果物のにおいのする足を舐める

2020/12/22

東京の大学に行っていた頃、私は世田谷の豪徳寺というところにあるアパートに下宿していた。
私のいた二階は二部屋だけで、入って半年目にそれまでいた学生が引っ越し、代わりに若いOLが入った。
たまに廊下で顔を合わた。
地味な服装で長い髪を後ろで束ね、化粧もほとんどしていなかった。
どこかの工場に勤めていると大家さんから聞いた。
少したつと、彼女を訪ねてくる男がいることが分かった。
二人はひそひそ声で話したあと、セックスをした。
薄い壁を通して押さえたあえぎ声が聞こえ、私はオナニーで欲望をまぎらした。
一階でで靴を脱いで階段を上がるアパートだったので、下駄箱には彼女の靴が何足か入っていた。
私は下駄箱から彼女のヒールの高いサンダルをこっそり取り出し、部屋で匂いをかぎながらオナニーをした。
不思議なことにサンダルは果物の匂いがした。
隣の部屋の話に耳を澄ましていると、二人の関係が分かってきた。
彼女は山梨県出身の二十三歳、男は小学生の子どもがいる中年の妻子持ちだった。
工場の納品業者らしい。
女はいつも「旅行したい」とねだり、男は「山梨に帰るなよ」と言っていた。
二年目の冬、隣の女が私の部屋の扉をノックした。
病気で今にも倒れそうだった。
実家への電話と、薬を買ってきて欲しいと頼まれた。
当時は携帯も、部屋に電話もないのが多かったのだ。
私はアパートの近くの赤電話から電話し、薬を買って彼女に飲ませた。
初めて入った女の部屋は、甘い香りでむせるようだった。
二・三日、私は頼まれたお弁当などを買って部屋に届けた。
そのうち、女は私が聞きもしないのに、実家の母親の病気や、不倫の男のことを話した。
「彼は果物を私に踏ませて、足をなめるのが好きなの。桃とかバナナとか、ぐちょって踏みつぶさせるの。だから畳がべたべたよ。まったく」真面目な地方出身の若い女が、妻子持ちに遊ばれていると勝手に思っていたが、男女の関係は私の想像を超えたところにあった。
一週間ほどたって山梨から父親がきて、彼女を連れて帰った。
1カ月ほどして彼女が戻ってきた。
前の会社を辞め、別の所に入ったという。
思い切って部屋で飲まない?と誘うと、つまみを持ってその夜やってきた。
「セックスするなら、酔わないうちにしよ」と誘われて、彼女のリードでセックスした。
フェラチオの前にぬれタオルでペニスを拭いたり、女上位で長い髪をかき上げながら腰をフル仕草など、経験豊富なテクに興奮した。
以後、毎日のように交わり、色々なテクニックを教わった。
彼女の初体験は、高校の頃、美術教師と、学校の放課後やったことだという。
その後、何人も年上の男と付き合い、年下は私が初めてだった。
年上の体に夢中になった私が、一晩に10回もするので、すり切れて血が出たこともある。
最初の清楚で真面目そうな会社員のOLというイメージが、たくさんの経験を持つ女だと分かって、それが私を夢中にさせた。
半年ほどして、彼女は会社の上司と関係が出来、彼が借りたもっといいアパートに越していった。
でも彼女は土曜日になると、私アパートにより、私ともセックスをした。
1年ぐらいたって、その上司が紹介した先輩社員と結婚。
披露宴の二次会に呼ばれたが、ごく普通の美しい新妻という感じ。
もちろん、ご主人は妻の過去について何も知らない。
中年の上司とは、結婚の1カ月ほど前に分かれたそうだが、私とは結婚式の前後も体の関係を続けた。
新婚家庭を昼間訪ね、今で人妻を抱くというのは、目のくらむような体験だった。
それも慣れると普通になり、私は同時期にできた若い学生の恋人に夢中になった。
彼女が妊娠してから次第に合わなくなった。
女というのは、深く付き合わないと分からない、というを初めて体験した彼女だった。
今でも熟した果物の匂いをかぐと、小さなアパートの部屋で、不思議なセックスをしていた女のことを思い出す。

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