」

「そうですか、それじゃお言葉に甘えて」
やっと納得したようなので
「そうと決まれば、パッパと飯作っちゃいましょう」
と俺がキッチンに向きなおると
「わたし、できあいのお惣菜だからすぐに用意できますから、その間にお風呂掃除しときますね」
とMさんは言い、バスルームへ向かったが、一度こちらを振り返り「Nさん」と呼んだ。
「はい?」
「ありがとうございます」
すこしはにかんだ笑顔でぺこり、とお辞儀をする彼女をに
「え、ああ、いいんですよ」
と勤めて平静を装って答えたが、自分でも内心、嬉しい動揺を隠しきれてないような気がした。

<続く>

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