利用された自縛趣味
2020/01/29
佐伯佑香(24)には人には言えない秘密があった。
それは自縛である。Self Bondageとも言われ、自分で自分を拘束することである。
女子アナ並の美人でスタイルも抜群の彼女は何回も彼氏を変えていたが、
結局のところ、この趣味により、別れることになる。現在は彼氏はいない。
彼氏に拘束してもらったのでは興奮しないのである。
いつかはほどいてもらえるからだ。
自分自身で拘束し、その拘束から脱出できるかどうか、そのスリルが
たまらなく好きなのであった。「あーあ、なんか最近自縛してないなぁ・・・」
佑香は仕事が忙しくてなかなか自縛の時間がなかった。
「よし!次の連休には新しい自縛に挑戦してやる!」
佑香はその日深夜まで自縛の方法をネットで検索した。
「ふむふむ、ハングマンズノットかぁ。一度締まると二度と開かない輪か・・」
(やだ、なんか興奮してきちゃった・・)
佑香の下半身がほてってきたのを感じていた。
「ん?」
ネット検索しているとある文が目に入った。
”誰か私の指示通りに自縛してもらえませんか”
との書き込みが自縛掲示板に載っている。
「指示通りに自縛かぁ。なんかおもしろそう。」
それは佑香にとって魅力的に感じた。
彼氏に縛ってもらうのとは違う。指示通りに自縛しても
誰も助けにはきてくれないからだ。
どうしても自分で考えた自縛方法には脱出手段を用意してある。
最終的には必ず拘束を解かないといけないからだ。
でも他人に指示されたとおりにするということは少なからず
拘束が解けない可能性がある。
そのどうなるかわからないスリルが佑香を魅了していたのである。
”指示してください!言われた通りに自縛します!”
佑香は掲示板に書き込みした。そして思った。
(次の自縛はこの人の指示通りに自縛しよ。なんか興奮するなぁ)
最近の佑香の自縛はマンネリになっていた。
だからこそ、この話に乗ったのだ。
(さあ、佑香ちゃん、次の連休はことごとく痛めつけてあげるわよ、覚悟しときなさい)
佑香は心の中で自分自身に語った。Sの自分とMの自分が佑香の中に存在していた。そうして、連休がきた。
佑香は掲示板をみた。
そこには箇条書きでズラーっと自縛の支持が書き込んである。
「え?こんなに・・・?」佑香はちょっと驚いた。
でもその指示の多さに佑香は再び興奮度が増した。Mの血が騒いでいる。
「えーっとまずは・・・」
”可愛らしい女性の衣装を着てください”
「はは・・私のこと男だと思ってるのかな?まあいいや」
佑香はサテンブラウスに膝丈のシフォンスカートを履いた。春らしくとても可愛らしく清楚な感じだ。
”ロープを用意してください。”
「自縛が趣味なんですから、ロープなんていくらでもありますよ」
佑香は得意げに思った。
”粘着テープで口を塞いでください、詰め物も忘れずに”
佑香はスカーフを丸めて口に詰め、強力粘着テープで口を塞ぐ。
粘着テープで口を塞ぐと呼吸が少し荒くなった。
(どうしよ、もうこんなに興奮してる。いつもとちょっと違う・・、まだどこも縛ってないのに・・)
”両足首、膝上を揃えてきつくロープで縛ってください。足首のロープは少し余らして先にハングマンズノット
の輪を作っておいてください”
佑香は言われたとおりにした。
ハングマンズノットは初挑戦であった。
(この前掲示板でみたあれか、初めてだけど大丈夫だよね。)
佑香はまだこの時点でハングマンズノットの恐ろしさに気づいていなかった。
”体育すわりをして、両手を足の下にいれ、両手首がちょうど入る大きさのロープの輪に
両手を入れてください、輪は4重くらいで、輪に足首からのびているノットの輪もかけてください”
佑香はその通りにする。
”後は横に倒れて、手首を一気に足首から遠ざけるように引っ張って完了です”
(よし、やるぞ!)
佑香はなんのためらいもなく、最後の指示を実行することにした。
(それ!!)
倒れると同時に体も伸び、手首を引かなくてもノットのロープが引かれて輪が小さくなり、
手首を一気に締め上げた。
(イタイ!)
両手首は強烈に締められ後ろ手になり、短いロープで足首とつながっている。
俗に言う、逆海老縛り(ホッグタイ)の状態になった。
清楚なお嬢様が口に粘着テープを張られ、後ろ手でホッグタイ状態。
(はぁ。。完成した。ちょっとでもキツイなぁ。でもすっごく興奮してる、ちょっとこのままでいよう)
佑香は倒れた状態で20分ほど自縛したまま興奮が冷めてくるのを待った。(さて、じゃそろそろほどくかな、体も痛くなってきたし、手首に行く血が少なくなってきたようだし)
佑香はいままでロープだけの自縛ではハサミ等使わなくても暴れてるだけでほどけていたので
今回もハサミ等は全く用意してなかった。
「んんっ!」
佑香はもがきながら手首をひねったり、体をくねらせたりした。
そうこうすること10分・・・。
(あれ、ちょっと待って、全然ほどけないじゃん。。)
ハングマンズノットの結び目はほどけるどころか、もがいたせいでどんどんきつくなっていた。
(やばい、手首がしびれてきてる、ちょ。。)
このとき佑香はハングマンズノットの恐ろしさを実感した。
(二度と開かないって書いてあったけど、あれ本当だったんだ・・、てことは、どうしよっ縄抜けできない!)
