ある1日の何気ない話
2018/01/21
秋の昼下がり。
きらめく海を横に眺め、国道沿いのホテルに車を向ける。
「今日、お子さんは?」 「姉のところに預けてきました」助手席で美雪が明るく答えた。
セミロングの髪、オフホワイトのカーディガンの下はライトブルーのブラウス。
すらりとした脚が、ふわりと広がったミニスカートから覗いている。
「へぇ、お姉さんいるんだ」
「はい、一つ違いなんですけどね」
「ふうん、じゃぁ30歳か。美雪に似て色っぽいのかな」
「えぇ、私、色っぽくないですよ」
「そんなことないよ。素敵な女性に会えてよかったな、ってさっきから思ってたもの」
隆は、左手を横に出して、膝の上の美雪の手を握る。
「あら…」上げた視線の先に「HOTEL」の看板が見えた。
フロントでキーを受け取って、エレベーターで最上階へ向かう。
「さぁ、入って」白を基調にした明るい部屋が広がる。
隆は、ジャケットをクローゼットにかけ、美雪に近づくと背後から肩に手をかけた。
「バッグはそこに置くといいよ。まぁ、ゆっくりして」
「は、はい」
隆の手が肩に触れた瞬間、美雪の身体に電撃のようなものが走り、あの部分がじわっと湿り気を帯びていくのを感じた。
必死に平静を装ってバッグをソファの上に置く。
自分の身体の変化を悟られたくなくて、ごまかすように美雪は窓辺に近づいた。
ガラスに上気した自分の顔が映る。
「ステキな景色ですね…」声が引っかかって最後の方はかすれたようになっている。
「海がよく見えるでしょう?だからここのホテルにしたんだ」隆は、美雪の横に立ち、自然に腰を抱いて寄り添った。
美雪は、身体の力が抜けたようになって隆にもたれかかった。
その小柄な身体をそっと肩で支えて、隆は微笑んで聞く。
「どうしたの?」美雪は何も言えず、無言で隆に見とれていた。
「可愛いよ、とっても」隆は、そう言うと美雪の頬を撫でるようにして、そっとキスした。
触れるか触れないかくらいの優しいキス。
それだけで美雪は息が止まりそうになる。
無我夢中で隆の身体にしがみつく。
今度は深々とキス。
差し込まれた舌先がソフトに美雪の舌を突いたかと思うと、
歯の裏側や上あごなどをくすぐるように滑っていくのに、美雪は全身がとろけるような錯覚を覚えた。
「ん・・っ・・んん」自然と声が漏れる。
美雪がおずおずと差し出した舌を、隆が、絡めた舌先でソフトになぞる。
そして、いきなり強い力で吸い上げる。
その瞬間、美雪の頭の中が真っ白になる。