佑香は焦りまくっていた。でももがけばもがくほど手首は閉まりキツクなる。
サラサラのストレートの髪が額の汗で顔にへばりつく。頭はフローリングの床にくっつけたままだ。
(嘘。。ちょっと冗談やめて・・・。これほどけない。)
今までの自縛でミスが一回もなかった佑香は油断していたのだ。
(仕方ない。助けをよぼう・・)
「ふぁれふぁ、ふぁふふぇふぇー」(誰か助けてー!)
粘着テープの下から必死にさけぶ。
佑香は一人暮らしのマンションに住んでいた。
(とにかく騒げば誰か気づいてくれる!)
手首の輪が閉まるのを承知の上で、両手両足を床にたたきつける。
ドンドン!!
(お願い、下の住人さん気付いて!)
暴れながら必死に声も出そうとする。
しかし、連休中だ、1Rの一人暮らしの人たちは帰省やレジャーでみんな留守だったのだ。
2時間が経過し、手首の感覚がなくなりかけた。
と同時にきついホッグタイ状態が長かったため意識がぼーっとしてきた。
(どうしよ、死んじゃうかも・・・)
佑香はことの重大さに気がついた。
締め切った室内は気温がどんどん上がり、佑香は汗びっしょりだった。
髪、サテンブラウス、シフォンスカート、すべてが体にまとわりつき、ベチョベチョだった。
(暑い・・・。きつい・・・。気持ち悪い・・・。)
(誰か助けて・・・お願い・・・)
そうこうして4時間近くたった。
佑香の必死に気を失わないように意識を保っていた。
気を失ったら本当におしまいだ。とにかく誰かが部屋に来るのを待って、そのとき最後の力で
助けを呼ぶしか助かる方法はなかった。そのときだった。
いきなり部屋のベランダの窓が開いた。
(え?)
佑香はベランダのほうを見た。
そこには30歳くらいの男が立っていた。
「まさか、ここまで本当に指示通りに自縛してくれるなんてありがたいねぇ。」
男が言う。
(え?どういうこと、え?まさか)
佑香は動揺している。
「実は掲示板で指示したの俺だよ。君のストーカー暦3年、君のすべてを知ってるんだよ。
君のパソコンもハッキングしたしね。君の趣味も知ってた。
そこで今回の作戦を思いついたわけ。君に自縛してもらい、僕のものになってもらうっていう作戦」
(うそ、信じられない、じゃあ、私まんまと罠に・・・)
「ふぉふぉいふぇ!!!」(ほどいて!)
佑香はとにかくロープをほどいてほしかった。
たとえその相手が自分のストーカーだとしても。
「ん?何?ほどいて欲しいの?やだね。自縛したまま死んでもらわないといけないもん。
自縛して事故死。これが君の最後だよ。君は僕の考えた方法で死ぬんだ。それが君を手に入れる
ということだ。」男は佑香を助けないでじっと見ている。
「君には触らないよ。体液とか残したくないし、証拠は絶対に残さない、指紋も消すし、
パソコンのデータも消すよ。掲示板の内容もね」
男は手袋をして佑香のパソコンをいじり、作業をしている。そして掲示板の履歴を一切消した。
次に男はデジカメで倒れこんだ佑香の写真をとりまくった。
「美しいねぇ。いいよ、いい。」
次にビデオカメラでも撮影をはじめた。佑香は絶望し、目をつむり、後悔の念でいっぱいだった。
(私ってまんまとこの男の罠にはまったんだ。。バカだよ・・・。それに自縛がここまで危険だったなんて・・・、
せめてハングマンズノットの恐ろしさだけでも気付いていればこんなことには・・)「さてと、そろそろ、終わりにしますか」
男が言う。
「あんまり長い時間楽しんでるとどうなるかわからないから、佑香ちゃんには死んでもらうよ。僕もすぐに
立ち去るから」
佑香は何も考えられずにその言葉を聞いていた。
「あーあー。手首もこんなに青くなっちゃって、痛かったろうね。ハハハ!」
男は続ける。
「自縛した人ってよく呼吸までも制御して誤まって死んじゃう人っているんだよ。
だから君もそうなるよ」
(何言ってるの。。この人・・・。とにかく私このまま殺されちゃうのかな・・・)
そのとき佑香の顔にスーパーのビニール袋が被せられた。
首のところで袋の持ち手の部分が縛られた。
佑香の呼吸が一気に苦しくなる。
(はぁはぁ・・、ちょっと・・・まっ)
「じゃあね」
そういうと、男はベランダから立ち去った。
(死んじゃう・・・)だんだんと佑香の意識は遠のいていった。1週間後、週刊誌、ワイドショーで佑香のことが盛大に取り上げられていた。
「美人OL、自縛の果てに窒息死」
「危険な趣味が招いた無残な結果」